日本テレビ
1971年7月4日 〜1971年9月26日 毎週日曜日 21:30〜22:26 放映 56分 全13回 プロデューサー:野末 和夫/新藤 晃(NTV) 殺陣:尾型 伸之介 音楽:牧野 由多可 選曲:山川 繁 製作協力:日活芸能 製作著作:ユニオン映画 |
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第一夜 怪談 塁ヶ淵 |
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原 作:三遊亭 圓朝 脚 本:宮川 一郎 監 督:中川 信夫 キャスト:横内 正/中谷 一郎/内藤 武敏/松本 克平/浜田 寅彦/横森 久/竹内 亨/山崎 直衛/執行 佐智子/安倍 百合子/千草 かのこ/谷口 芳昭/上地 宝/坂巻 祥子/田中 若/木村 俊恵 |
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このお話,結局は内藤武敏さん演ずる殺された按摩・宗悦の怨霊に翻弄される男女の恐怖を描いたホラー・ミステリーだと思うのですが,それにしては一番酷い目に遇うのが娘の豊志賀というのが何とも割り切れない後味の悪さを残します.主演の横内正さんとその兄役の中谷一郎さんはこの当時そろって『水戸黄門』レギュラー出演中でしたので,そのキャラクターのイメージが強すぎたのではないかしら?と余計な心配をしてしまいました.ヒロインの木村俊恵さんという女優さんは全く記憶にない方だったので気になって調べてみたところ,この3年後に同棲中だった中谷さんとの結婚式予定日に39歳の若さで亡くなったそうです.もう一人の執行佐智子さんは『太陽にほえろ!』に何度か出演されていましたが,変わった苗字なので記憶に残っていました. |
第二夜 番町皿屋敷 |
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脚 本:西沢 治 監 督:石井 輝男 キャスト:中尾 彬/藤田 弓子/藤岡 重慶/城所 英夫/石井 富子/市村 正治/仙波 和之/森 武彦/松本 敏男/津川 雅彦 |
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前年の東京12チャンネル放映のシリーズ『日本怪談劇場』の『皿屋敷』を観た時に.ずいぶん複雑な話だったんだな〜って感想を持ったのですが,今回観たこの『番町皿屋敷』の方がわりと単純なストーリーでわかりやすいです.ただ,こちらの作品には原作のクレジットがないので,ほぼオリジナルであると思われ,前者の方がオリジナルに近いものだったのかしら?という疑問が残りました.多分『牡丹灯籠』や『四谷怪談』等,他の古典的な怪談同様,いろんなヴァリエーションがあるのかと思われます. |
第三夜 謎の幽霊御殿 |
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脚 本:犬塚 稔 監 督:遠藤 三郎 キャスト:光川 環世/川口 恒/白木 マリ/有沢 正子/堀井 永子/天草 四郎/小園 蓉子/雪丘 恵介/河上 喜史朗/紀原 土耕/久遠 利三/柳瀬 志郎/京 春上/清水 美沙子/山内 淑子/明石 恵子/刈谷 イト/柴田 新三/玉井 謙介/浜口 竜哉/桂 小かん/平塚 仁郎/梅沢 百合子/中 庸子/中居 征子/風間 和子/下村 三千代/渡辺 文雄 語 り:北林 谷栄 奥女中の世界における出世競争にまつわる兄妹の陰謀を描いたお話で,本当に恐ろしいのはお化けよりも生身の人間の嫉妬の感情であったりするのです.女の陰湿さを強調しているストーリーとは裏腹に,珍しくハッピーエンドに終るエピソード.ヒロインの光川環世さんは台北出身の女優さんでしたが,いつの間にか姿を消してしまいました.奥女中のお局様?役で,この後『必殺シリーズ』中村りつ役で当たり役となった白木万里さんが旧芸名で出演されています. |
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第四夜 妖怪 血染めの櫛 |
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原 作:上田 秋成 『吉備津の窯』より 脚 本:八尋 不二 監 督:中川 信夫 キャスト:佐々木 愛/浜村 純/竜崎 一郎/蟹江 敬三/滝 奈保栄/浮田 左武郎/杣山久美/三船 好重/青木 富夫/山田 美喜子/真山 知子/戸田 千代子/酒井 修 語 り:永井 智雄 |
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不実な男と哀れな女の怨念を描いた,日本怪談定番のようなお話.やっぱりお化けは綺麗な女性に限ります.原作の上田秋成さん『怪談』は,大学で履修した一般教養科目の『日本文学』の教材として取り上げられていたので,読んだことがあるはずなのですが,このお話の内容はすっかり忘れていました.ヒロインの佐々木愛さんは1964年の東映映画『廓育ち』に出ていたのくらいしか記憶がないのですが,相手役の酒井修さんはこの頃いろいろなテレビドラマに出演していて活躍していたのが記憶に残ってます.いつの間にか見なくなってしまい,あとになって調べてみたら勝新太郎さんと一緒に麻薬不法所持で逮捕された後,芸能界から姿を消し既に故人となられているようです.他に浜村純さん,蟹江敬三さん,真山知子さんといった名バイプレーヤーの方々が脇をしっかり固めていて,お気に入りのエピソードです. |
