Sherlock Holmes
シャーロック・ホームズの冒険


放映:UK ITV 1984 〜1994年
    JP NHK 1985 〜1995年

原作:サー・アーサー・コナン・ドイル

構成 : ジョン・ホークスワース

製作:マイケル・コックス
    ジューン・ウィンダム・デービス

音楽:パトリック・ゴワーズ

  

DVD BOX


  CAST
 シャーロック・ホームズ  ジェレミー・ブレット  露口 茂
 ジョン・H・ワトソン (1st・2nd Series)  デビッド・バーク  長門 裕之
 ジョン・H・ワトソン (3rd Series 〜)  エドワード・ハードウィック  福田 豊土
 ハドソン夫人  ロザリー・ウィリアムズ  竹口 安芸子
 レストレード警部  コリン・ジェボンズ  川辺 久造
 ブラッドストリート警部 (青い紅玉)  ブライアン・ミラー  村越 伊知郎
 ブラッドストリート警部 (他2話)  デニス・リル  小林 勝彦/上田 敏也
 マイクロフト・ホームズ  チャールズ・グレイ  松村 達雄/久米 明
 ジェームズ・モリアーティ教授  エリック・ポーター  南原 宏治


1st Series - The Adventure of Sherlock Holmes

ボヘミアの醜聞 A SCANDAL IN BOHEMIA
監督 : ポール・アネット
脚色 : アレキサンダー・バロン
ゲスト: ゲイル・ハニカット(三林 京子)/ウルフ・カーラー(内藤 武敏)
 原作は小学生の頃,偕成社のジュブナイルで前作読んでいて,その後ミステリーにはまるきっかけとなった作品なので,このシリーズは懐かしく観ましたが,流石に忘れてしまっているエピソードも多々ありました.特に印象に残っている作品は,長編では『緋色の研究』,短編では『まだらの紐』,『グロリア・スコット号事件』,『三人の学生』あたりなのですが,このシリーズでは『まだらの紐』を除いて映像化されていないのが,少々残念でした.さて,このシリーズ第1話は,原作でも第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』の第1話にあたる作品で,ホームズ作品としては,長編の『緋色の研究』,『四人の署名』に続く第3作となりますが,シリーズ第1話なのでホームズとワトスンの出会いから描かれています.女性蔑視の傾向のあるホームズが生涯を通じて唯一尊敬の念を持ち続けていたと思われる女性アイリーン・アドラーに敗北を喫するエピソードで,殺人事件ではありませんが,わりと強烈な印象を与えられ記憶に残っているお話でした.アイリーン・アドラーを演じているゲイル・ハニカットさんは私の大好きな女優さんなのですが,アラン・ドロンさんの『スコルピオ』,ロディ・マクドウォールさんの『ヘルハウス』の2作でしかそのお姿を拝見したことがなかったので,この作品でお目にかかれてびっくりしたとともに,とても嬉しかったのです.

踊る人形 THE DANCING MEN
監督 : ジョン・ブルース
脚色 : アンソニー・スキーン
ゲスト: テニエル・エバンス(根上 淳)/ベッツィ・ブラントレー(櫻田 千枝子)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.暗号ミステリーの古典ともいうべき作品で,やはり印象に残っている作品です.ホームズの変装は見事でしたが,やはり当初殺人事件ではなかったにも関わらず,結果として依頼人が殺されてしまうという,どちらかというと敗北を喫したエピソードであったと言えると思います.

海軍条約事件 THE NAVAL TREATY
監督 : アラン・グリント
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: デビッド・グリアム(樋浦 勉)/ガレス・トーマス(平林 尚三)
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.このエピソードについては,タイトルは失念しておりましたが,内容は覚えておりました.珍しくワトスン博士がホームズに依頼人を紹介し,ハドソン夫人の協力のもと,ホームズの鮮やかな事件解決の演出が印象的な作品です.

美しき自転車乗り THE SOLITARY CYCLIST
監督 : ポール・アネット
脚色 : アラン・ブレイター
ゲスト: バーバラ・ウィルシャー(樫山 文枝】/ジョン・カッスル(阪 脩)/マイケル・シベリー(矢田 耕司)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.こちらは,内容よりタイトルの方が印象に残っていた作品です.ドラマではホームズのボクシングのシーンが強烈な印象を残します.原作のこのエピソードは,日本のドラマ『古畑任三郎』のスペシャル『古畑中学生』の中で,『赤毛組合』とともに元ネタに使われておりました.

