必殺必中仕事屋稼業


[第1〜13話
TBS 系 1975年 1月 4日 〜1975年 3月29日

[第14〜26話]
NET 系1975年 4月 4日 〜1975年 6月27日

制作:山内 久司・中川 利久・桜井 洋三
音楽:平尾 昌晃
撮影:石原 興・中村 富哉・藤原 三郎
美術:河村 鬼世志
照明:中島 利男・染川 義広
題字:糸見 渓南
ナレーター:藤田 まこと
制作協力:松竹京都映画株式会社
制作:松竹株式会社




DVD KIBF 98008〜11
DVD KIBF 98012〜14


CAST

半兵衛 …

緒形 拳

政吉 …

林 隆三

お春 …

中尾 ミエ

利助 …

岡本 信人

源五郎 …

大塚 吾郎

おまき …

芹 明香

せい …

草笛 光子



第1話 出たとこ勝負

監 督:三隅 研次
脚 本:野上 龍雄/村尾 昭/下飯坂 菊馬
ゲスト :石橋 蓮司/水原 麻記/伊吹 新吾/唐沢 民賢

 キャラクター・状況設定紹介の第1回ながら,博打で負けてばかりいる政吉.そば屋だけでなく女房のお春さんまで借金のカタにしてしまう半兵衛,このへんのキャラ設定はまだ確定していない感じ? 石橋蓮司さんがかっこいい,やっぱり悪役好きです.半兵衛さんのセリフ,「女将さんの貫禄にはキ○タ○が縮みあがっちまいました…」はいまではやっぱり放送はできないのかしらね?


第2話 一発勝負

監 督:三隅 研次
脚 本:村尾 昭
ゲスト :菅 貫太郎/住吉 正博/ジュディ・オング/五味 龍太郎

 シリーズ第3作『助け人走る』でシリーズ初の『殉職』をした住吉正博さんが,また殺される役で登場.このシリーズ全体を通じての『母と子』というテーマのドラマの中で,おせい,政吉それぞれのキャラクターがいきいきと描かれている感じがします.政吉が半兵衛に赤ちゃんを放り投げて渡すシーンは現在だとやはり問題視されそう….


第3話 いかさま大勝負

監 督:工藤 栄一
脚 本:野上 龍雄
ゲスト :穂積 隆信/桃井 かおり/和田 浩治/山口 朱美

 今から見ると,何となくゲスト陣が豪華な感じがしてしまう回.特に桃井かおりさんの好演がやるせないラストを本当にやるせなくしていて素晴しいです.この回では,半兵衛が『坊主そば』の店を得た経緯,そして半兵衛とお春の出合いが明らかにされますが,のちのストーリー展開,特に最終回近くの半兵衛とお春を暗示させるシナリオが書かれているような気がします.


第4話 逆転勝負

監 督:工藤 栄一
脚 本:村尾 昭
ゲスト :今井 健二/菊 容子/高木 均/川村 真樹

 今井健二さんと高木均さんの悪役対決と,それを彩る菊容子さん(同年他界)と川村真樹さんの2人の女性と,第1話に続いて登場するおせいの名台詞「あなたが地獄へ落ちる時は,あたしも一緒です」が印象的な回でした.この回から,実は Della ちゃんがとっても気にいっている大塚吾郎さんのクレジットが『目明かし』から『源五郎』へ,なめくじ扱いされるお春さんとの初カラミが見られます.


第5話 忍んで勝負

監 督:松本 明
脚 本:国弘 威雄
ゲスト :小林 勝彦/松平 純子/多々良 純/原田 あけみ

 牢内博打を仕切る牢名主・もぐらの留三が今回のターゲット.というわけで岡っ引き・源五郎さんの出番が多く,前回お春さんになめくじ扱いされていた源五郎さんが,今回は一転して『親分さん』と頼りにされていたり,「あたしこういうの殺すの大好き・」などというセリフもあったりして,源五郎ファンの Della ちゃんお気に入りの回です.あと,やはりもぐらの留三役の多々良純さんの貫禄は流石でした.


第6話 ぶっつけ勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:野上 龍雄
ゲスト :高峰 圭二/珠 めぐみ/天津 敏/梅津 栄

 鳥追い女・おしんと駆け落ちした越後屋の馬鹿息子・惣太郎を連れ戻すというおせいからの依頼を受け,慰安を兼ねて草津へ旅立つ半兵衛・政吉.今回の仕事は殺しではなかったはずだが,この手の話ではお約束の田舎やくざがからんできて結局は女郎屋に籠城するはめになる二人.ストーリー自体は凡庸ですが,惣太郎役の高峰圭二さん,おしん役の珠めぐみさん,悪役の梅津栄さん・天津敏さんのキャスティングが絶妙でした.


