必殺からくり人 富嶽百景殺し旅


テレビ朝日 系
1978年 8月25日 ~1978年11月24日

プロデューサー:山内 久司・仲川 利久・桜井 洋三
作詞:阿久 悠/作曲:森田 公一/編曲:竜崎 孝路
撮影:石原 興
美術:川村 鬼世志
照明:林 利男・中島 利男
題字:糸見 渓南
ナレーター:吉田 日出子
制作協力:京都映画株式会社
制作:松竹株式会社 ・朝日放送

 

DVD-BOX KIBF-98042~5


CAST

 
唐十郎 … 沖 雅也

宇蔵 …

芦屋 雁之助

うさぎ …

高橋 洋子・真行寺 君枝

鈴平 … 江戸家 子猫
おえい … 吉田 日出子
永寿堂 世八 … 岡田 英次
 葛飾 北斎 … 小沢 栄太郎
お艶 … 山田 五十鈴


第1話 江戸日本橋

脚 本:早坂 暁
監 督:黒木 和雄
ゲスト:山岡 徹也/北村 英三/田畑 猛雄/志乃原 良子/大和 撫子/青木 和代/秋山 勝俊/高野 陽子/宮川 珠季/諸木 淳郎/美鷹 健児/東 悦次/丸尾 好広/加藤 正記/藤川 準/中野 アキ/郷 みゆき
津軽三味線協力:三橋美智一
 実は『必殺シリーズ』の中でリアルタイムで観ることができていたのは毎週土曜日に放映されていた時期,すなわち1972年の第1作『必殺仕掛人』から,1975年の第5作『必殺必中仕事屋稼業』の前半第13話まででした.その後いわゆる『腸捻転』により,ネット局が変更になり毎週金曜日の放映となってしまったため,当時土曜日しかテレビを観ることができなかったでらちゃんは,以後このシリーズから離れてしまい,以後の作品はほとんど観ておりません.
 でらちゃんは沖雅也さんのファンなので, VIDEO・LD・DVD で過去の作品を観ることができるようになってからは,まず放映時に観ていた第2作『必殺仕置人』と一部だけ観ていた第6作『必殺仕置屋稼業』を LD で入手しました.しかしながら,この『必殺からくり人 富嶽百景殺し旅』に関しては LD はリリースされてなくて,気がついたときには DVD も廃盤となり超高値がついていたのでほぼ入手をあきらめかけていたのですが,この度やっと入手することができました.
 これまでに全く観たことのなかった第14話からなるこのシリーズを観て,やはりこれまで観てきたシリーズ第1~6作とはかなり異なった印象を受けました.以前のシリーズはやはり殺しのシーンがいかにも暗殺という感じで地味な雰囲気だったのですが,この番組のクライマックスは立ち回り等かなり派手にやっております.これは多分『腸捻転』以降,『必殺』の番組枠を引き継いだ『影同心』~『隠し目付』シリーズの影響を逆に受けていたような気がしています.
 さて,この第1話ですが,キャラクター紹介のプロローグなので,メインストーリー自体はあまり印象に残る「ものではないものの,各レギュラーメンバーのプロフィールが魅力的に描かれています.沖雅也さんは,『仕置人』の錠,『仕置屋』の市松とも全く雰囲気の違う唐十郎というキャラクターをさらりと自然に演じておりますが,この俳優さんの凄かったところは,全く性格の違うキャラを演じながら,それぞれが素の沖雅也さんのような印象を観る側に与えるところだったと思います.

第2話 隠田の水車

脚 本:神波 史男
監 督:松野 宏軌
ゲスト:堺 佐千夫/外山 高士/遠藤 征慈/小林 芳宏/早 川絵美/伊藤 亮英/町田 米子/中塚 和代/高崎 トシ江/吉田 哲子/佐名手 ひさ子/倉谷 礼子/山田 早苗/島野 友子/堀北 幸夫/乃木 年雄/沖 ときお/瀬賀 敏之/伊波 一夫/山内 八郎/丸尾 好広/中野 アキ/東 悦次/暁 新太郎/新郷 隆/平井 靖
 殺しの依頼が葛飾北斎(小沢栄太郎さん)の浮世絵によって伝えられるというのが,よくわからんけどこのシリーズの特色となっていて,これはシリーズ前作『新・必殺からくり人』では安藤広重(緒形拳さん)だったりするのですが,今回の絵の中に赤く浮かび上がったのは『亀』.お下劣なストーリーが予想されますが,まさにそのまま.かなりスタッフが遊んで作っている感じです.それにしてもこのシリーズ,殺し方が派手だよね?

