悪魔のようなあいつ


TBS 系 1975年 6月6日 〜1975年9月26日
金曜日 22:00〜22:55 全17回

原 作:阿久 悠・上村 一夫
脚 本:長谷川 和彦
音 楽:井上 堯之・大野 克夫
演 奏:井上堯之バンド
プロデューサー:久世 光彦

 

DVD-BOX PIBD−7090


CAST

 
可門 良 … 沢田 研二
可門 いづみ … 三木 聖子

野々村 修二 …

藤 竜也

八村 八郎 …

荒木 一郎

八村 ふみよ … 安田 道代
八村 ハル … 浦辺 粂子
山川 静枝 … 篠 ヒロコ
 白戸警部 … 若山 富三郎 (特別出演)
 
日夏 恵い子 … 那智 わたる

矢頭 たけし …

尾崎 紀世彦

金田医師 …

金田 龍之介
佐々木医師 … 三宅 康夫
看護婦 … 悠木 千帆
青柳 … ディック・ ミネ
倉本 … 伊藤 四郎
婦人 … 加藤 治子
右川 … 高田 光泰
 左川 … 岸部 修三 (現・岸部 一徳)
 
王 礼仁 … 細川 俊之

マキ …

長谷 直美

ノノ …

谷口 世津/関根 世津子
マヤ … 立野 弓子
スージー … スーザン
香川 … デイヴ 平尾
 灰山 … 関山 耕司
 夢さん … 阿部 昇二


第1回

演 出:久世 光彦
 このドラマが放映されていた頃,高校生で一人暮らし,テレビのない生活をしていたため,夏休みに2・3回観ただけでしたが,上村一夫さん作画のコミックスは入手して読んでいました.最近DVD BOXを入手したので,40何年ぶりにドラマ全体を観ることができましたが,やっぱりこの頃のジュリーは綺麗でした.肥ってしまったのが残念です.
さて,この連続ドラマ第1回では,実は三億円事件の犯人である可門良(沢田研二さん)を取り巻く状況設定と,各キャラクターの人物紹介がなされていますが,中には八村八郎(荒木一郎さん)の妻ふみよ(安田道代さん)など,コミック版にはほとんど出て来ないキャラクターが結構重要な役割を演じたりしています.コミックでは,良に犯されるのは八村の奥さんではなく,矢頭たけしの奥さんでした.個人的には,良に対して複雑な感情を抱いているクラブのオーナー野々村修三を演じている藤竜也さんの演技が印象に残ってます.もしかしたらこの人ゲイじゃないかしら?

三億円事件時効まであと187日

第2回

演 出:久世 光彦
 8年前,良がバンドボーイをしていた元GSのスター矢頭たけし(尾崎紀世彦さん)登場.良をいじめますが,この尾崎さんの演技が凄まじいです.このドラマが放映されていた頃,沢田さんは主題曲『時の過ぎゆくままに』が本人のシングルでは大ヒットを記録し,歌謡界におけるジュリー黄金時代を迎えつつあったのに対し,尾崎さんは`70年代初頭の人気が急降下していた頃で,半ば本気で沢田さんをいじめていたのではないかと思われるような感じを受けたのですが,久世さんも残酷なことするよね?

三億円事件時効まであと180日

第3回

演 出:和田 旭
 医師(金田龍之介さん)を脅して自らの余命を知り,電車の中で暴れた挙句泣き崩れる良,沢田さんの熱演もそこそこ結構なのですが,看護婦を演じる悠木千帆さんや,良を慰める宗教おばさんの加藤治子さん,やっぱりプロの女優さんの演技の方が印象に残りました.あと,もうひとりやたら暴れる場面の多い良の妹いずみを演じる三木聖子さん(新人)の方が暴れ方上手です.

三億円事件時効まであと173日

第4回

演 出:前川 英樹
 このドラマ,原作コミックはすぐに入手して読んでいたのですが,今回ドラマ全部を通して観ることができて,かなり内容に違いがあることを知ることができました.中でも,良を取り巻く2人の重要人物,野々村修三と日夏恵い子(那智わたるさん)のキャラクター設定にかなりの違いが認められます.コミックではお金持ちの旦那を持つ人妻だった恵い子は,このドラマでは野々村の元妻の高級コールガールで,旦那さん(日夏剛三)は出てきません.良をしつこく追い回す白戸警部(若山富三郎さん)は仙台へ出張のため,ここで一旦姿を消します.あと一人,コミックに出て来ない夢さんというキャラクター,演じる阿部昇二さんは昔コント55号の番組に出てた,坂上二郎さんの師匠にあたる人らしいですが,このドラマで良に関わってくる不可思議な人物を演じてます.

