日本名作怪談劇場


東京12チャンネル
1979年6月20日 ~1979年9月12日
毎週水曜日 21:00~21:56 放映
全13回

企画:金子 和一郎
プロデューサー:神山 安平/佐々木 康之/大塚 貞夫
音楽:牧野 由多可
製作/東京12チャンネル/歌舞伎座テレビ室
DVD-BOX
VIBF-6595~6598


第一話 怪談 塁ヶ淵

原  作:三遊亭 圓朝 『真景塁ヶ淵』より
脚  本:安田 公義
監  督:倉田 準二
キャスト:林 与一/片桐 夕子/菅 貫太郎/吉田 義夫/木田 三千雄/香月 京子/植木 絵津子/山本 一郎/海老江 寛/小島 岩/加藤 正記/美鷹 健児/東 悦次/平井 靖
 1971年『怪奇十三夜』,1972年『怪談』に続いて登場した古典怪談の名作.前2作がほとんど原作に忠実に作られていたのに対し,今回はかなりアレンジが加えられた設定・ストーリーとなっていて,前2作で重要な地位を占めていた主人公の異母兄の件は省略されています.キャストは主人公の林与一さん,ヒロインの片桐夕子さん,亡霊となって現れる宗悦役の吉田義夫さん等の好演で,全3作中最も印象に残る作品となっています.

第二話 怪談 大奥㊙不開の間

原  案:宮川 一郎
脚  本:宮川 一郎
監  督:中川 信夫
キャスト:大山 克巳/岩井 友見/雪代 敬子/御影 伸介/池田 幸路/永井 英代/松村 康世/尾崎 弥枝/吉田 哲子/八雲 景子/夏川 友美子/加藤 純子/池田 昌子/中塚 智子/岩崎 美也子/藤代 朋美/中瀬 千津子/金久 陽子/溝畑 裕美子/真田 知恵子/浜田 啓子/松田 二美代/藤田 まこと(特別出演)
 1972年の『怪談』シリーズに続いて映像化された,宮川一郎さん原案・脚本によるオリジナル作で,こちらはオープニングとエンディングにおけ藤田まことさん演ずる官軍隊長の件を除いて,ほぼ前作と同じ設定・ストーリー展開となっています.キャスティングに関しては,前作で勝呂誉さんが演じていた将軍・綱吉を大山克巳さんが演じている他は,あまり知っている方は出ていなかったのですが,奥女中役の一人に声優として有名な池田昌子さんの名前を見つけて驚きました.

第三話 四谷怪談

原  案:下飯塚 菊馬/杉江 慧子
脚  本:下飯塚 菊馬/杉江 慧子
監  督:貞永 方久
キャスト:伊吹 吾郎/八木 孝子/汐路 章/黒須 薫/笠原 英揮/重久 剛一/藤川 準/日高 綾子/倉谷 礼子/伊波 一夫/丸尾 好広/福山 千夏/関 照子/松尾 勝人/木沢 雅博/横井 邦彦
津軽三味線演奏:山田 五十鈴
 『日本三大怪談』の一で,1970年の『日本怪談劇場』.1972年の『怪談』の両シリーズでも作品化されていましたが,今回はやはり前2作とは違って,かなり設定・ストーリーにアレンジが加えられており,前2作に出てきた僧・宅悦と伊藤屋喜兵衛の娘・お梅は登場しません.またヒロイン・お岩さんの哀れさ以上に,主人公・伊右衛門の傲慢さ,残虐さが強調されたストーリーとなっていて,伊吹吾郎さんが見事に最低男ぶりを発揮しています.ところで,『伊右衛門』ってお茶ありますけど,このキャラクターからとったネーミングじゃないですよね?

第四話 怪談 吸血鬼 紫検校

原  案:柴田 敏行
脚  本:柴田 敏行
監  督:柴田 敏行
キャスト:倉石 功/宮井 えりな/石田 信之/五味 龍太郎/中條 郷子/榊 淳/茜 ゆう子/亜川 ゆみ/加茂 雅幹/山内 八郎/菅野 義則/東 悦次/松本 勝人/美鷹 健児/曾我廼家 明蝶
 柴田敏行さん原案・脚本・監督の完全オリジナル作品.日本の吸血鬼といえばやはり岸田森さんのイメージが強いのであまり期待しないで観たのですが,ここでは『ザ・ガードマン』倉石功さんがこれまでのイメージとはがらりと替わったキャラクター・検校役を見事に演じ切っています.妖怪贔屓の私としましては,可愛そうな吸血鬼の夫婦?が滅ぼされながらも念願の復讐を果たしたと思われるラストは大いに納得できました.

