はぐれ刑事


日本テレビ系 1975年10月7日 〜1975年12月30日
火曜日 21:00〜21:54 全13回

企 画:古賀 伸雄/岡田 晋吉
プロデューサー:/香取 雍史/梶山 仗祐/長富 忠裕
脚本監修:菊島 隆三
選 曲:山川 繁
音 楽:ティン・パン・アレー/ペドロ&カプリシャス
製 作:俳優座映画放送/国際放映

 

DVD-BOX  MRBF-1015


CAST

 
風間 史朗 … 平 幹二朗

影山 健三郎 …

沖 雅也

原田 美智子 …

夏 純子

ラリパッパのお京 … ホーン・ユキ
四谷係長 … 山本 清
矢野刑事 … 阿部 希郎
 坂田刑事 … 望月 太郎
 大川刑事 … 片岡 五郎
 山本刑事 … 青木 卓司
 大村刑事 … 伊東 辰夫
酒処「朝若」主人 … 朝若 芳太郎
 滝川課長 … 小沢 栄太郎
 滝川 淳子 … 浅茅 陽子
  … 山崎 イサオ
新藤外科看護婦 … 大塚 訓代
新藤外科看護婦 … 森田 由起子
 大辻医師 … 日野 正平
 新藤 保太郎 … 田中 邦衛


第1話 銃弾

脚 本:尾中 洋一
監 督:小野田 嘉幹
ゲスト:桃井 かおり/磯部 勉/橋本 功/地井 武男/川口 敦子/ペドロ&カプリシャス
 この番組に関しては,最近までその存在を知らなかったのですが,沖雅也さんが出演していたということで DVD BOX を入手して観ました.時期的には沖さんが『太陽にほえろ!』で滝隆一=スコッチ刑事を演じる前の1975年10〜12月放映ということで,『必殺仕置屋稼業』と同時期の作品ということになります.沖さんが1972年に一度ゲスト出演した『太陽にほえろ!』の岡田晋吉プロデューサーは『必殺仕置屋稼業』の沖さんの演技に着目して『太陽』レギュラー出演を依頼したという話ですが,岡田氏はこの『はぐれ刑事』にも企画で参加しており,その話には疑問が感じられます.この『はぐれ刑事』で沖さんが演じる影山健三郎刑事は新人ながらエリート意識の強い生意気で未熟な刑事という設定で,『太陽』のスコッチ刑事や『仕置屋稼業』の市松のようなクールなキャラクターではありませんが,『太陽』ゲスト出演時の久保刑事や『必殺仕置人』の棺桶の錠のような未熟ながらも若々しさに満ち溢れた魅力的なキャラクターでした.この第1話では,ドラマの舞台である台東署および周囲の面々の設定と,主人公=風間史郎刑事(平幹二朗さん)が影山の銃弾を胸に受け,不摘出のまま現場に復帰する過程が描かれています.ラリパッパのお京(ホーン・ユキさん)の台詞にあるように,銃を撃つ際に眼をつぶってしまう影山刑事の姿が,颯爽としたスコッチ刑事とは違った意味で何故か魅力的に感じられるのはやはり沖さんのキャラ?

第2話 逃避行

脚 本:尾中 洋一
監 督:小野田 嘉幹
ゲスト:宮下 順子/蟹江 敬三/泉 ピン子/沢 りつお
 日活ロマンポルノの大スターだった宮下順子さんがゲスト.かつて風間刑事や新藤保太郎医師(田中邦衛さん)のマドンナだった女性を演じていますが,もと『氷屋』という設定が下町らしくてほほえましいです.相手役の蟹江敬三さんはゆで卵を常食とする(その意味が泉ピン子さん演じる隣人の口から語られるのが笑える)チンピラという,相変わらず超個性的な役を演じています.