まがった男 THE CLOCKED MAN
監督 : アラン・グリント
脚色 : アルフレッド・ジョウネシー
ゲスト: ノーマン・ジョーンズ(佐野 浅夫)/リサ・ダニエリー(北村 昌子)/デニス・ホーソーン(大木 民夫)/フィオナ・ショー(小沢 寿美恵)
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.夫である将校殺しの容疑をかけられた妻をホームズが救出するエピソード.これってネタばれになりますが実際には殺人は行われていないわけで,わりとこのシリーズ,まだ最初の数話を観たばかりにも関わらず.ホームズが失敗するエピソードや事件そのものが大したことないエピソードが多かったような気がしています.こどもの頃読んだジュブナイルもこんなんだったかな?

まだらの紐 THE SPECKLED BAND
監督 : ジョン・ブルース
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: ジェレミー・ケンプ(小松 方正)/ロザリン・ランド(二木 てるみ)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録.作者コナン・ドイルさん自身が,ホームズ短編の中で一番のお気に入りだった作品で,エドガー・アラン・ポーの『モルグ街殺人』と並んで,『意外な犯人』,『意外な凶器』そして『密室殺人』をモチーフとした古典的名作とされている作品ですが,このドラマも原作に忠実に作られた傑作だと思います.実は原作にはここには詳しくは書けない,設定上かなりおかしな部分があるのですが,それを感じさせない妙な説得力のある作品に仕上げられています.ゲストのジェレミー・ケンプさんの怪演も小松方正さんの吹き替えも見事でした.

青い紅玉 THE BLUE CARBRUNCLE
監督 : デビッド・カースン
脚色 : ポール・フィニー
ゲスト: フランク・ミルドマス(村上 冬樹)/ケン・キャンベル(松橋 登)/フランク・ミルズ(山田 吾一)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録.シリーズの中でも有名な話らしいのですが,『青い』『紅玉』という矛盾したタイトルと,宝石を生きたガチョウに飲み込ませて隠すというトリックは印象に残っていたものの,ストーリー自体はあまり覚えていませんでした.ラストで犯人を見逃して,反発するワトソンに「僕は警察のために仕事をしているのではない」と言い訳するホームズの苦悩を,演者のジェレミー・ブレットさん,吹き替えの露口茂さんともに上手に演じておられます.


2nd Series - The Adventure of Sherlock Holmes

ぶなの木屋敷の怪 THE COPPER BEECHES
監督 : ポール・アネット
脚色 : ビル・クレイグ
ゲスト: ジョン・アックランド(田中 明夫)/ナターシャ・リチャードスン(榊原 るみ)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録.印象的なタイトルはよく覚えてみたものの内容はほとんど忘れていましたが,今回この DVD で観て思い出しました.その異様さが当時はすごく印象に残っていて大好きなエピソードだったはずなのですが,なんで忘れてたんでしょう? 遺産横取りのために前妻との間に生まれたこどもを幽閉する,ってパターン,その後内外あちこちの作品で見られたような気がします.やはり,古典的名作のひとつと言えるでしょう.

ギリシャ語通訳 THE GREEK INTERPRETER
監督 : アラン・グリント
脚色 : デレク・マーロー
ゲスト:
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.ホームズの兄マイクロフト初登場.好きなキャラクターで,演じているチャールズ・グレイさんも吹き替えの松村達雄さんもいい味出してます.が,この TV シリーズの吹き替え版,ホームズ役の露口茂さん,ワトスン役の長門裕之さん,そしてこの松村さん,それぞれにまさに適役だと思うのですが,どうしてもご本人の顔がちらついてしまうのは,有名俳優を起用することのむずかしさだと思います.さすが天下の NHK?

ノーウッドの建築業者 THE NORWOOD BUILDER
監督 : ケン・クリープ
脚色 : リチャード・ハリス
ゲスト: ロザリー・クラッチリー(南田 洋子)/ヘレン・ライアン(鳳 芳野)/ジョナサン・アダムス(大宮 悌二)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.ホームズの好敵手?レストレード警部初登場.原作では第1作長編の『緋色の研究』でグレグスン警部と共に登場し,以後警察関係者ではシリーズ最多出演で最も印象に残っているキャラクターです.こどもの頃読んだジュブナイル版では,単なるホームズの協力者みたいに描かれていて,それほど強い個性の持ち主ではなかったのですが,この TV シリーズではかなり原作に近く,その人物が掘り下げられている模様です.吹き替えの川辺久造さんも,わりと良く拝見する俳優さんなので,やはりそのお顔がちらついてしまいました.また,ヒロイン役の吹き替えを南田洋子さんが演っており,長門さんと夫婦共演を果たしています.このエピソードに関しては,隠れている犯人をおびき出すホームズの手法が芝居がかっていて,タイトル・内容ともに印象に残っている作品でした.