第五話 怪談 佐賀の怪猫

原  作:三世 瀬川 如皐 『花嵯峨猫魔稿』
脚  本:鈴木 兵吾
監  督:西山 正輝
キャスト:緑 魔子/亀石 征一郎/永島 暎子/藤間 文彦/平井 昌一/岩崎 信忠/綾川 香/山口 朱美/鳴尾 よね子/堀北 幸夫/伊藤 一夫/扇田 喜久一/平井 清/加藤 正記/大坪 英二/長坂 保
 大好きな女優・緑魔子さんが大好きな妖怪・化け猫を演じる大好きな作品です.化け猫を扱った作品としては,『怪奇十三夜』の『怪美女屋敷』と『怪談』シリーズの『怨霊まだら猫』があって,どちらも各シリーズ中白眉と言える作品でしたが,今回のこの作品はそれ以上によく出来た作品だったと思います.はい,贔屓してます.殺された主人の恨みを晴らすため化け猫に乗り移られた,ネコ顔美女の代表格の緑魔子さんがネコになりきって大暴れするのですが,特にラスト永島暎子さん演ずる主人の妹に『もういいのよ,やめて』と懇願された際の『なんで?』という感じの表情はネコそのものでした.この時の魔子さんは,本当にねこになりきっているか,あるいは本当にネコが乗り移っていたかのどっちかだったと思えるような,素晴らしい名演技だったと思います.

第六話 怪談 利根の渡

原  作:岡本 綺堂
脚  本:竹内 勇太郎
監  督:田中 徳三
監  修:岸井 良衛
キャスト:船戸 順/渡辺 やよい/左右田 一平/海原 小浜/江角 英明/浜田 雄史/近江 輝子/沖 時男/大木 ひかり/大木 こだま/松尾 勝人/岩崎 美也子/諏訪 アイ/平井 靖/美鷹 健児/伊波 一夫/扇田 喜久一/加藤 正記/東 悦次
 このお話は何といっても主演の船戸順さんの怪演につきます.この方,『傷だらけの天使』セミレギュラー松下刑事役くらいしか記憶に残っていない俳優さんだったのですが,今回の復讐の年に燃える座頭役を観て強烈な印象を受けました.ヒロインの渡辺やよいさんは『プレイガール』シリーズ終盤にレギュラー出演していた女優さんで,久しぶりに拝見しましたがわりと早く殺されてしまう役で残念でした,何故かお笑い界から海原小浜さん,大木ひかり・こだまのお二人がわりと重要な役で出演されています.

第七話 怪談 玉菊灯籠

原  案:冬島 泰三
脚  本:冬島 泰三/杉江 慧子
監  督:倉田 準二
キャスト:結城 しのぶ/江木 俊夫/西岡 慶子/沢 かおり/西山 嘉孝/玉村 駿太郎/木島 みゆき/西田 良/島 米八/鈴木 金哉/宮本 毬子/美鷹 健児/沖 時男/伊波 一夫/松尾 勝人/平井 靖/横中 盛夫
 結城しのぶさん演ずるヒロインの哀れさもさることながら,かつてアイドル・グループの草分け的存在でこの前年の1978年に解散した『フォーリーブス』の江木俊夫さんが2役を熱演,斬られ役を元アイドルのイメージから脱却し,それは見事にみじめに演じているのが印象に残りました.

第八話 怪談 夜泣き沼

原  作:河竹 黙阿弥  『木幡怪異雨古沼』より
脚  本:杉江 慧子/下飯塚 菊馬
監  督:家喜 俊彦
キャスト:新藤 恵美/川地 民夫/綿引 勝彦/筑波 健/竹中 半兵衛/伊波 一夫/山岸 正子/水上 杢太郎/近藤 健二/岡本 将/前田 知恵/山野 武/小川 正志/森川 元
 1972年の『怪談』シリーズ『雨の小沼』と同じ原作のドラマ化ですが,脚本にかなりアレンジが加えられていて,綿引勝彦さん演ずる『タクロー』ちうキャラ名で同じお話であることに気づきました.前作で岡田茉莉子さんが演じていたヒロインが今回はかなりの悪女として描かれており,新藤恵美さんの熱演で強烈な印象を残します.また前作では脇役だった『タクロー』が今回はメイン・キャラクターとして活躍しており,こういったキャラを演じさせたら超一流の綿引さんのまさにはまり役となっています.斬られ役で亡霊となる川地民夫さんは前作の中村扇雀さん同様全く存在感が薄く気の毒でした.

