話しかけても答えぬ花を
それを理由に
嫌う人はいない
会話のまばらな家族を前に
さみしさといっしょに
怒りさえ感じている
思いがけない秋の夕焼けを前に
もっと美しい冬景色を早く見せろと
要求する人はいない
飲んでくだまく私に
つき合う友人に
何とか言えよとからんでいる
そこにいる
そこにいてくれる
家族も友人も
それだけで充分なのに
私は時々
こんなことさえ忘れている
掲載「静岡新聞」
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