第五夜 髑髏妻の怪 |
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原 作:宇野 信夫 『髑髏妻』より 脚 本:下飯坂 菊馬 監 督:佐伯 孚治 キャスト:露口 茂/弓 恵子/小林 昭二/上田 忠好/江角 英明/大塚 周夫/中井 啓輔/此島 愛子/園田 裕久/松島 真一/多田 幸雄/安田 洋子/佐々木 時義/大島 光明/三好 通/池田 忠夫/金田 龍之介 |
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露口茂さんが『太陽にほえろ!』山さんとは全く対照的なギャンブル依存症のクズ男を見事に演じています.ヒロイン2役の弓恵子さんは,映画『くノ一化粧』で露口さんと共演しており,息の合った演技を見せてくれています.『太陽!』ゲスト常連の上田忠好さん,中井啓輔さん,江角英明さんをはじめ,声優としても有名な小林昭二さん,大塚周夫さん,此島愛子さんといった名優の方々がしっかり脇を固めている,見ごたえのある一篇でした. |
第六夜 おんな怨霊舟 |
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原 作: 脚 本:大石 隆一 監 督:石井 輝男 キャスト:吉田 輝雄/原 良子/山本 豊三/新井 茂子/吉川 満子/長 弘/大島 竜太郎/橘田 良江/桂 荘三郎/原田 千枝子/中原 早苗 |
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『湯舟』という言葉はここから来ているのですね.現在のソ〇プ〇ン〇みたいなものかしら? お勉強になりました.男も女も悪い奴がいっぱい出てきて騙しあい殺し合いを繰り広げる救いのないお話ですが,そんな中でもやはり中原早苗さんの悪女ぶりは群を抜いて強烈で,お化けのカップルが霞んで観えます. |
第七夜 怪談 悲恋の舞扇 |
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脚 本:八尋 不二 監 督:中川 信夫 キャスト:片岡 孝夫/長谷川 稀世/行友 勝江/呉 恵美子/他 |
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どういうわけか欠番作品になっていて, DVD にも収録されていません. |
第八夜 女の冷たい手 |
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脚 本:佐治 乾 監 督:島津 昇一 キャスト:南原 宏治/久米 明/渥美 国泰/真屋 順子/福田 妙子/山田 早苗/古山 千恵/吉永 慶/糸賀 靖雄/小山 武宏/西原 泰江/中居 征子/田代 留美子/笹川 美智子/橘田 良江/桂 小かん/小森 秀雄/大島 光明/田沼 宏文/佐藤 了一/砂塚 秀夫 |
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主演の南原宏治さんが,前半と後半とでは髪型を変えてまるで別人となったような同一のキャラクターを好演しています.この方,この1971年当時すでに43・4歳だったはずなのですが,後半の坊主頭になってからはすごく若返った感じがして意外でした.悪役が多かったお気に入りの俳優さんだったのですが,この2年後『太陽にほえろ!』では2代目の七曲暑署長役で全5話に出演されていました.やはりこの当時悪役が多かった真屋順子さんも,妖怪じみた老婆役を熱演されています.渥美国泰さんはやはり『太陽にほえろ!』常連で様々なキャラクターを演じられていましたが,ここでも僧侶役が完全にハマっていて役作りの見事さを感じさせていただきました. |
第九夜 怪猫美女屋敷 |
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脚 本:西川 清之 監 督:石川 義寛 キャスト:岸 久美子/北川 めぐみ/和崎 俊也/高森 玄/青沼 三朗/宮内 順子/湊 俊一/高野 誠二郎/荒木 順子/田中 良子/小柴 隆/西原 泰江/横山 勝一/西田 勇三/西城 健二/石浜 朗/梅津 栄/高城 丈二 |
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怪談の中でも大好きな化け猫のお話.一応ハッピーエンドなのですが,主人の無念を晴らすためその娘に取り憑いた健気な猫の怨念が,人間側の主人公によって成仏させられてしまうラストはちょっと可哀そうで納得できませんでした.こうなるとはっきり言って人間はどうでもいいです.梅津栄さんが悪徳医者をいかにもそれらしく演じています. |
第十夜 怪談 夕霧楼 |