第九話 怪談 牡丹灯籠

原  作:三遊亭 圓朝
脚  本:石井 君子/服部 佳
監  督:原田 雄一
キャスト:佳那 晃子/佐藤 仁哉/小島 三児/三島 ゆり子/白石 奈緒美/牧 冬吉/竜崎 一郎/深江 章喜/溝田 繁/東 悦次/扇田 喜久一/岡田 袖子/本田 清乃/豊島 昌宏/衣笠 禎樹
 『日本三大怪談』の一.1970年の『日本怪談劇場』,1972年の『怪談』シリーズでは主人公・新三郎を演ずる田村亮さんがトップ・クレジットでしたが,今回は亡霊・お露さんを演じる佳那晃子さんをメインに,原作に忠実に作られている感じでした.また,前2作田村亮さんが主演でありながらあまり目立たない存在であったのに対し,今回の佐藤仁哉さんは主演扱いでないにも関わらず強い存在感を示していました.さらに前々作では戸浦六宏さんが演じてエピソード後半ではほぼ主人公扱いだったため話の筋が解りにくくなっていた友造というキャラクターとその妻・おみねに関しても,今回は小島三児さんと三島ゆり子さんの好演もあって,非常にわかりやすい人物として描かれており,これまでの作品中,最もストーリーの展開を把握しやすく観ることができました.

第十話 怪談 死神

原  案:宮川 一郎
脚  本:宮川 一郎
監  督:西山 正輝
キャスト:中村 鴈治郎/森川 正太/岩井 けんじ/千 うらら/柳沢 紀子/高木 二郎/植頭 実/田村 好子/平井 靖/真田 麻理/諸木 淳郎/橋本 和博/西川 ヒデキ/本田 敦子/福田 逸人/美鷹 健児
 エピソード冒頭の語りから始まる演出,その後のストーリーの展開から,この作品こそ落語が原作に違いないと思ったのですが,シリーズのメイン脚本家・宮川一郎さんのオリジナルでした.それにしてもこのシリーズ,今回の死神役の中村鴈治郎さんといい,主人公・大工の八五郎の森川正太さんといい,それぞれの作品の登場人物のキャラクターに本当にぴったりの配役をしていて感心させられました.あと八五郎さんの『かかあ』おせん役で,『小さな恋のものがたり』で主人公の親友・トンコ役を演じていて気になったいた女優さんの笠井としみさんが,千うららと名前を変えて出演されていたのが嬉しかったのです.ところで,死神が人間の余命をろうそくで管理しているこのシチュエーション,昔『おそ松くん』で見た覚えがあるのですが,この設定もともとの出典は?

第十一話 怪談 鰍沢

原  作:三遊亭 圓朝 『鰍沢』より
脚  本:笠原 和夫
監  督:山崎 大助
キャスト:清水 章吾/赤座 美代子/早瀬 久美子/大島 宇三郎/井上 博一/岩城 力也/伊東 亮英/人見 ゆかり/梶山 雅一/丸尾 好広/松尾 勝人/伊波 一夫/扇田 喜久一/山本 龍二/山内 八郎/ピーター
 このエピソードも配役が素晴らしく,シリーズで唯一主演でラストにクレジットされているピーターさんの亡霊役と赤座美代子さんの悪女役がまさに適役でした.それに尽きます.そして,実は怪談シリーズ全般に言える『お約束』的な傾向なのですが,エピソード本来のヒーロー,ヒロインである清水省吾さんと早瀬久美子さんの存在感,どうしても薄くなってしまう感じです.

第十二話 怪談 奥州安達ケ原

原  案:西川 清之
脚  本:西川 清之
監  督:鹿島 章弘
キャスト:藤巻 潤/沢 竜二/加山 麗子/原 良子/梅津 栄/横山 あきお/大石 博嗣/槙 健吾/平井 靖/東 悦次/大迫 英喜/木沢 雅博/沢田 徹夫/美鷹 健児/松尾 勝人/扇田 喜久一/加藤 正記
 有名な『安達ケ原の鬼婆』の伝説をモチーフにした作品ですが,シリーズ・オリジナル脚本みたいです.このシリーズでは吸血鬼を演じた倉石功さんに続いて2人目の『ザ・ガードマン』藤巻潤さんですが,今回は残念ながら妖怪役ではありませんでした.こういうエピソード観ると,やはりお化けは哀れな存在で,本当に恐ろしいのは人間しかも男だとつくづく感じさせられます.

第十三話 高野聖

原  作:泉 鏡花
脚  本:村尾 昭
監  督:西山 正輝
キャスト:市川 左団次/田中 真理/山岡 徹也/近藤 準/山本 一郎/曽呂 一/三笠 敬子/笹 五朗/真田 実/椎野 誉史緒/豊川 里望/伊波 一夫/兼松 喜物治/田中 好子
ナレーター:筑波 健
 泉鏡花さん原作の怪奇ロマン.有名な小説ですが,まだ読んでません.いわゆる『魔女狩り』にあって自ら生命を絶ってしまった薄幸の美女の亡霊役を田中真理さんが可憐に好演しています.この方,同名のよしみで贔屓にしていた女優さんなのですが,にっかつロマンポルノで活躍後 TV に活躍の場を移し活躍していたにも関わらず,1980年代に入って姿を消してしまったのは残念でしたが,いまになって思えばブリジット・バルドーさんや沖雅也さんもそうだったように,老醜をさらさなくてすんでかえってよかったような気もします.