入院患者 THE RESIDENT PATIENT
監督 : デビッド・カースン
脚色 : デレク・マーロー
ゲスト: ニコラス・クレイ(国広 富之)/パトリック・ニューエル(神田 隆)
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.このストーリーにおいてホームズは推理によって事件の真相を明らかにするものの,何の解決にも至っておりません.そればかりか,依頼人が嘘をついていることに対して態度を硬化させ,その死を招いてしまっているわけで,かなりの比率でその責任を有するものであると思われます.これって名探偵? 迷探偵?

赤髪連盟 THE RED HEADED LEAGUE
監督 : ジョン・ブルース
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: ロジャー・ハモンド(高木 均)/リチャード・ウィルソン(寺島 幹夫)/ティム・マッキナリー(城山 知馨夫)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録.短編としては『ボヘミアの醜聞』の次に発表された第2作目.そのプロットの独創性から,作者コナン・ドイル自身も『まだらの紐』に次いで第2位の評価を与えている名作で,シリーズの代表作として語られることも多い作品です.『古畑任三郎』でも『美しい自転車乗り』と共にプロットがパクられておりました. TV シリーズでは,次作の『最後の事件』の伏線としてモリアーティ教授がこの事件に関わっていた設定となっておりますが,原作ではもちろんそのような設定はなく, TV シリーズ独自の設定なのであります.

最後の事件 THE FINAL PROBLEM
監督 : アラン・グリント
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト:
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.1893年に発表されたシリーズ最終話で,以後10年後の1903年の『空き家の怪事件』まで,シリーズ短編は執筆されませんでした.この TV シリーズでも第2シリーズの最終話で,『空き家の怪事件』が第3シリーズの再開第1話という形式をとっています.さて,この TV シリーズの主役シャーロック・ホームズを演じたジェレミー・ブレットさん同様,宿敵モリアーティ教授を演じたエリック・ポーターさんも原作のイメージをそのまま再現した感じで,見事な演技を魅せてくれています.また,日本語吹き替えの南原宏治さんの演技も本当にハマっていて素晴らしかったと思います.実はホームズ役の露口茂さんは俳優さんとしては『太陽にほえろ!』の山さん役で有名ですが,南原さんは同作品では山さんを嫌っていた七曲署2代目署長役で短期間ですがセミレギュラー出演しており,舞台を替えての因縁の対決(?)となりました.ワトスン役のデビッド・バークさん(声・長門裕之さん)はこのエピソードを最後に降板してしまいました.


3rd Series - The Return of Sherlock Holmes

空き家の怪事件 THE EMPTY HOUSE
監督 : ハワード・ベイカー
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: パトリック・アレン(坂口 芳貞)/ジームズ・ブリー(松村 彦次郎)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.TV シリーズでは第2シリーズ最終話の『最後の事件』の3年後,シャーロック・ホームズの復帰第1作となるエピソードです.この TV シリーズ,日本語タイトルは『シャーロック・ホームズの冒険』で統一されてしまっていますが,原題は第1・2シリーズが第1短編集と同様の『シャーロック・ホームズの冒険』,第3・4シリーズが第3短編集と同様の『シャーロック・ホームズの帰還』,第5シリーズが第5短編集と同様の『シャーロック・ホームズの事件簿』,第6シリーズが第2短編集と同様の『シャーロック・ホームズの思い出』となっており,第4短編集の『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』のみ TV シリーズのタイトルとしては使われておりません.また.この第3シリーズからワトスン役をエドワード・ハードウィックさん(声・福田豊土さん)が演じています.さらに, TV シリーズではモリアーティ教授がらみとなっている『赤髪連盟』,『最後の事件』,『空き家の怪事件』の3エピソードの脚色を TV シリーズ構成のジョン・ホークスワークさん自身が担当しており,製作に力が入れられている感じで,どのエピソードもシリーズ中の白眉となっております.このエピソードでは,ハドソン夫人役のロザリー・ウィリアムズさん(声・竹口安芸子さん)の出番も多く,初めて捜査に参加する姿が描かれています.

プライオリ・スクール THE PRIORY SCHOOL
監督 : ジョン・マッデン
脚色 : トレバー・ボウエン
ゲスト: アラン・ハワード(土屋 嘉男)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.珍しく銭ゲバぶりを発揮するホームズ.バックには,当時イギリスでの所得税率が引き上げられたという事情があるらしいです.

第二の血痕 THE SECOND STAIN
監督 : ジョン・ブルース
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: パトリシア・ホッジ(小沢 寿美恵)/スチュワート・ウィルソン(有川 博)/ハリー・アンドリュース(鈴木 瑞穂)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.わりと記憶に残っているエピソードで,女性に対して厳しく,時には女性蔑視と思われる言動の多いホームズですが,実は女性に対して優しく,この事件のようにその犯行を見逃している例が結構多かったような記憶があります.

