料理への関心は自分が倒れたことによる



ある時、yukaさんは真剣に、
食べることと料理に取り組むことを決心した。

昔から、食べ物はパンとお菓子が好きで、
嫌いなもののほうが圧倒的に多かった彼女は、
実家を離れて一人暮らしを始めてまもなく、
仕事中に倒れてしまった。
医者の診断によると栄養バランスの不備と疲労が原因。

食費節約ということで、コンビニの残り物、
お菓子、パンといった食生活を続けていたのだ。
倒れたことが相当ショックだったそうで、
「これではいけない」と、食べることへの意識、
すなわち栄養バランスを考えるようになった。
そして自分で料理することの大切さを自覚した。



一念発起したyukaさんは、
最初に肉じゃがをつくろうと思った。

「実家で母親がよくつくってくれて、
本当においしかったし、
自分でもできそうかなと思ったからです」


しかし、実家で生活してきたそれまでは、
母親が料理をつくり、彼女はたまに手伝うくらいで、
料理の基礎などできていなかった。
出汁のとり方もあやふや。
母親に電話で聞きながらつくったが、
「ほんとにまずかったです(笑)」


その後、実家に帰ったとき母親に教えてもらったり、
レシピを持ち帰ってつくっても、思い通りにならない。
 母親が横にいてアドバイスをもらいながらつくっても、
食べたい味にならない。
しかし
yukaさんの前向きな意識は、
毎日料理するなかで、失敗しても
「なんで、こうなってしまうの?」
という探求心を強めた。

そして一つずつ成功するたびに、
料理することの楽しさがどんどん増していったという。




自分が食べるためにいろいろな料理を
つくっていくのはいいが、
ここで、困ったことが起こった。

基本的に食べられる食材が限られてしまっているので、
それだけで料理をつくっていくことに限界が出てきたのだ。

「嫌いな食べ物でも、料理方法を考えて、
食べられるようにしよう」


yukaさんは、魚介類がダメ、ニンジン以外の野菜がダメ・・・。
しかし少しずつ食べられるようになっている。
旬のタマネギをただ炒めたものが
甘くておいしいと感じるようにもなった。
食べられるものが増えれば、
それだけ料理のレシピも広がっていく。

これから是非食べられるようになりたいと考えているのが、
ウニ・アワビ・納豆だそうだ。




味や栄養を意識したとき、
食べることは気持ちが満たされることだと
実感した
yukaさんは、
料理においても、楽しいと感じたり、
失敗しても気持ちの満足を得られるようになった。
そして、自分のためにつくっていた料理を、
誰かのためにつくるという幅が出てきた。



以前つき合っていた彼氏は、
yukaさんが食べたいイメージを伝えると、
それに合ったメニューで料理をつくってくれ、
彼女は大変感動したという。

「自分でも、人においしいって言ってもらえる
料理をつくりたいと思いました」

最初に人からおいしいと喜ばれたのは、カレーだ。
コーヒー、醤油、溶き卵を入れるもので、
昔、母親がつくってくれたものと同じ味ができた。
「このときは、やったー!!と思いましたね。
ただ、母親は卵など使ったことがないと言うのに、
同じ味になっているのは不思議ですが」




料理が生活のなかで大切な部分を占めている
yuka
さんは、こんな夢を持っている。

「簡単な手順でおいしいものをつくることが好きです。
 人に食べてもらっておいしいと言ってもらえるとうれしいです。

 将来的には、ごく普通に知れ渡る料理で、
それは誰がつくったものだろうと紐解いていったときに、
 私の名前がそこにある、
そんな料理を生み出してみたいと思っています」

食べることや料理を義務的にするとつらいだろうが、
yukaさんは、料理をしている自分のことが大好き。
だからもっともっと楽しくもなる。




料理から広がる新しい世界へ



さて、yukaさんは自分で個人的なホームページを持っている。
「お菓子と紅茶の専門店
mamma dish
http://www2.tokai.or.jp/mamma-dish/
という料理サイトである。

自分の側にいる人たちに対しては
実際に料理をつくっているが、
もっと多くの人たちに知らせたいという
思いからサイトを立ち上げたのだ。




「レシピがひとり歩きをしてくれたらいいなと思っています。
同じレシピでもつくる人によって
味が違います。それでまた新たなものが
生まれていってくれたらうれしいですね」

ホームページを立ち上げたことで、
yukaさんの世界もすごく広くなった。
全国各地の地元料理などの情報が入ってくる。
ある食材が大量に手に入ったとき、
どうしようかなと投げかけると、
多くの人からその料理方法がたくさん寄せられる。
自分の知らなかった料理方法など、
新鮮な驚きをもたらせてくれる。


  

「よくメールをいただくんですが、
料理をつくることを新たに見直すことができ、
生き甲斐をもらった、というものなどもあり、
 いろいろな人とのつながりは
貴重なものなんだと感じています」

ホームページは今のスタイルを崩すことなく
末永く続けていくという。
そして、できれば料理をネタにした日記は、
毎日欠かさず書いていきたいそうだ。




yukaさんのネット生活は、実は
個人的なホームページに留まっていない。
ホームページをつくるために
料理系のサイトを調べていったとき、
COOKPAD」(http://cookpad.com/mira/
というサイトと出会った。

ここは無料で自分のレシピを掲載する
ページが持て、登録している人たちとの
情報交換をしたり、レシピの検索をしたり
ということができる料理サイトである。


yukaさんもすぐに登録して、自分のレシピを公開したり、
いろいろな人と情報交換したりしていた。



しばらくすると
yukaさんは、

「このサイトをやっている人はどんな人なんだろう」
という興味を覚えた。
そしてたまたま、「
COOKPAD」で
スタッフ募集をしていることを知り、
さっそく応募してみた。
今から約1年少し前のことである。
実家に戻っていたこともあり、
仕事を探している最中だった。


「実際に社長と会って話をしてみて、
楽しく料理をつくることを第一に考えているなど、
料理に対する考え方が同じでしたので、
一緒に仕事ができたらいいなぁと思いました」


そして、yukaさんは運営スタッフとして
仕事をするようになったのである。

今後はサイト内に
とどまることなく、食品会社はじめ、
外の世界とのつながりによる新企画も
立てていきたいと、
yukaさんは意気込んでいる。




yukaさんにとって、食・料理というのは、
自分のため、周りの人のため
、また見知らぬ多くの人のため、
というふうに楽しい生活を送るためのキーワードである。

今後ますますネットワークは広がるだろうし、

yuka
さんの優しい人柄で多くの料理好きな
人たちが集まってくるだろう。




最後に、yukaさんの一番好きなものを尋ねてみた。
「よく聞かれるんですが、
この答えをすると、エッと驚かれます。
 料理の名前が出てくると皆さん思うみたいで(笑)
私は、栗が一番好きです。
バターで炒めて塩をパラッとかけたものです」


この答えを聞いて、
yukaさんの食に対するスタンスがよくわかった。
素材があって、それをいかにおいしく食べるためには
どんな料理方法をとったらいいのか、
という思考の流れがそこにある。

yuka
さんのレシピでつくってみるときには、
そこのところを理解すると
より一層味わい深いものになるに違いない。