第7話 人質勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:国弘 威雄
ゲスト :神田 隆/織本 順吉/二本柳 俊衣/入江 慎也

 ギャンブル依存の怖さを十分に感じさせてくれる前半の展開,でらちゃんはどういうわけかギャンブルには全く興味がないのてその心情はよくわからんのですが,他のアディクションも周りから見ればこんなものなんでしょうね? 今回,シリーズを通しての大きなテーマでもある,おせいさんの過去がまた少し明らかにされます.また,らしゃめんのおまき役の芹明香さん初登場,アンニュイな魅力がいいです.


第8話 寝取られ勝負

監 督:三隅 研次
脚 本:下飯坂 菊馬
ゲスト :林 ゆたか/小野 恵子/山田 吾一/島村 昌子

 ろくでなしの亭主・忠太郎に離縁状を書かせるというのが今回の仕事.酒や女を使って何とか離縁状を書かせようとする半兵衛・政吉.実はこの話には裏があって…というおきまりのストーリー展開ですが今回もキャスティングが素晴しく,特に馬鹿息子役の林ゆたかさんの演技は絶妙だと思います.殺しのシーンも美しく,半兵衛さんの「おまえは罪深い女だ」の台詞も印象的でした.


第9話 からくり勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:松原 佳成
ゲスト :田辺 靖雄/高城 容子/山城 新伍/谷口 完

 『寒さ』ゆえに殺しに失敗してしまった半兵衛に,2度目の殺しの前に手袋を貸す政吉.仕事人同士の友情を息の合った緒形さんと林さんが見事に演じています.どちらかというとストーリーそのものよりも,キャラクター描写が印象的な回でした.この作品,各キャラクターの設定と描写が丁寧に行われている点が,『必殺シリーズ』における最高傑作であるという評価が与えられている理由のひとつではないかと思われます.


第10話 売られて勝負

監 督:三隅 研次
脚 本:播磨 幸治
ゲスト :山村 弘三/早川 保/真木 洋子/近江 輝子

 第8話と同様,三隅研次監督の描く本当に救われない話.この2作における残酷なまでの『悪』の描写はこの監督ならではのものだと思います.前作同様,半兵衛さんの怒りを緒形さんが見事に演じていますが,今回では『仕事』ではなく単なる私的な感情から殺しを行うという特殊なストーリー展開になっており,三隅監督の演出も冴え渡っているように感じれられました.


第11話 表を裏で勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:石川 孝人
ゲスト :浜田 寅彦/草薙 幸二郎/北川 美佳/多川 美智子

 飛脚が襲われる事件が相次ぎ,窮地に立たされる嶋屋.表稼業の問題に裏の仕事屋を巻き込むべきではないと主張するおせいと,嶋屋のためおせいに内密で政吉を雇う利助.実はこの事件の裏には大掛かりなからくりが…と,ストーリー自体はありふれているのですが,今回は殺す相手が多いため,それぞれの殺しのシーンに趣向が凝らされているのが特色.必殺シリーズ悪役の常連・浜田寅彦さんの存在感はやはり大きいです.


第12話 いろはで勝負

監 督:松本 明
脚 本:素 一路
ゲスト :小笠原 良知/東野 孝彦/長谷川 明男/泉 晶子/森崎 由紀

 冒頭のシーンから依頼人の正体を視聴者に伏せていたり,ストーリー自体も3人の容疑者からの犯人捜しという,シリーズ中ミステリー色が最も濃いお話.しかしながら,それ以上に面白いのが,いろは通りに潜入した半兵衛・政吉の仕事ぶり.意外なストーリー展開といい,おかしなシチュエーションといい,シリーズ中異色の作品であると思いますが.それでいて傑作.ヘンな魅力を持った回でした.


