必殺仕置人


TBS 系 1973年 4月21日 〜1973年10月13日

制作:山内 久司・仲川 利久・桜井 洋三
音楽:平尾 昌晃
撮影:石原 興・中村 富哉・小辻 昭三
美術:倉橋 利昭
照明:中島 利男・染川 義広
題字:糸見 渓南
ナレーター:芥川 隆行
制作協力:京都映画株式会社
制作:朝日放送・松竹株式会社
 

LD-BOX BELL 584


CAST

 
念仏の鉄 … 山崎 努

棺桶の錠 …

沖 雅也

鉄砲玉のおきん …

野川 由美子

おひろめの半次 … 津坂 匡章
    
お島 … 三島 ゆり子
同心 田口 … 生井 健夫
 同心 … 森 章二
    

天神の小六 …

高松 英郎
中村 りつ … 白木 万理

中村 せん …

菅井 きん

 中村 主水 … 藤田 まこと


第1話 いのちを売ってさらし首

監 督:貞永 方久
脚 本:野上 龍雄
ゲスト :大滝 秀治/今出川 西紀/菅 貫太郎/近藤 宏/黛 康太郎/新屋 隆弘/成田 幸雄

 「のさばる悪をなんとする 闇に裁いて仕置する」仕置人グループ結成を描いた作品ですが,沖雅也さん扮する棺桶の錠が持ち込んだ仕事という設定で,誰よりもそのキャラクターが魅力的に描かれている作品です.この作品が初の時代劇だった沖さんですが,この時期他のドラマでも,どちらかというと感情に左右されやすい,若き熱血漢みたいな役柄が多かったような気がします.


第2話 牢屋でのこす血のねがい

監 督:貞永 方久
脚 本:國弘 威雄/貞永 方久
ゲスト :原 良子/松下 達夫/宮口 二朗/唐沢 民賢/入江 慎也/出水 憲司/北原 将光/日高 久/滝 譲二/暁 新太郎/松本 荷葉/丸尾 好広

 今回の主役は山崎努さん扮する念仏の鉄.大豆の買い占めによる雑穀商の利権独占をめぐる話ですが,実はこれ観ていて話の内容よりも湯豆腐が食べたくなったのです.それはともかく,この時代の俳優さん,特に悪役を演じている方々には,本当に上手い人多かったと思います.またこの作品,のちのシリーズと違って悪人を『仕置』,簡単に殺して楽にさせてあげないというところが,残酷でなかなかよろしいのです,


第3話 はみだし者に情なし

監 督:松本 明
脚 本:安倍 徹郎
ゲスト :常田 富士男/茶川 一郎/山本 耕一/谷口 完/神戸 瓢介/時 美沙/唐沢 民賢/溝口 繁/松田 明/嵐 完十郎/及木 年雄/益尾 久子/高畑 喜三/笹 吾郎/入川 保則

 今回45年ぶりくらいにこのシリーズを観て感じたことですが,この時代のTV番組って,現在よりもかなり過激で,残酷な描写が多かったような気がします.また,出てくる悪人がとにかく下品で凶暴で変態なので,観ている側としては主人公側に感情移入しやすいです.でも,こんなのいま作ったら放映は難しいんじゃないかしらね.ラスト,失明した乞食に黙って小判を投げ与える錠がカッコいいです.


第4話 人間のクズやお払い

監 督:三隅 研次
脚 本:野上 龍雄
ゲスト :伊藤 栄子/杉山 昌三九/江幡 高志/五味 龍太郎/玉生 司朗/山本 一郎/内田 勝正/三田 一枝/藤川 準/森内 一夫/黛 康太郎/西崎 健/吉田 聖一/林 隆三/黒沢 年男

 のちに『必殺シリーズ』の現代版ともいうべきコンセプトで製作された『ハングマンシリーズ』で主役を演じる,黒沢年男・林隆三のお2人がゲスト出演.また,高松英郎さん演じる天神の子六の側近(?)を,江幡高志さんが上手に演じています.でらちゃんお気に入りの俳優さんの一人です.


第5話 仏の首にナワかけろ

監 督:松本 明
脚 本:山田 隆之
ゲスト :遠藤 辰雄/正司 照江/永田 光男/吉川 雅恵/美樹 博/古川 ロック/大橋 壮多/馬場 勝美/安藤 仁一郎/花岡 秀樹/藤田 弓子/山田 吾一
 佐渡流刑時代の命の恩人に首つりロシアン・ルーレットを挑む念仏の鉄.その後の大暴れはほとんど八つ当たり状態.仕置人の他のメンバーはほとんど何にもしていません.