マスグレーブ家の儀式書 THE MUSGRAVE RITUAL
監督 : デビッド・カースン
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: マイケル・カルバー(内田 稔)/ジェームズ・ヘイゼルダイン(磯部 勉)
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.原作では,ホームズがワトソンに語る昔話としての設定が,ドラマでは現在進行の事件として描かれており,脚本に少々無理があるような印象を受けました.三角法を利用した宝探しのプロットは,やはり『古畑中学生』でパクられています.

修道院屋敷 THE ABBEY GRANGE
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : トレバー・ボウエン
ゲスト: アン・ルイーズ・ランバート(香野 百合子)/オリバー・トビアス(野沢 那智)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.タイトルも内容もほとんど忘れているのですが,何故かグラスの残されたワインの澱からホームズが3人組の犯行ではないことを推測する件だけすご〜く印象に残っていて,今回ドラマを観ていてはっきりとその内容を思い出したエピソードでした.ここでもホームズは真犯人を見逃すようなことをやってしまっていますが,被害者がアル中の DV オヤジで,加害者に正当防衛が認められるという同情すべき点を考慮に入れたにしても,こんなことしていいのかね? この人,シリーズ中で何度も犯人を取り逃がしたり,見逃したり,あるいは逆に依頼人が殺されたりしてしまったりしていて,それをワトスンは正確に記述しているわけなので,どこから『名探偵』の名声が得られたのかはなはだ疑問なのであります.

もう一つの顔 THE MAN WITH THE TWISTED LIP
監督 : パトリック・ラウ
脚色 : アラン・プレイター
ゲスト: クライブ・フランシス(勝部 演之)/エレノア・デビッド(高林 由紀子)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録.エピソードそのものよりもアヘン窟の描写等の独特な雰囲気が記憶に残っている作品です.人物消失トリックを扱った古典的作品とされていますが,実はこれ,事件でもなんでもなく肩透かしを喰らわされたようなエピソードでした.コンプライアンス上の問題か,何故かこのエピソードのみ日本語タイトルがちょっと変更されていますが,ストーリーのネタばれになってしまっているので,原題のままの方が良かったかな?

六つのナポレオン THE SIX NAPLEONS
監督 : デビッド・カースン
脚色 : ジョン・ケイン
ゲスト: エリック・サイクス(高城 淳二)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.印象的なタイトルとストーリー展開はよく覚えていたのですが,まさかマフィアがらみの話だったとは,すっかり全く忘れていました.サブキャラのレストレード警部が大活躍?する話で,ラストのホームズとレストレードのからみは感動的です.レストレード役のコリン・ジェボンズさんという俳優さん,『フランス軍中尉の女』に出ていたらしいのですが,全く失念しておりました.こんど, DVD 買って観てみよっと.


Special - Long Version

四人の署名 THE SIGN OF FOUR
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: ジェニー・シーグローブ(結城 しのぶ)/ロナルド・レイシー(樋浦 勉)/エムリス・ジェームス(富田 耕生)/ジョン・ソウ(川合 伸旺)
 原作は4本の長編のうちデビュー作『緋色の研究』に続く2作目の長編で,ホームズ作品としても第2作目.個人的には,こども時代にジュブナイルで読んだ『名探偵ホームズ』シリーズのうち,一番記憶に残っていて大好きな作品が最初に読んだ『緋色の研究』なのですが,あとはやはり長編よりも短編の方が印象の強い作品が多く,この作品や長編の中では傑作と呼ばれている『バスカヴィル家の犬』にしても,その内容はほとんど忘れてしまってました.この『四人の署名』に関しても,印象的なタイトルと,依頼人が後のワトスン夫人となるという件を除いては,ほとんど覚えていませんでした.ちなみの,この TV シリーズではワトスンの結婚には触れられておらず,かわいそうなワトスン氏はず〜っと独身のままみたいなのですが,これはセミレギュラーをこれ以上増やすわけにはいかないという,番組上の制約・事情があったみたいです.シリーズでは初の2時間スペシャルということもあり,また原作でも第2作目ということもあって,主人公シャーロック・ホームズの人物設定の描写が多いわけですが,このシリーズを観ていると,このホームズという人物,ちょっとイライラするとワトスンやハドソン夫人に当たり散らす,わがままで女性蔑視のヤク中という,かなりやな奴です.で,NHK で放映時には,こうした負の部分がほとんどカットされているのです.このエピソードについては,内容をほとんど失念していたのですが,観ていてかなり思い出した部分もあり,結構面白い作品だったと思います.しかしながら原作は『緋色の研究』同様,現在と過去の二部構成による物語ですが,やはり『緋色の研究』の方が小説として面白くよくできていたと思われますので,このシリーズでは製作.映像化されていないのが悔やまれます.