三億円事件時効まであと166日

第5回

演 出:久世 光彦
 八村八郎の妻・ふみよというキャラクターは原作コミックには出て来ないので,当然ながらこの回のふみよの妊娠というエピソードは,ドラマ脚本オリジナルということになりますが,これが八村の,やはり原作に出て来ないヤクザ・倉本(伊東四朗さん)への借金が嵩む原因となっているというのが結構説得力を持つ原因となっているような感じがしました.また,こういうキャラクターを伊東さんが演じるのって珍しい気がするのですが,結構ハマっていたように思います.

三億円事件時効まであと159日

第6回

演 出:和田 旭
 矢頭たけし再登場.このキャラクターも原作コミックでは街中で倒れた良を介抱しながら,逆に妻(ドラマには登場しない)を良に犯されたりしていたのですが,このドラマ版では泥酔してノノ(第4回までは谷口世津さん,この回から関根世津子さん)を犯したりして,徹底的にどうしようもない男として描かれています.ちなみにコミック版では,ノノを犯すのは八村で白戸警部に逮捕されてしまいます.八村と矢頭はヤクザ倉本の主催する麻雀で,借金を増やしてしまうのですが,八村から良の家を聞き出した倉本は留守中のいずみを襲い,駆け付けた良に返り討ちにあうもののさらに駆け付けた野々村が良を制止,倉本は死を,良は殺人を免れます.

三億円事件時効まであと152日

第7回

演 出:前川 英樹
 1968年12月10日三億円事件発生の回想シーン.良のかつての同僚・沢口健役で,井上堯之バンドの前身PYGのメンバーだった大口広司さんが出演しています.また,この回からなぜかオープニング・クレジットの音楽が,なぜか井上堯之・大野克夫の連名から大野克夫さん一人になっています.前回,野々村に命を救われた倉本は,結局野々村に殺されてしまいました.

三億円事件時効まであと145日

第8回

演 出:浅生 憲章
 不思議キャラ・夢さんの正体が明らかになり,仙台に出張していた白戸警部が再登場する回.野々村のサングラスに映る倉本殺害の回想シーン,これは『刑事コロンボ』,ロバート・カルプさんが犯人役のエピソードのパクリでしょう.死んでしまった倉本の代わりに八村に借金返済をせまるヤクザに井上堯之バンドのベーシスト・岸部修三さんが扮してますが,これが俳優としてのデビュー作,この後井上バンドを脱退して,岸部一徳さんとして名優への道を進みます.酔っぱらいの八村と恵い子に対して,香川(デイヴ平尾さん)が呟く「酔っぱらうのがどうしようもない奴なのか,どうしようもない奴だから酔っぱらうのか」,けだし名言です.

三億円事件時効まであと138日

第9回

演 出:和田 旭
 いずみの手術費を良に工面させないため,野々村と恵い子を逮捕してしまう白戸警部と,警察幹部を脅迫して出所し間一髪200万円を良に届ける野々村.,原作コミックではそれでも常識人の範疇にいた各キャラクターがメチャクチャな人間として描かれており,物語はますます混沌とした様相を呈してきます.特にそれが著しいのが白戸警部というキャラクターで,コミックでは執念の鬼刑事だったのが,ここではなんと八村と組んでいずみの誘拐まで企てようとします.ちなみにコミックでは八村と組むのはいずみの看護婦.山川静枝(篠ヒロコさん)でしたが,このキャラに関してはただ一人,ドラマの中では常識人として描かれているみたいです.

三億円事件時効まであと131日

第10回

演 出:前川 英樹
 白戸警部に唆されいずみを誘拐して身代金3億円を要求する八村に対し,逆にふみよと共謀しいずみとふみよの交換を申し入れる良.さらに野々村を通じて警察署長に手を回し,白戸警部がいずみを保護しているというデマを流して,無事いずみを救出するのですが,ここまでくるともうムチャクチャ,原作コミック以上に実写版ドラマの方がマンガみたいという逆転現象が生じてます.

三億円事件時効まであと124日

第11回

演 出:久世 光彦
 前回ラストで盗まれた『三億円事件』容疑者の一覧表を作って犯人を捜し始める良がヘンです.このドラマ,登場人物の性格が原作コミックとはかなり違っているのですが,特にそれが顕著なのが看護婦・山川静枝でした.コミックでは,「わたし色と欲という言葉が好きです」という言葉通り,八村八郎と組んで良を脅かす存在でしたが,ここでは何故か良に疑われて自殺を図る可哀そうな女として描かれています.