第3話 復讐

脚 本:安倍 徹郎
監 督:松尾 昭典
ゲスト:三ツ木 清隆/津山 登志子/松山 照夫/小美野 欣二
 『太陽にほえろ!』が性犯罪を取り扱わないことをテーゼとしたお上品な番組であったのに対抗したわけではないでしょうが,18歳の娼婦が殺されポン引きの兄が復讐を図るというメチャ下世話な趣味を堪能させてくれるエピソード,この時代,まだ未成年に対する淫行が現在ほど問題視されておらず,売春に対する『買春』などという言葉も概念もなく,未成年の娼婦を買う行為が違法行為,犯罪とはされていなかったことを頭に入れて観ないと,わかりにくい話かもしれません.それよりも,いくら許せない奴だからといって無抵抗の犯人を袋叩きにする刑事の行為は今も昔も違法行為であり,犯罪だと思うのですが?

第4話 密告

脚 本:尾中 洋一
監 督:松尾 昭典
ゲスト:赤座 美代子/蜷川 幸雄/田口 計/丹古母 鬼馬二/阿川 泰子/粟津 號/松崎 真/石井 富子/岡田 正典
 ヤクザとその情婦と現職刑事の三角関係という前話以上に下世話なテーマのエピソード.この頃まだ俳優として活躍していた蜷川幸雄さんが見事な演技を見せてくれています.それにしても沖雅也さん演じる影山刑事,新米のくせに態度でかすぎ.係長もヒラの刑事も関係ないみたい.

第5話 偽証

脚 本:山田 正弘/櫻井 康裕
監 督:森崎 東
ゲスト:加藤 嘉/小野 進也/木村 理恵/江幡 高志
 『太陽にほえろ!』2代目事務員・アッコを演じた木村理恵さんがゲスト.このエピソードの放映が1975年11月4日で,『太陽』では11月7日放映の第173話からセミレギュラーとして出演しているので,もしかしたらこのエピソードが『太陽』のテスト出演だったのでは?と思ってしまいました.この人,『太陽』出演中にどんどん綺麗に女優さんらしく成長していきましたが,ここではやはりまだちょっと不細工であかぬけないイメージです.もう一人,『太陽』常連出演の小悪党の代名詞・江幡高志さんが珍しく真犯人役で出演していますが,流石に印象的な演技をみせてくれています.

第6話 姉弟

脚 本:尾中 洋一
監 督:森崎 東
ゲスト:渡辺 美佐子/長谷川 哲夫/野村 昭子/今福 正雄/藤岡 重慶/成瀬 昌彦
 現職刑事(平幹二朗さん)と民間人(長谷川哲夫さん)の緊急手術がバッティング.手術の順番をめぐって民間人の姉(渡辺美佐子さん)と大ゲンカしたり,手術の原因を作ったヤクザの親分(藤岡重慶さん)を手錠で滅多打ちにしたり,影山(沖雅也さん)ってとんでもない暴力刑事です.

第7話 蒸発

脚 本:下飯塚 菊馬
監 督:小野田 嘉幹
ゲスト:片桐 夕子/中谷 一郎/手塚 茂夫/林 ゆたか/本山 可久子
 日活ロマンポルノのスターで,『太陽にほえろ!』でも度々ゲスト出演して印象的な役柄を演じている片桐夕子さんがゲスト.冒頭から『優生保護法』などという現在は存在しない法律の名称が出てきたり,『トルコ風呂』,『トルコ嬢』などというやはり現在では使用されない名称が出てくる,時代の流れを感じさせるエピソード.また,平さん演じる風間刑事が「食うか?」と食べかけのラーメンを差し出し,沖さん演じる影山刑事が当然のようにそれを食べるシーンでは,沖さんが亡くなった後,平さんが沖さんのことを悼んで「胡蝶蘭のような人だった」と語ったという話を思い出しました.それにしても,ストーリーはかなり乱雑で,犯人の逮捕のされ方があまりにもマヌケでした.

第8話 裏切り

脚 本:安倍 徹郎
監 督:小野田 嘉幹
ゲスト:本郷 直樹/中北 千枝子/本木 紀子
 この頃になると,風間刑事の容態もかなり悪くなって来ていて,一旦弾丸摘出手術を新藤医師に依頼しますが,ひと眠りした後心変わりしてさっさと逃げ出してしまいます.一方犯人(本郷直樹さん)の引き渡しを約束した母親は,やはり心変わりして犯人を逃がそうとしますが,風間・影山両刑事に逮捕されてしまいます.最初,犯人側に裏切りがあった訳ではなかったので,なんでこのサブタイトルなのか理解ができませんでしたが,最後まで観ていてやっとその意味がわかりました.それにしても,犯人蔵匿・逃走幇助に関する肉親者の減刑に関する刑法の規定を知らなかった影山刑事,この人の持ってるエリート意識の根拠は一体何なのか? 素朴な疑問が残ります.