4th Series - The Return of Sherlock Holmes

銀星号事件 SILVER BLAZE
監督 : ブライアン・ミルズ
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: ピーター・バークワース(田中 明夫)
 原作は第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.人間消失以上に不可解な馬の消失とその調教師の死という連続したと思われる二つの事件に意外な犯人と正当防衛という二つの要素がからみあった複雑な事件.このシリーズにはあと『ショスコム荘』がある競馬ミステリーというジャンル,日本では岡嶋二人さんの初期作品くらいしか読んだことがないのですが,多かれ少なかれ,このシリーズの影響を受けていると思われます.いずれにしても,動物がからんだ犯罪物語ってとても不愉快な気分になるので,あまり好きになれません.

悪魔の足 THE DEVIL'S FOOT
監督 : ケン・ハナム
脚色 : ゲーリー・ホプキンズ
ゲスト: デニス・クイリー(石田 太郎)/ダミエン・トーマス(堀 勝之祐)
 原作は第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録.健康を害し,ワトスン博士と共に転地療養に来ていたホームズが巻き込まれた事件のエピソードですが, TV シリーズでは冒頭の部分で自らコカインへの依存を断ち切ろうとする姿が描かれています.しかしながら,日本で放映された NHK ヴァージョンでは,ホームズのコカイン使用癖にまつわる部分がほとんどカットされていたため,この DVD の完全版(カットされていた部分の音声が英語,日本語字幕で収録)では,日本語収録部分が不自然な状態でつぎはぎになっているので,理解するのに一苦労でした.麻薬にまつわるミステリーなので,その設定を利用したシナリオだったと思われますが,このエピソードに関しては特に,全編英語で観るか,後にリリースされた全編日本語訳のものを観た方がいいです.エピソードそのものについては,覚えていませんでしたが,すごーくよくできた話で,面白く観ることができました.今回,またホームズ氏は独断で犯人を見逃して言い訳しています.

ウィステリア荘 WISTERIA LODGE
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: フレディ・ジョーンズ(名古屋 章)/キカ・マーカム(二宮 さよ子)/ドナルド・チャーチル(福山 象三)
 原作は第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録.『悪魔の足』同様,物語の冒頭部分のカット部分が多いため,日本語収録部分がつぎはぎになっています.また,この第4短編集に収録されているエピソードは,両方ともこれまでのエピソードと違って,イギリスの地方における怪奇趣味にあふれたものとなっており,原作の作風が変化していったことを示しています.この DVD 観終わったら,原作の短編集を読んでみるつもりです.今回のゲスト,サリー州のベインズ警部のキャラクターが秀逸で,演ずるフレディ・ジョーンズさんと吹き替えの名古屋章さんの功績大だと思います.一方,原作では,『緋色の研究』でレストレード警部と共に登場し,シリーズを通じての出場回数もレストレード警部に続く2位のグレグスン警部は,何故かこの TV シリーズでは冷遇されており,このエピソードでも出番が省略されてしまっていてかわいそうなのです.

ブルース・パーティントン設計書 THE BRUCE PARTINGTON PLANS
監督 : ジョン・コリー
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: ジェフリー・ペイルドン(西本 裕之)
 原作は第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録.シャーロックの兄マイクロフト・ホームズが『ギリシャ語通訳』に続いて2度目の登場.演じているのは前回同様チャールズ・グレイさんですが,吹き替えの方は松村達雄さんから久米明さんに変更されています.前回の松村さんもいい味出していたのですが,あまりにも特徴のある声で,ご本人のイメージが強烈に感じられすぎてしまっていたためのキャスト変更でしょうか? 好きなキャラクターなのですが,この人の出てくるエピソードはイギリス政府がらみの難しい話が多いので,ちょっと苦手なのであります.あとフラッドストリート警部も『青い紅玉』に続いて2度目の登場ですが,こちらは演者(吹き替え)がブライアン・ミラーさん(村越伊知郎さん)からデニス・リルさん(小林勝彦さん)に変更されています.このキャラクター,原作のグレグスン警部に代わってこのドラマでの出場回数が多いのですが,原作でのイメージが薄かったらしく,ジュブナイルを読んだ時の記憶が全くにありません.


