十歳
十本のろうそくを
一息で吹き消した
ちらっと こちらを見ては
にやっと いばってみせる
君は十歳になった
初めての誕生日
君の年齢は 私のたった三十分の一
なのに 今日は
もう四分の一まで近づいた
君が生まれた時は まだ
商店街のアーケードが
何十年分かの時間を支えていた
たった十年が
ほんのすこし 私を変え
知らぬうちに 町を変え
とほうもなく 君を変え
君の背丈が どこまでも伸びるよう
商店街の天井が 青空に変わってゆく
その速度の違いは
少し うれしくて
少し さみしくて
少しだけ 少しずつ
君は十歳になった
「文芸やいづ」掲載
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