第9話 誘拐

脚 本:福田 純
監 督:松尾 昭典
ゲスト:渥美 国泰/小原 秀明/平泉 征/槙 ひろ子/中村 美代子
 成功率の最も低い犯罪である誘拐,しかも狂言が途中から本物にんるという,考えただけで成功するはずのないおバカさんな犯罪がいかに行われるかという点が関心の焦点でありましたが,予想通り全くおバカさんな結果に終わって肩透かしを食ったような気分です.この番組,いわゆる本格的な犯罪ドラマじゃないので仕方のないことなのですが.

第10話 本ボシ

脚 本:櫻井 康裕
監 督:松尾 昭典
ゲスト:佐野 厚子/市地 洋子/真屋 順子/三景 啓司/堺 左千夫
 殺された学生の婚約者の姉とその妹.犯人の見当をめぐって対立する風間刑事と影山刑事.しかしながら,どちらかというと台東署の刑事たちよりも姉妹とその家族を中心に描かれており,シリーズ中でも異色のエピソードだったような気がします.

第11回 氷雨

脚 本:尾中 洋一
監 督:渡邊 祐介
ゲスト:田中 浩/木村 元/佐久間 宏則/地井 武男/外山 高士
 シリーズも終盤に入り,負傷者を含むヤクザ3人組が新藤外科に籠城する事件をめぐって,影山刑事が風間刑事を傷つけた弾丸が自分のものであることに気づき,風間刑事に詫びを入れ,新藤医師に手術を依頼,物語はいよいよ佳境に入ります.しかしながら,それ以上に新藤外科の面々や人質となったラリパッパのお京(ホーン・ユキさん),そして普段「無茶はいけません」としか言わない温厚な滝川課長(新藤栄太郎さん)が民間人の安全優先を決して譲らない等,レギュラーメンバーの人物描写が印象に残ったエピロードでした.このシリーズのメインテーマは,やはり一年生刑事・影山の成長と,それを見守る風間刑事・滝川課長の心の交流だったと思います.

第12話 傷痕

脚 本:下飯塚 菊馬
監 督:渡邊 祐介
ゲスト:安東 結子/瀬戸山 功
 実の娘が手引きをした窃盗の犯人が鉢合わせをした父親を殺してしまう事件.娘に救いの手を差し伸べようとした風間刑事がいよいよ危篤状態に陥り,すでに辞表を提出していた影山刑事が見事に風間刑事の後を継ぎ娘に救いをもたらすという,それこそ極めて浪花節的なエピソード.無事に事件を解決に導いた影山刑事が風間刑事が自分に言った台詞をそのまま娘に伝えた姿と,またその影山刑事に滝川課長が呟く「やっとおわかりあそばしたか?」の台詞がいいです.

第13話 冬よ せめて美しくあれ

脚 本:尾中 洋一
監 督:小野田 嘉幹
ゲスト:市毛 良枝/南風 洋子/桑山 正一/内田 勝正/桜井 センリ/鹿島 信哉
 レイプされた友人・マリコ(市毛良枝さん)の敵討ちでレイプ犯2人を射殺してしまったお京.この仕事に限り復帰する影山刑事と,影山に『身内を逮捕する』という経験によって立ち直りを期待する風間刑事と滝川課長.さらにお京逮捕のあと,影山がマリコに殺されてしまうという信じられない結末.まさか最終回がこんな悲痛なエピソードだとは思いませんでしたが,新人刑事・影山の成長とそれを見守る風間刑事と滝川課長という人間ドラマが一変してやるせない悲劇となって終わってしまいます.やはりこのラストに関しては,納得がいかないというか,違和感を感じました.シリーズを通して観た感想としては,やはり風間刑事の影山刑事に対する師弟愛みたいなものがドラマのメインテーマだったとは思いますが,やはりそこはかとなく漂うホモセクシュアルな雰囲気も否定できませんでした.この最終回がなければいいドラマだったと思えただけに残念でした.