三億円事件時効まであと117日

第12回

演 出:和田 旭
 『三億円事件』の犯人は八村の妻・ふみよだった.おびき出した白戸警部を野々村に任せて,八村の家にある3億円を持ち出そうとしますが,良の計画に気づいた白戸警部と八村に待ち伏せされてしまい,白戸警部の代わりに現れた部下の夢さんを倒した野々村も駆け付けて,物語はいよいよ佳境を迎えます.このへんになるともう原作とは全く違った話になってしまっています.

三億円事件時効まであと110日

第13回

演 出:久世 光彦
 TVドラマ版オリジナル・キャラ王礼仁(細川俊之さん)登場,良の密出国を手配します.しかし,なぜかヤクザの手配師と,その強制労働の手入れに警官隊がなだれ込んで来て,再度良は逃亡するのですが,この場面で初めて少しだけタイガースのジュリーとサリーのからみが観られます.また,良がクラブ『日蝕』を離れて逃亡生活に入ってしまったため,これまで劇中で歌われていた主題歌『時の過ぎゆくままに』の代わりに,デイヴ・平尾さんの『ママリンゴの唄』が挿入歌として歌われます.

三億円事件時効まであと103日

第14回

演 出:久世 光彦
 このドラマ,井上堯之バンドの前身であるPYGのメンバーだったショーケン主演の『太陽にほえろ!』,『傷だらけの天使』に続いて,大野克夫さんが音楽,井上堯之バンドが演奏を担当した番組でしたが,後にその『太陽にほえろ!』でマミー刑事を演ずる長谷直美さんが,なんと暴走族役で出演してました.記憶を失った良.今度はノノが暴走族にはねられてしまい,暴走族のメンバー・マキ(長谷さん)に家に連れて行かれますが,このマキが実は王仁礼の妹だったというものすごいご都合主義.そして,ノノは王仁礼に殺されてしまいますが,原作に出てくるキャラが死んでしまうのはこれが初めてでした.

三億円事件時効まであと96日

第15回

演 出:前川 英樹
 記憶を失ってしまった良の彷徨.ドラマの後半から,全く原作を離れてしまった展開を見せていますが,これは雑誌に連載されていた原作コミックをドラマの方が追い越してしまったためで,この頃のアニメなんかによく見られた現象でした.日蝕に帰ってきた良が,久々に主題歌『時を過ぎゆくままに』を歌いますが,今回はガット・ギターを引いているのに音はいつもと同じ.この辺せっかく井上バンドが演奏しているのだから,音にこだわっってほしかったような気がします.音楽に関してはもう一点,記憶を取り戻しつつある良のバックで二つのテーマが交錯する表現があって,この部分に関してはさすがに大野克夫さんのセンスを感じました.今回のラストでは,もう出て来ないと思っていた矢頭たけしが久々に出てきて良に刺されてしまいますが,尾崎紀世彦さんの扱いがあまりにもひどすぎるので,なんか気の毒な気がしてきました.

三億円事件時効まであと89日

第16回

演 出:和田 旭
 記憶を取り戻した良.というわけで,この回は『ママリンゴの唄』と『時の過ぎゆくままに』の両方がBGMとして使われています.原作コミックとこのTVドラマの最も大きな違いは,コミックでは良が三億円事件の犯人であることは最後まで他の登場人物の誰にも知られずに終わるのに対し,このドラマではこの時点において,ほとんどの登場人物が知ってしまっている点にありますが,それゆえストーリーの展開も当然派手になり,今回はドラマ・オリジナル・キャラの王仁礼が野々村に殺されてしまいます.さらに,良は追ってきた白戸警部の前に姿を現しますが逮捕もされずに物語はクライマックスを迎えます.ドラマでは単なる可哀そうな女の山川静枝は良に無理心中を図った挙句,良に気づかれてしまいますが,このキャラに関しては原作の方が魅力的でした.

三億円事件時効まであと82日

第17回

演 出:久世 光彦/大岡 進
 この最終回は初回放映時に観たはずなんですが,ラストシーンの良と警官隊の対決は鮮明に覚えているものの,そこに至るまでの他の登場人物の死に関しては,ほとんど忘れていました.原作コミックでは登場人物で死んでしまう者は皆無で,ラストシーンは誰に知られることもなく静かに狂気を迎えた良の笑顔で終わりますが,このドラマでは登場人物のほとんどが死んでしまうお祭り騒ぎの終焉に死を迎える良のやはり不気味な笑顔で終わります.このドラマ,放映開始後すぐに雑誌連載中の原作コミックを追い越してしまったために登場人物の設定のみ踏襲していて,ストーリー自体は脚本の長谷川和彦さんのオリジナルだったみたいです.そして,当時としては過激な内容だったため視聴率が稼げずに,事件の時効を待たずして放映が終了されてしまいました.

三億円事件時効まであと75日