第13話 度胸で勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:猪又 憲吾
ゲスト :美川 陽一郎/藤岡 重慶/岡田 英次/堀内 一市

 TBS と朝日放送が1975年4月から両者の提携ネットワークを解消した,いわゆる『腸捻転解消』のため,このシリーズはこの回まで TBS 系で土曜日22時より,次回の第14話からは NET 系で金曜日22時間よりと放映時間が変更されました.しかも,この第13・14話は別個の話でありながら,シリーズ最強の悪役・岡田英次氏扮する板倉屋藤兵衛にまつわるストーリーという意味では前・後編という,少々複雑な状況な構成になってしまっています.この第13話で面白かったのは,何と言ってももう一人の悪役・藤岡重慶氏扮する脇坂兵部の殺しに使われた半兵衛・政吉のトリックだったと思います.


第14話 招かれて勝負

監 督:工藤 栄一
脚 本:猪又 憲吾
ゲスト :亀石 征一郎/新藤 恵美/岡田 英次/頭師 孝雄/沢村 宗之助

 『腸捻転解消』のため,この回から放映局の系列が変ったため,ドラマの前半の部分がキャラクター設定等の再紹介に費やされているような感を受けますが,ストーリーそのものは前回の第13話の解決編といった感じでした.シリーズを通じて仕事屋最大の難敵と思われた岡田英次氏扮する板倉屋の殺しが,あまりにあっさりと何の障害もなく行われてしまったのには,何となく肩透かしを喰らったような感じがしてしまいました.


第15話 大当りで勝負

監 督:大熊 邦也
脚 本:大工原 正泰
ゲスト :山本 亘/榊原 るみ/戸浦 六宏/大橋 壮多

 今回登場する博打は何と『流鏑馬』,この場合もやっぱり『馬券』って言うのね? 半兵衛・政吉のみならずおせいやお春までが騒ぎ出す中,ひとり醒めた目で見ている利助.夢を追い続ける男と,現実を見つめる女.しかしながら,物語は後半に入りかなり悲惨な様相を呈してきます.「今回は仕事じゃないので金はいりません」,「勝っても嬉しくないときってあるんだな」,半兵衛の人間性がよく描かれていた回でした.


第16話 仕上げて勝負

監 督:蔵原 唯繕
脚 本:阿部 徹郎
ゲスト :菅 貫太郎/内田 朝雄/瑳峨 三智子/剣持 伴紀/山岸 映子

 今回は何と言ってもゲスト・瑳峨三智子さんの鬼気迫る怪演に尽きます.この人も早く亡くなったのね.


第17話 悟りて勝負

監 督:大熊 邦也
脚 本:横光 晃
ゲスト :渥美 国泰/関根 世津子/池部 良/酒井 靖乃/志賀 勝

 半兵衛さんというキャラクターを見事に掘り下げ,第10話,第15話に続いて『知らぬ顔の半兵衛』ならぬ『怒りの半兵衛』が見事に描かれた作品.さらに,熱く燃える中年男の半兵衛さんを,若者らしい覚めた眼で見つめる政吉,この頃のドラマって,キャラクター・人物設定が番組の進行と共に徹底的に行われていった感がして,物語に幅を持たせていたような気がしてます.凶暴なならず者役の志賀勝さんは流石の好演です.


第18話 はめ手で勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:松原 佳成
ゲス ト:左 時枝/睦 五郎/城所 英夫/轟 謙二/安達 大作/五味 龍太郎

 自らの出世のために女子供を犠牲にする救われない男を城所英夫氏が好演.何とも後味の悪い話ですが,今も昔もサラリーマン社会に生きる男って,どうしてこう情けないんだろうね? 今回は仕事人の影薄いです.


第19話 生かして勝負

監 督:蔵原 唯繕
脚 本:横光 晃
ゲスト :井上 昭文/池 玲子/浜村 純/水谷 邦久

 今回は女元締おせいさんの人間性を掘り下げて描いた作品.「私を裏切った」,「許せない」かなり激しい性格ですが,どういうわけか視聴者の共感を呼ぶのです.ある意味で本当に哀しい女を池玲子さんが見事に演じ切っており,ラストの殺しのシーンはシリーズ1・2を争う美しさだったと思います.あとやはり本当に哀れな男を見事に演じる浜村純氏は流石でした.


第20話 負けて勝負

監 督:松本 明
脚 本:田上 雄
ゲスト:二宮 さよ子/小坂 一也/津川 雅彦/入江 慎也/大迫 英喜

 今回は前回と対照的におせいさんの意外な一面が描かれていて楽しいです.「悔しいっ!」.博打の借りは博打で,ということで今回は殺しのシーンはありませんが,半兵衛・政吉の『スティング』は見事でした.とくにラストの勝負における政吉と伊三郎のやり取りは爆笑モノ.憎めない悪役を演じた津川雅彦さんも見事でしたが,林隆三さんのとぼけた演技が絶妙でした.