第3話 駿州片倉茶園ノ不二

脚 本:国弘 威雄
監 督:松野 宏軌
ゲスト:高峰 圭二/大竹 修造/佐藤 万理/吉本 真由美/西山 辰夫/美鷹 健児/柳川 昌和/笹 吾郎/北原 将光/岩崎 美也子/中谷 郁美/広田 和彦/松尾 勝人/加藤 正記/木沢 雅博/橋本 和博/丸尾 好広/渡辺 憲悟/加茂 雅幹/真田 実/堀 雄二/大木 実
 『富嶽百景殺し旅』というサブタイトル,「富士には殺しがよく似合う」という名キャッチコピー(?)もあって,神奈川・駿州・甲州,現在の神奈川県・静岡県・山梨県あたりを舞台にしたストーリーが多く,静岡県御殿場市在住のでらちゃんとしては,非常に感情移入がしやすいシリーズなのですが,とくに『駿河のお茶』をモチーフにしたこの話,すご~く親近感を感じました.ストーリー冒頭ではうさぎ(高橋洋子さん)をめぐって,まだ互いに打ち解けることのできない3人の男性キャラ,唐十郎(沖雅也さん),宇蔵(芦屋雁之助さん),鈴平(江戸屋子猫さん)の様子が描かれていますが,これが次回のストーリーの見事な伏線となっています.また,今回のストーリーでは,ゲストの堀雄二さんと大木実さんが印象に残る演技を見せてくれています.

第4話 神奈川沖浪裏

脚 本:国弘 威雄
監 督:工藤 栄一
ゲスト:三浦 真弓/谷口 完/大林 丈史/汐路 章/黒部 進/内田 昌広/島村 昌子/田渕 岩夫/松尾 勝人/暁 新太郎/美樹 博/広田 和彦/新郷 隆/加藤 正記/八木 良子/由良 章子/御木本 伸介
 永寿堂(岡田英次さん―第1話のみ出演)配下の殺し屋で出雲大夫(山田五十鈴さん)一座に連絡係兼助っ人として出向参加中の唐十郎(沖雅也さん)の過去が描かれているエピソードで,一座に助けられた唐十郎と他のメンバーとのわだかまりも解け,チームとしての『からくり人』が完成を見る,シリーズの中でも最も重要なエピソードであると言えますが,なんといっても唐十郎メインのストーリーなので,他のメンバーや黒部進さん他の悪役陣の影がうすいのは仕方のないところ.うさぎ役の高橋洋子さんは体調不良のためこの回を最後に降板,真行寺君枝さんに交代しますが,でらちゃんは『旅の重さ』以来のこの人のファンでもあったので,とても残念でした.

第5話 本所立川

脚 本:吉田 剛
監 督:石原 興
ゲスト:阿藤 海/沖 ときお/松尾 勝人/広田 和彦/東 悦次/丸尾 好広/福山 眞由美/細井 伸吾/北村 勝一郎/中江 一郎/矢野 義典/藤野 奏司/高木 峯子/青木 義朗/花沢 徳衛
 怪談『おいてけ堀』と河童伝説を結び付けている乱暴さもさながら, DVD 解説書でも指摘されている通り脚本にアラの目立つ作品ですが,特に「あれ?」と思ったのは,就職(?)して月代に変えた唐十郎の髪型が簡単に元の髪型に戻っているところ.あれはそう簡単に元に戻せないと思うのですが,昔『隠し目付参上』という『必殺』のパクリ番組の中で,やはり沖雅也さん扮する佐吉の髪型が立ち回りのときだけ変わるという不思議なシチュエーションがあったのを思い出しました.しかしながら,ストーリーそのものは面白く,ラストの唐十郎の子どもたちに対するお説教もなかなか説得力があったりして,結構印象に残る作品です.

