その日


きれいな看護婦さんが

「お父さんですか。おめでとうございます。」

ぼくはどぎまぎ 視線をそらして

え?ああ どうも ええ まあ その

男ですか 女ですか

指はちゃんと五本ありますか

聞きたいことが頭の中で

縦横無尽にかけまわり

出てきた言葉は こともあろうに

親父の面目 まるつぶれ

あ、あの 足は何センチですか


扉の向こうに君が待っている

僕の大事な人といっしょに

君が待っている



やっぱり 僕も言われたらしい

「動物園の熊じゃないんだから。」

くまったなんて しゃれにもならない

え?ああ だって ふむ まあ あの

鼻の高さ 二重瞼

くちもとなどは女房に譲ろう

けれど 明るい性格は

僕に似なくちゃしかたない

看護婦さんが ぼくの顔を見て

少し笑ったような気がする

あ、あら お父さんにうり二つです


扉の向こうに君が待っている

僕の大事な人といっしょに

君が待っている


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