第21話 飛入りで勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:中村 勝行
ゲスト :香山 秀美/御木本 伸介/寺田 農/ゼンジー北京

 二転三転するシナリオに騙されてしまうのが痛快な回です.気になって見てみたら,この中村勝行さんて方が脚本書いてるの,今回だけなのよね…残念.渡りの仕事人・銀次に扮する寺田農さんがかっこいいですが,この人,シリーズ3作目の『助け人走る』でもおんなじようなことやっていなかったかしら? この方,東海大学の教授やっていたのよね.


第22話 脅して勝負

監 督:工藤 栄一
脚 本:横光 晃
ゲスト :稲葉 義男/上野山 功一/入川 保則/中井 啓輔/中村 孝雄/原田 あけみ/成瀬 正孝

 久しぶりの正統編といった感じ.悪役陣のゲストがそれぞれの持ち味を出していて見事ですが,その中でもやはり上野山功一さん,この方『キイハンター』なんかの常連の悪役さんでしたが,今回は『狼同心』と恐れられながら巨悪に利用されてあっさり殺されてしまう気の毒な男を見事に演じていて,存在感示しています.この前サイト見たら,『福島のコーモンちゃま』とかって腹話術やっているらしいです(笑).


第23話 取込まれて勝負

監 督:大熊 邦也
脚 本:大工原 正泰
ゲスト :河原崎 次郎/赤座 美代子/小松 方正/富田 浩太郎

 半兵衛・お春に子どもができた? この騒ぎをめぐっての半兵衛,政吉,おせいらそれぞれの人物描写が丁寧になされており,また,半兵衛とお春,半兵衛と政吉の精神的な繋がりが強調されているのがこの話の重要なポイントだと思います.半兵衛と政吉の殺しのシーンが第1話の再現となっているのもよくできています,そして,やはり赤座美代子さんと小松方正さん,このシリーズをもう一方で支えていたのは悪役の魅力です.


第24話 知られて勝負

監 督:松野 宏軌
脚 本:石川 孝人
ゲスト :川合 伸旺/宮部 昭夫/浜畑 賢吉/市毛 良枝

 隠し目付が登場するちょっとわけのわからない話.ストーリーの展開に頭の悪いでらちゃんはちょっとついていけなくなりました.後にシリーズで『からくり人』を演じる浜畑賢吉さんが冷徹な『隠し目付』を演じてますが,単なるカメオ出演ではなく,悪役の主役を堂々と演じています.あと,驚いたのは宮部昭夫さんと川合伸旺さん,スティーヴ・マックイーンとポール・ニューマンの声優さんの組み合わせ,『タワーリング・インフェルノ』だって思っていたら,このお2人2006年の6月17日と24日に相次いで亡くなっております.


第25話 乱れて勝負

監 督:松本 明
脚 本:素 一路
ゲスト :梅津 栄/浜 伸二/紀 比呂子/柳原 久仁夫

 この第25話と最終話,監督も脚本も違うし,それぞれ独立した作品として見ても十分によくできていると思うのですが,最終回の前編・後編として見た場合,さらに優れた作品として評価されるべき作品で,事実,この2話でこの番組は,『シリーズ最高傑作』の名声を獲得したものと思われます.この『前編』に関しては,政吉とおせい,半兵衛とお春,2組の人間関係に焦点があてられ,それぞれのキャラクター描写が徹底して行われ,ストーリーは佳境に入って行くのでした.


第26話 どたんば勝負

監 督:工藤 栄一
脚 本:村尾 昭
ゲスト :掘 勝之祐/島 米八/大木 実/黛 浩太郎

 7人のレギュラーのうち3人が死んでしまうというのは,シリーズ新記録(?)なんですが,それとは裏腹にテーマは『生きる』.母親であるおせいのために死を選んだ政吉と,後を追って自ら命を断とうとするおせい.それを許さず『ぶざまに生きる』ことこそ仕事屋の宿命と,『生きる』ことにこだわり続ける半兵衛と,「死なないで」とすがりつくお春.本当にこのシリーズ,『人間』がよく描かれていたと思います.ところでこの最終回,シリーズの重要なモチーフだった『博打』のシーンが初めて出てこない回でもありました.