第6話 下目黒

脚 本:保利吉紀
監 督:松野 宏軌
ゲスト:亀石 征一郎/村田 吉次郎/南條 豊/村田 みゆき/堀田 真三/宮川 珠季/野口 みどり/吉田 良金/三鷹 健司/山本 一郎/市川 男女之助/小柳 圭子/東 悦次/加茂 雅幹/岡本 崇/中谷 郁美/岩崎 美也子/伊波 一夫
 確かにからくり人の社会に対する無力さを表現していたり,鈴平(江戸屋子猫さん)の技が重要なポイントを占めていたり,ストーリー的によくできたエピソードだと思いますが,ラスト悪人たちの遺体と一緒に川を流されていったり,『富士には鷹は見合わねえ』とか言われたり,ある意味ではこの話で大きな位置を占めているはずの鷹の扱いが,あまりにひどくて人間より可哀そうでした.

第7話 駿州江尻

脚 本:山浦 弘靖
監 督:高坂 光幸
ゲスト:辻 萬長/加藤 さよ子/芦田 鉄雄/遠山 一次/伊波 一夫/暁 新太郎/扇田 喜久一/平井 靖/美鷹 健児/東 悦次/広田 和彦/丸尾 好広/淀神 勝利/三笠 敬子/定本 京子/三星 東美/竹本 英生/高木 洋子/今井 健二
 クールなキャラの唐十郎が珍しく怒りの感情を露わにしたり,クライマックスで10人近くの敵を次々と仕留める大立ち回りを演じたりと,沖雅也さんの魅力満載のファンにとっては嬉しい回です.この番組が放映された1987年には他に『大追跡』にも出演していており,沖さんにとって最もアクション・スターとして脂が乗りきっていた時期だったと思います.この後,主演作で代表作の『俺たちは天使だ!』を経て,『太陽にほえろ!』後期スコッチへと,繋がっていきますが.... 

第8話 甲州犬目峠

脚 本:松原 佳成
監 督:高坂 光幸
ゲスト:中村 孝雄/原田 英子/原口 剛/江幡 高志/勝部 演之/人見 きよし/野口 貴史/下元 年世/小柳 圭子/藤川 準/小林 加奈枝/石原 須磨男/開居 靖/扇田 喜久一/美鷹 健児/由良 章子/美川 玲子/東 悦次/丸尾 好広/広田 和彦/山田 早苗/中塚 智子
振付:藤間 勘眞次
 ストーリー的には金山の存在を隠すために仮病を使うという悪人側の手際がお上手なのと,キャスト的にも中村孝雄さん,江幡高志さん,勝部演之さんと,でらちゃんお気に入りの俳優さんが揃ってゲスト出演していることもあって,わりと好きな話です.

第9話 深川万年橋下

脚 本:武末 勝
監 督:松野 宏軌
ゲスト:岡崎 二郎/井原 千寿子/横森 久/成瀬 昌彦/木村 元/湯沢 勉/田中 綾/伴勇 太郎/堀北 幸夫/伊波 一夫/宮川 珠季/美鷹 健児/広田 和彦/加藤 正記/馬場 勝義/橋本 和博/新郷 隆/東 悦次/扇田 喜久一/丸尾 好広/松尾 勝人/平井 靖/藤川 勝也/井野辺 亮介/松本 正樹/松波 一仁
 お家再興の資金集めのために人質の代役を用立てる『人質賄い』,これって現在隆盛を極めている人材派遣業ですよね? 今回も途中で唐十郎の髪型が変わりますが,あれってどう考えてみても修復が不可能だと思えるので,普段は『傷だらけの天使』の辰己さん同様にカツラを着用しているのか,などとヘンな突込みを入れてみたくなるのです.

第10話 隅田川関谷の里

脚 本:松原 佳成
監 督:松野 宏軌
ゲスト:住吉 道博/草薙 幸二郎/宮部 昭夫/原田 清人/五味 龍太郎/大木 正司/唐沢 民賢/三島 猛/小沢 優佳子/玉生 司朗/美樹 博/伊波 一夫/平井 靖/中谷 郁美/岩崎 美也子
振付:藤間 勘眞次
 将軍家の鷹の次は馬,動物虐待はやめましょう.住吉道博って住吉正博さんの別名だったのね? 知りませんでした.あと今回気になったのは,鈴平役の江戸家子猫さんの馬の鳴き真似,お世辞にもあまり上手じゃないです.