第6話 塀に書かれた恨み文字

監 督:松野 宏軌
脚 本:國弘 威雄
ゲスト :佐々木 功/鈴木 瑞穂/大村 文武/千葉 敏郎/瀧 義郎/徳田 実/島田 茂/寺島 雄作/なかつか かずよ/比嘉 辰也/酒井 靖乃/中尾 彬
 中尾彬・佐々木功・鈴木瑞穂という豪華なゲストを迎えて送る,辻斬りが趣味のバカ殿様の話.天神の子六による牢内のいじめが楽しいのですが,こゆこと現代の刑務所でもあるみたいです.

第7話 閉じたまなこに深い淵

監 督:工藤 栄一
脚 本:山田 雅之
ゲスト :神田 隆/亀石 征一郎/柴田 美保子/志乃原 良子/水上 保広/山村 弘三/酒井 哲/大竹 修造/糸村 昌子/八代 郷子/滝沢 道春/坂本 高章/渡辺 健吾
 この話,最初に観た時なんでお座敷に鯉を飼っているのか不思議だったのですが,こういうことだったのね? どちらかというと大物役の多い神田隆さんですが,今回は本当に下衆なチンピラが正体である検校役を熱演しています.

第8話 力をかわす露の草

監 督:松野 宏軌
脚 本:猪又 憲吾
ゲスト :柳生 博/大前 均/和田 恵利子/丘 夏子/香月 京子/池田 忠夫/北原 将光/森 章二/暁 新太郎/新海 なつ/内田 真江/安田 道代
 権力と暴力を象徴する,サディスティックなおぬいの方と大男の雲右衛門.シリーズ中でも屈指の強敵でしたが,ラストの鉄と錠の息の合ったコンピネーションによる仕置が見どころでした.

第9話 利用する奴される奴

監 督:松本 明
脚 本:安倍 徹郎
ゲスト :海老江 寛/滝田 二郎/大橋 壮多/山口 朱美/須永 克彦/田中 圭介/真木 祥次郎/内田 真江/松本 智子/日高 澄子/磯野 洋子/津川 雅彦
 初期の『必殺』各シリーズで1本ずつ個性的な悪役を演じている津川雅彦さんがゲスト.今回も意味不明の絶叫を残して仕置されます.

第10話 ぬの地ぬす人ぬれば色

監 督:松野 宏軌
脚 本:國弘 威雄
ゲスト :上野山 功一/鮎川 いづみ/北林 早苗/加賀 ちかこ/正司 歌江/小林 勝彦/春日 俊二/湊 俊一/近江 輝子/藤沢 薫/中林 章/和田 正信/黛 廉太郎/高木 峯子
 後期『必殺シリーズ』にレギュラー出演して番組の顔となった鮎川いづみさんがゲスト.大奥が舞台の話なので,侍女に化けたおきんを中心にストーリーは展開していきますが,中盤もう一人誰が下男として大奥に入り込むかで,しっかり自己主張している錠.女嫌いじゃなかったのか?

第11話 流刑のかげに仕掛あり

監 督:国原 俊明
脚 本:浅間 虹児
ゲスト :穂積 隆信/木村 元/永野 達雄/柳川 清/時 美沙/古川 ロック/滝 譲二/八代 郷子/堀北 幸夫/美樹 博/藤川 準/今井 健二
 セミレギュラーのお島役の三島ゆり子さんですが,出るたびにひどい目にあっていて可哀そうです.悪役常連の今井健二さん演じる鬼の岩蔵はさすがの貫禄ですが,相対する鉄と錠の二人掛りの仕置の場面も迫力的でいいです.それにしてもこの二人,実に仕置に向かうとき,実に楽しそうに歩くのよね.

第12話 女ひとりの地獄旅

監 督:工藤 栄一
脚 本:松田 司
ゲスト :佐野 厚子/長谷川 弘/五味 龍太郎/西山 辰夫/芦田 鉄雄/井上 茂/宮川 龍児/三木 昭八郎/三村 伸也/笹 五郎/野崎 善彦/松尾 勝人/岩田 正/前田 吟

 半次の悲恋にまつわるシリーズでは珍しいストーリーですが,なぜかこの話の印象薄いです.


第13話 悪いやつほどよく見える

監 督:松野 宏軌
脚 本:浅間 虹児
ゲスト:林 ゆたか/高樹 春子/渥美 国泰/笠原 玲子/森 田哉/田畑 猛雄/神戸 瓢介/川口 喬/松田 明/吉田 聖一/五十嵐 義弘/松尾 勝人
 「侍じゃなくたって生きて行けるじゃねえか」
 「まったくだ」
 侍嫌いの錠のキャラクターがよく描かれたエピソードであるとともに,アンチ・エリートがシリーズを通じてのテーマであったことを伺わせる作品.