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脚 本:國弘 威雄 監 督:高井 牧人 キャスト:高橋 長英/小池 朝雄/三条 泰子/嘉手納 清美/中村 竜三郎/小杉 勇二/弘松 三郎/矢野 純子/鈴村 益代/森 みどり/重森 輝江/朝倉 宏二/玉村 駿太郎/光 でんすけ/荒井 岩衛/杉山 元/美川 陽一郎/久里 千春/緑 魔子 |
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個人的に一番好きな女優さん緑魔子さん主演.実は今回このお化け関連の DVD を買い集めたのは,ネットショップで緑魔子さんの名前で検索したところ,この『怪奇十三夜』 DVD-BOX がヒットしたのがきっかけだったのです.こういう女の怨念そのものみたいなお化け演じさせたら,この方の右に出る者はいないと思われるほどのはまり役ですが,エピソードの最初と最後にしかその姿が観られないのがちょっと残念でした.あと2名の女優さん,三条泰子さんは『太陽にほえる!』第20話『そして,愛は終った』でのジュリーの相手役が印象的でしたが,緑魔子さんが出演しているあがた森魚監督の『僕は天使ぢゃないよ』にも顔を見せてます.嘉手納清美さんは,『ウルトラセブン』第46話『ダン対セブンの決闘』でのサロメ星人役が印象的だった女優さんで,『悪魔くん』,『河童の三平』,『バンパイヤ』といった特撮番組への出演が多い方でした.ところで劇中で遊女の足抜けのことを『とんこ』と言っていますが,静岡県の某アルコール等薬物依存症専門病院では,患者の脱走のことを『とんこ』と言っていて,どうも同じ語源であるような気がします. |
第十一夜 怪談 釘を打つ女 |
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脚 本:犬塚 稔 監 督:山田 達雄 キャスト:長谷川 明男/佐々木 功/中村 是吉/大泉 滉/富田 仲次郎/笠置 シズ子/春江 ふかみ/三田 登喜子/荘司 洋子/松波 千恵/小松 美賀子/邦 創典/田川 恒男/島 康二/山田 禅二/渡部 展子/森井 睦/北原 千歳/石橋 暁子/二本柳 敏恵 |
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自ら計画した狂言自殺を利用され,お金と妻を取られた挙句,最終的には本当に殺されてしまうおバカさんな若旦那を佐々木功さんが好演しています.あと裏切者の長谷川明男さんんは印象薄いですが,その上を行く富田仲次郎さんの小悪党ぶりもなかなかのもんでした.ほとんど喜劇みたいなお話で全く怖くないのですが,昔の怪談って落語が原作だったものも多く,こんなのもたくさんあったみたいです. |
第十二夜 怪談 首斬り |
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原 作:宇野 信夫 『刀の中の顔』より 脚 本:國弘 威雄 監 督:久松 静児 キャスト:瑳川 哲朗/北林 早苗/小栗 一也/牧 紀子/徳大寺 伸/渋沢 詩子/鶴見 丈二/加原 武門/野村 隆/八代 康二/鴨田 喜由/河上 喜史朗/澄川 透/松内 志保/宮 尚子/伊豆見 英輔/桂 小かん/佐野 浅夫/工藤 堅太郎 |
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前年の『日本怪談劇場』の『怪談・首切り浅右ヱ門』と同じ首切り役人のお話で,原作・脚本共に違いますが主人公の名前が同じ『山田浅右衛門』なので?と思ったので調べてみたところ,『山田浅右衛門』というのは御試御用という刀剣の試し斬り役を勤めていた山田家当主代々の名乗りで,死刑執行人も兼ねていた,とのことでした.勉強になりました.今回のエピソードは前作以上に悲惨なラストを迎えますが,『首斬り役人』という職業そのものが怪談の格好のモチーフなので,この手の作品は他にも存在するものと思われます.主演の佐川哲朗さんの狂いっぷりも見事ですが,それ以上に小栗和也さん,佐野朝夫さんの名優お二人の助演が印象に残りました. |
第十三夜 変幻 玉蟲屋敷の怪 |
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脚 本:大石 隆一 監 督:遠藤 三郎 キャスト:金田 龍之介/大丸 二郎/沢 宏美/池田 史夫/小磯 まり/清水 元/沢田 清/牧 まさみ/榎木 兵衛/月貫 マルミ/山下 勝也/三船 好重/下村 美千代/梅沢 百合子/諏訪 祥子/嵯峨 善兵/武藤 英司 語 り:高橋 昌也 |
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シリーズ・ラストの一篇はこれまでになくシュールでアヴァンギャルドなエピソードでした.ストーリーそのものは把握しづらく,よくわからんと思われる向きもありかと思われますが,もともと『怪談』というのはわけのわからん話であるのが当たり前なので,全てにおいて辻褄の合うストーリーであれば,それは単なるミステリーになってしまうのです.このわけのわからんモノに対する恐怖こそが『怪談』の真髄であるといえると思います.そういった意味でシリーズのラストを飾るに相応しい傑作エピソードだったと思います. |