海の話をする時に
クレヨンで描いたような藍い海を
暖かなこの部屋から ガラス越しに見ている
時化を通り抜けたこと 二度と帰らぬ船のこと
あの人から聞いた時の ときめきは薄れてゆく
好きだった埠頭の陽だまりで
海の話をする時に
目を細めていたあの人の声は
潮風の肌ざわり
空と水の隙間から 小さな船が現れて
しだいに僕より大きくなり 目の前を過ぎてく
木切れのヨットが波にのまれてさらわれる
小石をたくさん投げた
海を埋めたかった
目を奪う海のマジックに 誰も夕暮れに気づかず
いつのまにか夢も 暮れてゆくことに気づかず
好きだった埠頭の陽だまりで
海の話をする時に
目を細めていたあの人の声は
もう 潮風の中
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