Special - Long Version

バスカビル家の犬 THE HOUND OF THE BASKERVILLES
監督 : ブライアン・ミルズ
脚色 : トレバー・ボウエン
ゲスト:クリストファー・タボーリ(山本 圭)/ロナルド・ピカップ(筈見 純)/ジェームズ・フォックナー(小林 修)/ローズマリー・マクヘイル(藤 夏子)/二―ル・ダンカン(大和田 伸也)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』のラストに収録された『最後の事件』発表の8年後,第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録されたホームズ復帰作『空き家の怪事件』の2年前の1901年に発表された第3作目の長編.シリーズ4作の長編のうちでは最高傑作との評価を得ている作品なのですが,実は昔読んだジュブナイルの中のこの作品に関する記憶がほとんどなくて,今回 DVD を観ても全く思い出せませんでした.深層心理的には,動物を犯行に使う犯罪を描いた物語に対する嫌悪感・忌避感が記憶を失わせていたのかもしれません.珍しく物語の中盤にはホームズが姿を現さず,ワトスン博士が活躍するお話ですが,やはりストーリーそのものがわかりにくく,ラストの犯人の…に関しても,全く説得力のない結末で,あまり評価できたものではありませんでした.『最高傑作』じゃないでしょ? 個人的には,『緋色の研究』,『恐怖の谷』の方が好きだった作品なので,その映像化がされなかったのは残念でした.


5th Series - The Case-Book of Sherlock Holmes

レディー・フランシスの失踪 THR DISAPPEARANCE OF LADY FRANCES CARFAX
監督 : ジョン・マッデン
脚色 : トレバー・ボウエン
ゲスト: シェリル・キャンベル(駒塚 由衣)/マイケル・ジェイストン(久富 惟晴)/ジュリアン・カリー(滝田 祐介)/ジャック・クラフ(津嘉山 正種)
 原作は第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録.『バスカビル家の犬』に続いてワトスン博士が活躍するエピソードですが,ストーリーがすご〜くわかりにくいエピソードでした.原作とかなり設定等が異なっているみたいです.

ボスコム渓谷の惨劇 THE BOSCOMBE VALLEY MYSTERY
監督 : ジューン・ハウスン
脚色 : ジョン・ホークスワース
ゲスト: ピーター・ボーン(金井 大)/ジョナサン・バーロウ(大木 民夫)/ジョアンナ・ロス(島本 須美)/ジェームズ・ビュアホイ(関 俊彦)
 原作は第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録.こちらは打って変わってすご〜くわかりやすいお話で,ジュブナイル読んだ時の記憶もかなり残っていました.久しぶりの第1短編集のエピソードですが,原作シリーズも初期のものの方が印象に残る作品多かったみたいです.

ソア橋のなぞ THE PROBLEM OF THOR BRIDGE
監督 : マイケル・シンプスン
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: ダニエル・マッセイ(瑳川 哲朗)/シーリア・グレゴリー(此島 愛子)/キャサリン・ラッセル(二木 てるみ)
 原作は第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録.小学生の頃ジュブナイルでこのエピソードを読んで,ネタばれになりますが自殺を他殺に見せかけるトリックがすご〜く印象に残っていて,後に中学生の頃読んだヴァン・ダインさんの『グリーン家殺人事件』で似たようなトリックが用いられていたのでパクりだと思っていたのですが,実は両者とも過去に実際に起こった事件を元ネタにしていたらしです.他にも横溝正史さんが『本陣殺人事件』の中でこの作品について,金田一耕助に蘊蓄を語らせていたりもしています.

ショスコム荘 SHOSCOMBE OLD PLACE
監督 : パトリック・ラウ
脚色 : ゲーリー・ホプキンズ
ゲスト: ロビン・エリス(佐々木 功)/フランク・グライムズ(天田 俊明)
 原作は第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』のラストに収録されたシリーズ最終作.『銀星号事件』と並ぶお馬さんミステリーですが,こちらは実際にはお馬さんは事件に関与していません.またもネタばれで,殺されたと思われた人物は実は病死だったというエピソードで,前回に続いて実際には殺人は行われておりません.でも,今回の場合は死体損壊にはなるのでは?

高名の依頼人 THE ILLUSTRIOUS CLIENT
監督 : ティム・サリバン
脚色 : ロビン・チャップマン
ゲスト: アンソニー・バレンタイン(清水 鉱治)/デビッド・ラングトン(渥美 国泰)/アビゲイル・クルッテンデン(土井 美加)/キム・トムスン(高島 雅羅)
 原作は第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録.シリーズで故モリアーティ教授に次ぐ悪役と評価されているオーストリア貴族グルーナー男爵(アンソニー・バレンタインさん)の登場,暴漢に襲われて重傷を追うホームズ,名魅力的なキャラクターのヒロイン,キティ・ウィンター(キム・トムスンさん)の大活躍と,すご〜く派手で面白いエピソードなのですが,どういうわけか全く記憶に残っていません.多分,男爵が女たらしのいわゆる『青髭』で愛欲日記をつけている等の下世話な設定がジュブナイルには不向きなので,かなり変更されてつまらない話になっていたのではないかと思われます.『高名の依頼人』とは当時の国王エドワード7世のことであるとするのが定説だそうですが,この原作シリーズでは,ホームズとイギリス王室の親密な関係を窺わせる記述のあるエピソードが度々出てきます.

