「沼のばあさん」7年ぶりの大祭
静岡市葵区の東部にある卸商団地「流通センター」の裏山にある諏訪神社で、2009年3月29日(日)に7年ぶりの大祭がにぎやかに行われました。
この諏訪神社は「沼のばあさん」の伝説で知られた古い神社です。
小高い丘の上にある神社には、孫娘を沼の大蛇に奪われたおばあさんの悲しい伝説が伝わっています。
「麻機誌」によりますと、600年ほど前の昔、足利直義の大軍と新田義貞とその弟脇屋義助の軍が静岡市の西にある手越原で戦った時のことです。
麻機の岩崎蔵人国隆と弟は500人の手勢を引き連れ新田軍に加勢し、勝利を収めました。
麻機の岩崎家で開かれた戦勝の宴で脇屋義助は、小菊という娘を見染め、そのまま、ここに10日間も滞在したといわれています。
やがて小菊は義助の子を産み、小葭(こよし)という名の可愛い女の子を授かりました。
しかし、小葭はほどなく母と祖父を失い、おばあさんと二人だけになってしまったのです。
やがて小葭は美しい16歳の娘に育ちましたが、ある夏のこと、おばあさんの秋野は重い病の床についてしまいます。
そこで小葭は、麻機沼の向こうにある浅間さまに、願掛けに舟で通いつめたのです。
ある日、舟が沼の中程に来たとき、突然激しい渦が巻き、小葭の体は水中にのみこまれてしまいました。
このことを聞いたおばあさんの秋野は「小葭は沼の魔物にさらわれたに違いない」と・・・・。
そして病躯をおして沼までやって来て魔物退治を始めますがままならず、沼に身を投げてしまいまました。
それから100年ほど経ってから、この話を聞いた近くのお寺の僧侶は不憫な小葭とおばあさんの供養のため沼の畔でお経をあげました。
すると水面が、激しく渦立ち中から大蛇が浮かび上がってきたのです。
村人たちは、おばあさんがお経に助けられて魔物を退治したのだ、噂をしあいました。
そして沼の畔にある諏訪大明神に祭られました。
また、沼のおばあさんの像がつくられ近くの寺院に安置されています。
この日の大祭のため沼のおばあさんの御本体は諏訪神社に里帰りし、信者らの信仰を集めていました。
沼のばあさんのお話は、静岡市の大谷地区でも、少し違った形で伝承されています。
この物哀しい伝説は、多くの物語、人形劇、紙芝居など今なお人々に語り継がれています。
この日の諏訪神社の大祭は、桜もほころび始めた陽春とあって、南・北沼上、麻機地区の人たちは懇親を深めあっていました。