スリッパの恋人
 

はきものが いつでも

左右 対になっていると思ったら大間違いで

大きな会館のスリッパは

使われるたびにパートナーが替わり

ひどい時には トイレの前でつれ合いが変わったりする

一日いっしょにいた恋人同士が

次の日から一生会えない場合もある

それどころか

右になったり 左になったり

自分の正体さえわからなくなる

こんなことが 自分の意思とは関係なく

人間たちによって支配されている

スリッパの方向は人の足の向くまま
 

ただ

人間がいなければ

スリッパも存在しなかったのだけれど
 

                   掲載 『静岡新聞』
 
 

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