這う人 THE CREEPING MAN
監督 : ティム・サリバン
脚色 : ロビン・チャップマン
ゲスト: チャールズ・ケイ(原 康義)・サラ・ウッドワード(小山 茉美)
 原作は第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録.シリーズ最大のナンセンス作と評価されている迷作? 同じく下世話な内容,ムチャクチャな設定を含む SF 作とも言えるエピソードで,この TV ドラマ・ヴァージョンではかなり改変されているようですが,ジュブナイルではどういう表現がされていたのかがやっぱり気になるところであります.


Special - Long Version

サセックスの吸血鬼 THE LAST VAMPYRE
監督 : ティム・サリバン
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: キース・バロン(中村 正)/ロイ・マースデン(家弓 家正)/モーリス・デナム(納谷 悟朗)/エリザベス・スプリッグス(翠 準子)/フレディ・ジョーンズ(緒方 賢一)
 原作は第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録.ジュブナイルで読んだものはかなり記憶に残っていたはずの作品ですが,ここでは2時間スペシャルということで,原作には出てこない人物がメイン・ゲストとして描かれていたり,ラストが変更されていたり,かなり脚色されて作られているため,最初観たときは記憶違いかと思ってしまいました.作者のコナン・ドイルさんは『ドラキュラ』の作者ブラム・ストーカーさんと親交があったらしく,かなり影響を受けていたみたいです.ドラマの方ですが,『ウィステリア荘』でホームズと白熱した知恵比べを行っていたベインズ警部を好演していたフレディ・ジョーンズさんが怪しげなチョイ役で出演されています.また,メイン・キャストの吹き替えを行っていた中村正さん,家弓家正さん,納谷悟朗さんの大御所声優お3方が,それぞれの持ち味を発揮した名演技を披露されています.

犯人は二人 THE MASTER BLACKMAILER
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: ロバート・ハーディ(田中 明夫)/ノーマ・ウェスト(池田 昌子)/セリーナ・ゴードン(玉川 緋巳子)/ニコラス・グレース(田中 亮一)/グェン・フランコン・デービズ(高村 章子)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.ある意味モリアーティ教授より強力なタチの悪い『恐喝王』ミルバートンとの対決を描いた異色作.原作とは,ストーリー展開や設定等がかなり脚色されているので,ちょっとわかりにくい部分もありましたが,ホームズとワトソンが一転して不法行為を行った挙句,目前に起きた殺人を見逃してしまう等,シリーズのアンチテーゼとも言えるエピソードですが,見ごたえありました.おまけにホームズのキスシーンもあります.

未婚の貴族 THE ELIGIBLE BACHELOR
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : トレバー・ボウエン
ゲスト: サイモン・ウィリアムズ(松橋 登)/アンナ・カルダー・マーシャル(岡本 茉莉)/ジョアンナ・マッカラム(沢田 敏子)/メアリー・エリス(麻生 美代子)
 第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている『独身の貴族』( The Adventure of the Noble Bachelor』を下敷きに,かなりストーリーをアレンジして作られたエピソード.花嫁失踪事件と悪夢にうなされるホームズの姿が並行して描かれており,かなり陰鬱な感じのする作品ですが,この TV シリーズ自体,名探偵シャーロック・ホームズの負の部分の描写も多く,一般のイメージに比べてかなり暗い雰囲気を持っています.これは,私の原体験がジュブナイルのみなのでそう感じたわけですが,もしかしたらこの原作シリーズ自体,思っていたより陰鬱な作品集だったのかもしれません.とりあえず,この DVD 観終えたら,おとなの原作を一通り読んでみたいと思っています.


6th Series - The Memories of Sherlock Holmes

三破風館 THE THREE GABLES
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: クロ―ディヌ・オージェ(田島 令子)/メアリー・エリス(麻生 美代子)/キャロライン・プラキストン(藤波 京子)/ゲーリー・キャディ(堀 秀行)/ピーター・ウィンガード(小松 方正)
 原作は第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録.一風変わったタイトルが印象に残っているエピソードでした.ここでもホームズは殺人の決定的な証拠を入手できずに犯人を半ば見逃す状況に陥っているのですが,普段女性軽視の発言が多い割には女性に甘いような気がします.悪女ヒロインのクローディヌ・オージェさんは,『007 サンダーボール作戦』やジュリーと共演した『パリの哀愁』,アラン・ドロンさんの『フリック・ストーリー』などに出演されていた女優さんですが,『ボヘミアの醜聞』のゲイル・ハニカットさん同様,最近拝見したことがなかったので,今回久しぶりにお目にかかれて嬉しかったのです.田島令子さんの吹き替えもハマっていました.

