雪の降らないクリスマスの夜
 

娘も息子も

私たちとテーブルをはさんで座る

四人とも別々のメニューから顔を上げない
 

あの頃は

メニューをテーブルに広げ

それぞれの選んだ「御馳走」に

感心したり、文句を唱えたり・・・
 

二人を見ている私に気づき

「楽になったものだ」とあなたが言う

でも
 

顔を上げた弟は

相変わらずいちばん高い品を選ぶ

姉は弟をひとにらみした後

値段の安い方を選ぶ

娘の気づかいが

いつか訪れるであろう終わりの予備信号のようで

少しこわい
 

お寺の鐘を百八つ数え

鳥居をくぐって柏手を打つ私たちに

十二月二十五日を祝う理由は少しもないのだから

年に一度の家族の楽しみを

いつまでも続けたいと思うのは

ぜいたくなのかもしれない
 

もう何年も

クリスマスの静岡には雪が降らない

雪のクリスマスはすてきだろうけれど

また今年も 

雪の降らない静岡で

四人のクリスマスを迎えられたことを

今夜は神様にそっと感謝しよう

                      掲載 『静岡新聞』 

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