第14話 賭けた命のかわら版

監 督:工藤 栄一
脚 本:三芳 加也
ゲスト :石山 律雄/川合 伸旺/松本 朝夫/外山 高士/汐路 章/神鳥 ひろ子/芦沢 孝子/重久 剛/馬場 勝義/五十嵐 義弘/北原 将光/堀北 幸夫/森口 一夫/加茂 雅幹/太田 優子
 第12話に続いて半次がメインの話.金にならないという理由で半次の依頼をはねつけるドライな錠が珍しいと思っていたら,結局は参加するのでした.鉄と錠の仕置がいつもと違います.

第15話 夜がキバむく一つ宿

監 督:蔵原 惟繕
脚 本:浅間 虹児
ゲスト :堺 左千夫/大森 義夫/左 時枝/伊佐山 ひろ子/梅津 栄/青山 良彦/牧 冬吉/島 米八/永田 光男/伊藤 義高/殿山 泰司
 嵐の中,廃屋に避難した鉄と錠をはじめとする11人の男女が,一人また一人と殺されていくという設定で,ドラマの最初の方で犯人は明らかになっており,単なる『よくあるミステリー』とはなってはおらず,また鉄と錠が刺客の2人を始末した後,それだけでは終わらないのがこの話のポイントですが,ちょっとひねりすぎていてわかりづらいのが難点でもあります.この文章もわかりづらいと思いますが,ネタバレを防ごうとするとこうなってしまうのです.

第16話 大悪党のニセ涙

監 督:工藤 栄一
脚 本:國弘 威雄
ゲスト :森次 浩司/津坂 浩史西田 良/伝法 三千雄/千代田 進一/京 春上/香月 京子/三田 一枝/芦田 鉄雄/徳田 実/岩田 正/三ツ星 東美/高木 峯子
 『ウルトラセブン』のモロボシ・ダン=森次浩二さんがゲスト.この方,当時インタビューで「子供の観ている時間帯の番組では悪役を演じないようにしている」とおっしゃってましたが,ここでは超極悪人を見事に演じ切っています.話の流れの上で子六の仕置がみられるのかと期待しておりましたが.実際に仕置をしたのは鉄で,錠は丸儲け? 

第17話 恋情すてて死の願

監 督:長谷 和夫
脚 本:桜井 康裕
ゲスト :長谷川 澄子/中田 喜子/岩下 浩/高野 真二/明石 潮/高峰 圭二/真木 祥次郎
 モロボシ・ダンの次はスペル星人.『ウルトラセブン』幻の第12話で,『ひばく星人』スペル星人の人間型を演じていた岩下浩さんが悪い奴を好演しています.仇討ち姉妹と錠を中心としたストーリーですが,この話なんかを観る限り女嫌いという錠の設定にはちょっと疑問を感じるのです.

第18話 備えはできたいざ仕置

監 督:松野 宏軌
脚 本:勝目 貴久
ゲス ト:中井 啓輔/高森 玄/田口 計/安倍 玉絵/藤川 準/藤尾 純/出水 憲司/唐沢 民賢/日高 久/中森 朋子/三鷹 健児/松尾 勝人/城 義光/松本 荷葉
 この時期のTV番組って,現在では放送禁止用語になっている言葉がやたらと使われているので,このLDもやたらと音が消されている部分があるのですが,第2話とこの第18話は特にそれが顕著です.やっぱり『こ〇き』と『き〇が〇』はまずいのよね.普段悪役が多い中井啓輔さんが善人役で出ていますが,この人確かに時代劇向けの顔していることに気づかせていただきました.

第19話 罪も憎んで人憎む

監 督:蔵原 惟繕
脚 本:國弘 威雄
ゲスト :川口 恒/金井 進二/今村 京子/伊丹 十三/唐沢 民賢/海老江 寛/井手 良男/藤沢 薫/日高 久/田中 弘史/志賀 勝/市川 男女之助/芝田 總二/黛 康太郎/加藤 武
 伊丹十三さんがゲストで悪役やっていますが,後に映画監督として山崎努さん主演の一連の作品でブレイクしました.

第20話 狙う女を闇が裂く

監 督:田中 徳三
脚 本:鈴木 安
ゲスト:真屋 順子/沢村 宗之助/郡司 良/清水 彰/御影 伸介/松尾 勝人/山内 八郎/夏八木 勲
 家探しされて岡っ引きに「てめえらみんな仕置すっぞ」,このおきんのセリフはちょっとまずいでしょ? 冷たくしたおきんのピンチに興奮して鉄にたしなめられる錠が初々しくてかわいいです.今回は中村主水さん欠席の珍しいエピソードです.