瀕死の探偵 THE DYING DETECTIVE
監督 : セーラー・へリングス
脚色 : トレバー・ボウエン
ゲスト: ジョナサン・ハイド(有川 博)/スザンナ・パーカー(萩尾 みどり)/リチャード・ボネビル(池田 秀一)/ロイ・ハッド(近石 真介)
 原作は第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録.ホームズ短編の中でもかなり強く印象に残っている作品で,ホームズと犯人との直接対決がクライマックスを迎えるエピソードですが,それに至る経緯がかなり詳しく付け加えられていて,わかりやすいお話に脚色されています.ここでもアヘンに関する描写が出てきますが,当時のイギリスではかなり一般に普及していたことが窺われます.このシリーズ観ていると,イギリスってかなり暗い国だったみたいです.

赤い輪 THE RED CIRCLE
監督 : セーラー・へリングス
脚色 : ジェレミー・ポール
ゲスト: ベティ・マースデン(今井 和子)/ケネス・コナー(山野 史人)/ジョン・ハラム(大塚 周夫)
 原作は第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録.今回もホームズさんは,謎解きのみで,事件の解決そのものについてはほとんど貢献していないような印象を受けます.返り討ちにあってしまう犯人も,シリーズ中もっともヘタレな犯罪者です.

ボール箱 THE CARDBOARD BOX
監督 : セーラー・へリングス
脚色 : ウィリアム・ハンブル
ゲスト: キアラン・ハインズ(銀河 万丈)/ジョアンナ・デビッド(吉野 由樹子)/デボラ・フィンドレー(宗方 智子)
 原作はイギリスでは第4短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に,アメリカでは第2短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収録.これは不倫を扱った作品内容が風紀を乱すと懸念した作者が第2短編集から削除,後に第4短編集収録を許可したためらしいです.また,猟奇的な犯罪を扱ったものであるため,表現上の都合からか,ストーリーの設定・進行にかなりの脚色がなされています.本国イギリスではこのエピソードが放映最終回で,ラストでのホームズの独白が印象的でしたが,この後しばらくしてホームズ役のジェレミー・ブレットさんは亡くなっています.

金縁の鼻眼鏡 THE GOLDEN PINCE-NEZ
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : ゲーリー・ホプキンズ
ゲスト: フランク・フィンレイ(宮部 昭夫)/アンナ・カータレット(谷 育子)/パトリシア・ケリガン(久保田 民絵)/ナイジェル・ブラナー(樋浦 勉)
 原作は第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録.犯人の消失トリックが『ノーウッドの建築業者と似通っていますが,それで割と印象に残っているエピソードです,犯人に同情すべき余地があるのは確かですが,巻き添えを食って殺されてしまった被害者があまりに可哀そうで,これを全く気に留めていないホームズの態度は非情すぎるのでは? 素朴な違和感を感じます.

マザランの宝石 THE MAZARAN STONE
監督 : ピーター・ハモンド
脚色 : ゲーリー・ホプキンズ
ゲスト: フィリス・カルバート(水城 蘭子)/ジョン・フィンチ(中野 誠也)/ギャバン・オハリヒー(田中 正彦)
 日本 NHK における放映最終回.第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録されていた原作に,同じ短編集に収録されていた『三人ガリデブ』 (The Three Garridebs) を組み合わせたエピソードで,ホームズ役のジェレミー・ブレットさんが撮影直前に入院してしまったためほとんど登場せず,それぞれの事件を兄のマイクロフトとワトスンがそれぞれに捜査していく中,両方の事件が密接に関連していたというストーリーとなっていますが,原作の中でもちょっとシュールな2つのエピソードをうまく結びつけて,見ごたえのあるエピソードにアレンジした脚本の力を感じさせられました.またホームズが冒頭とラストにしか出てこないのは残念ですが,その分マイクロフト役のチャールズ・グレイさんとワトスン役のエドワード・ハードウィックさんの熱演が見ものでした.これで,この TV シリーズの41エピソードで,原作シリーズの長・短編併せて60エピソードのうち42エピソードが映像化されていることになりますが,ジェレミー・ブレットさんの逝去により残り18エピソードが製作されなかったのは残念でした.