第11回 甲州三坂の水面

脚 本:保利 吉紀
監 督:石原 興
ゲスト: 高杉 早苗/深江 章喜/佐野 アツ子/清川 新吾/山本 清/三遊亭 円之助/永野 達雄/徳田 興人/筑波 健/千代田 進一/石原 須磨男
 『逆さ富士』と人べらしの手段としての『姥捨伝説』を結び付けた強引さもさることながら,多分この話の庄屋や代官が最も酷い悪人だと思われるすご~くいや~な話で,からくり人一同の怒りも当然のことながら最大限に強く表現されていて,特にうさぎ役の真行寺君枝さん演技過剰気味だし,お艶役の山田五十鈴さんの台詞「殺してやる」は強烈すぎるのでは?と感じてしまいました. 69歳の老女役の高杉早苗さん,すごく若く感じられたので調べてみたら,この当時60歳でした.

第12話 東海道金谷

脚 本:荒馬 間
監 督:原田 雄一
ゲスト:今出川 西紀/松山 照夫/梅津 栄/伊沢 一郎/高野 高二/田中 由香/伊波 一夫/丸尾 好弘/美鷹 健児/布目 眞爾/広田 和彦/真木 勝宏/松尾 勝人/原田 喜久一/東 悦次/加茂 雅幹/山田 裕子/岩崎 美也子/中谷 郁美/田口 計
振付:藤間 勘眞次
 シリーズの中でも珍しい宇蔵メインのエピソード.それにしても悪い人たちってなんでもお金儲けの手段にしてしまうのね? 一方で川止めして一方で闇渡しって阿漕すぎます.『おめえの商売闇渡し,俺のは闇殺し』って珍しくキメの台詞を吐く唐十郎,滑ってます.最後にこのエピソードに一番関りが薄かったにも関わらず,悲劇の象徴『極楽桜』を切りたがる鈴平,よくわかりません.常連の梅津栄さんと田口計さん,このシリーズにおける善人と悪人のステレオタイプみたいな存在.

第13話 尾州不二見原

脚 本:武末 勝
監 督:原田 雄一
ゲスト:中島 葵/穂高 稔/綾川 香/南部 彰三/日高 久/諸木 淳郎/渡辺 満男/石津 貞義/遠山 一次/筑波 健/平井 靖/乃木 年雄/沖 ときお/山本 亘
 このシリーズ,日本橋(東京都)に始まって,隠田(東京都),駿州片倉(静岡県),神奈川沖(神奈川県),本所立川(東京都),下目黒(東京都),駿州江尻(静岡県),甲州犬目峠(山梨県),深川(東京都),隅田川関谷(東京都),甲州三坂(山梨県),東海道金谷(静岡県)と舞台が移り変わっていて,一体どういうルートで一座が旅をしているのか謎だったのですが,いよいよ尾州(愛知県)ということで,ラストが近いことを感じさせてくれるエピソードです.ゲストの中島葵さん扮するおりんメインの話なので,からくり人たちの影薄いですが,やはり唐十郎の殺しは余分なセリフなしの方がいいです.

第14話 凱風快晴

脚 本:安倍 徹郎
監 督:松野 宏軌
ゲスト: 清水 綋治/早川 雄三/波田 久夫/西田 亮/西川 ヒノデ/堀北 幸夫/藤川 準/千代田 進一/加茂 雅幹/伊波 一夫/末永 厚子/滝本 弓子/暁 新太郎/美樹 博/美鷹 健児/松尾 勝人/平井 靖
 今回の標的はなんと葛飾北斎(小沢栄太郎さん)というのは実は狂言で,死んだことにして江戸を離れていた北斎が江戸に舞い戻ってきたばかりに,今度は本当に殺されて最終回となります.東洲斎写楽の正体が実は葛飾北斎だったという有名な説や,北斎の台詞に「あほくさい」,「しゃらくせえ」というダジャレを取り入れたりするなど,脚本に遊びが見られますが面白いエピソードでした.ただ,唐十郎と互角あるいはそれ以上の腕を持つと思われる清水綋治さん扮する用心棒・赤星銀平というキャラがラスボスかと思いきや,あっさり殺されてしまうのは肩透かしをくらわされたような気分でちょっと残念でした.全14話のこのシリーズを観終わっての感想ですが,やはりなんといっても沖雅也さんの魅力につきます.唐十郎というキャラは,これまで沖さんが演じてきた棺桶の錠(必殺仕置人)や市松(必殺仕置屋稼業)といったキャラに較べると若干おとなしめの常識人といった風情ですが,殺陣に関しては以前に較べて派手で見どころが多かったと思います.