第21話 生木をさかれ生き地獄

監 督:長谷 和夫
脚 本:鴨井 達比古
ゲスト :浜田 寅彦/西沢 利明/柴田 p彦/西山恵子/五味 龍太郎/武 周暢/森 秀人/三木 昭八郎/吉田 聖一/丸尾 好弘/槇堀 秀勝/平井 靖
 第19話で佐渡送りされる鉄と錠を救出した主水が,今回は2人とともに佐渡に乗り込む話ですが,「俺は絶対佐渡へは行かねえぞ」と言ってた鉄をどうやって説得したのか,気になりました.浜田・西沢のご両人は流石の悪役ぶりですが,第18話の中井啓輔さん同様,柴田p彦さんの被害者役もよかったです.この人もまさに時代劇向きの俳優さんだと思います.

第22話 楽あれば苦あり親はなし

監 督:松本 明
脚 本:猪又 憲吾
ゲスト :白羽 大介/田中 直行/榊原 大介/千葉 敏郎/朝丘 雪路/三浦 徳子/木下 サヨ子/奈村 佳代子/重久 剛/新城 邦彦/長岡 三郎/小庄 義明/香西 正人/山下 勝玄/伊藤 雄之助
 伊藤雄之助さんと朝丘雪路さんがゲスト.伊藤さんの狂人役は流石です.鉄の台詞「色が白くてボインとくりゃあ」は時代考証無視ですが,朝丘さん扮するお波はいまで言うところの××××女で,鉄と主水は××兄弟ということになります.そういった話なので女嫌いの錠は出てきません.

第23話 無理を通して殺された

監 督:松野 宏軌
脚 本:松田 司
ゲスト :村井 国夫/野口 ふみえ/有馬 昌彦/池田 忠夫/唐沢 民賢/出水 憲司/北野 拓也/城 義光/広岡 善四郎/米座 貞弥/波川 進/宮川 龍児/黒木 和代/佐々木 松之丞
 主水と子六の後釜につこうとする同心と代貸の話ですが,牢が舞台の話になると必ず火事になるのがご都合主義? 子六の用心棒として牢に叩き込まれる錠の脚,沖雅也さんって意外と毛深い.第16話では結局手を下さなかった子六が,今回は鉄に「俺にもやらせろ」と代貸乙松のとどめをさします.主水が簡単に始末するのは同心村野.これって出世欲に凝り固まったサラリーマンの姿で,このシリーズでたびたび出てくるテーマのひとつなのです.

第24話 疑う愛に迫る魔手

監 督:長谷 和夫
脚 本:松川 誠
ゲスト :美川 陽一郎/瞳 順子/守田 学哉/玉生 司朗/加藤 和夫/寺下 貞信/古川 ロック/大橋 壮多/松田 明/小柳 圭子
 観音長屋を舞台に,女郎屋を開く計画で長屋の売却を強要する高島守膳と,売却を無理強いされる元盗賊の大家とその娘,そして立ち退きを拒否する長屋の住民が入り乱れて巻き起こす騒動の中,大家の娘を連れてきた錠を中心に展開するストーリーですが,第1話といい,この話といい,錠メインの話って若い娘がらみのものが多いのです.女嫌いなのかロリコンなのか? ここのところ欠席が続いていた半次が久々の登場ですが,主水が2度目の欠席のため,キャスティングのラスト(トメ)が藤田まことさんではなく津坂匡章さんという珍しいエンディングになっています.

第25話 能なしカラス爪をトグ

監 督:工藤 栄一
脚 本:鴨井 達比古
ゲスト :浅茅 しのぶ/三木 豊/坂本 友章/入江 正徳/相原 巨典/入江 慎也/浜 伸二/松尾 勝人/内田 真江/島 かおり
 バカ息子と教育ママの話.第23話の出世欲に凝り固まったサラリーマン同心同様,この後の他シリーズでも度々似たような話が出てきます.今回も中村主水は物語の冒頭でちょっと顔を出しただけで仕置には参加しませんが,このシリーズのもう一つの特徴である『殺さずに恐怖を与える仕置』も行われます.「これって大丈夫なのかしら?」って思ってたら次回は最終回でした.

第26話 お江戸華町未練なし

監 督:工藤 栄一
脚 本:梅林 喜久生
ゲスト :長谷川 弘/原田 あけみ/外山 高士/西山 辰夫/山本 一郎/北野 拓郎/森 秀人/出水 憲司/黛 康太郎/八代 郷子/山本 麟一
 最終回.この『仕置人』,他のシリーズと違ってメンバーが組織化されておらず,かなり各人の感情による行動が多いのが特徴ですが,それが各キャラクターを魅力的に見せている反面,常に危なっかしさを感じさせていたのも,別の意味で魅力的なシリーズだったと思います.しかしながら結局は一人の犠牲者も出さずにメンバーは解散,ひとり江戸に残った主水は以後『必殺シリーズ』の顔となり,次々と番組が作られていったわけですが,やはり初期の作品が私は好きでした.