悪魔が来りて笛を吹く


TBS 系 1977年 6月25日 ~1977年 7月23日
土曜日 22:00~22:55 全5回

原作:横溝 正史
脚本:石森 史郎
監督:鈴木 英夫
音楽:中村 八大
制作:毎日放送/東宝株式会社

  

DVD KIBR-4438/4439

CAST

 椿 秌子 草笛 光子
椿 英輔 … 江原 真二郎
椿 美禰子 … 檀 ふみ
菊江 … 中山 麻理

新宮 一彦 …

星 正人

新宮 華子 … 岩崎 加根子
玉虫 公丸 … 加藤 嘉
三春園女将 … 三崎 千江子
すみ … 児島 美ゆき
淡路島警官 … 生井 健夫
慈道 … 吉田 義男

日和警部 …

長門 勇

出川刑事 … 森次 晃嗣
目賀 重亮 … 観世 栄夫
信乃 … 原 泉

等々力刑事 …

早川 保
かね … 野村 昭子
お種 … 白石 幸子
妙海尼(駒子) … 東郷 晴子
お玉 … 冨田 恵子
河村 辰五郎 … 寄山 弘
堀井 小夜子 … 足立 登美子

新宮 利彦 …

長門 裕之

三島 東太郎 … 沖 雅也
金田一 耕助 … 古谷 一行

第1回

 実はこの作品については放映時に観たことは全くなくて, TV ・映画を問わず沖雅也さんの出演作を集めていて,この度 DVD を入手して初めて観ることが出来ました.沖さんに関しては,この作品の放映された1977年という年は,『太陽にほえろ!』前期スコッチ刑事の出演が終わった後の時期で,翌年にはやはり刑事役で『大追跡』に出演していますが,ここでは全く異なった役柄に挑戦しています.この第1回を観ての感想としては,まず豪華なキャスト陣に圧倒されました.トップ・クレジットは草笛光子さんで,演じている秌子は作品中のポジションとしては決して中心となる役柄ではないのですが,原作の『美貌であるが白痴的で無邪気,絶えず性交渉をせねば満足できない体質』のニンフォマニアックなキャラクターを見事に演じ切っています.この方に関しては『必殺シリーズ』での女元締め役がサマになっていてその印象が強かったので意外でしたが,今回のような役柄もスゴくハマっていて,流石大女優の貫禄を感じさせていただきました.また,江原真二郎さん,星正人さん,加藤嘉さん,長門勇さん,森次晃嗣さん,早川保さん,長門裕之さんといった主役級の男優陣が主要な人物を演じ脇を固めている中,菊江役の中山麻理さんの陰のある美しさが際立っていました.このお二人の演じる対照的な女性像が何といっても印象的でした.

第2回

 推理小説が原作なので,ストーリーに関してはここではできるだけ記述を避けますが,前回ラストで最初の殺人が行われ,金田一耕助(古谷一行さん)と出川刑事(森次晃嗣さん)の捜査を中心に描かれています.今回舞台となった須磨で,新たに三崎千江子さんと児島美ゆきさんが旅館の女将と女中役で出演してますが,児島さんの演じる明るいキャラクターが,草笛さんや中山さんの演じる女性たちとは対照的で,すごく目立っていました.この作品女優陣の印象が強いです.

第3回

 第2・第3の殺人事件と,須磨から淡路に渡った金田一耕助と出川刑事の捜査が同時進行.出川刑事を演じる森次晃嗣さんは,やはり『ウルトラセブン』モロボシ・ダンのイメージが強すぎて,刑事役にちょっと違和感感じてしまいました.黒部進さんや団時朗さんもそうですが,あまりにも強い印象のキャラクターを演じると,後々苦労する俳優さんの見本みたいな方でした.今回ゲストの吉田義男さんも私たちの世代にとっては,『悪魔くん』のメフィスト以外の何物でもないのです.

第4回

 東京に戻った金田一耕助(出川刑事は出て来ないのですが,関西に残って捜査を続けている設定だったみたいです)と第4・第5の殺人事件が同時進行.登場人物の中で,金田一によれば「最初から犯人ではありえない」唯一の人物を演じている檀ふみさんですが,昔でらちゃんはこの女優さん苦手で,あまりにもお嬢さん然としたキャラクターがどうしても好きになれませんでした.今回久しぶりに拝見しましたが,もう以前のような嫌悪感は感じなかったのは,やはりこちらが年齢取ったからなのかしらね.第5の殺人事件の被害者の元の職業を聞いて,金田一は….

最終回

 解決編.ネタバレを避けるためにストーリーについての記述は控えさせていただきます.今回この DVD を観る前に,この翌年に放映されたエラリー・クイーン原作『Yの悲劇』の連続ドラマの DVD をもっかい観て比較してみたのですが,やはり海外ミステリのドラマ化は苦しく感じたのに対して,この横溝正史原作のドラマ化作品は,原作の持つ雰囲気を損なうことなく再構築することに成功していたと思います.特筆すべきはやはり主演級の役者さんを揃えた豪華なキャスティングで,この点に関しては賛否両論ありますが,企画の角川春樹事務所の功績大だと思っています.



夜歩く


TBS 系 1978年 7月22日 ~1978年 8月 5日
土曜日 22:00~22:55 全3回

原作:横溝 正史
脚本:稲葉 明子
監督:水野 直樹
音楽:真鍋 理一郎
制作:毎日放送/東宝株式会社

 

DVD KIBR-4441

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CAST

 古神 八千代 范 文雀
屋代 寅太 … 谷 隼人
お柳さま … 南風 洋子
蜂谷 小市 … 岸田 森
仙石 直記 … 村井 国夫
お喜多 … 原 泉
古神 守衛 … 清水 綋治

古神 四方太 …

菅 貫太郎

お藤 … 小林 伊津子
駐在 … 鮎川 浩
海勝院の尼 … 音羽 久米子
お静 … 松沢 千恵
仙石 鉄之進 … 伊藤 雄之助

日和警部 …

長門 勇

金田一 耕助 … 古谷 一行

第1回

 こちらは『悪魔が来りて笛を吹く』の1年後に放映された作品で,シリーズ名も『横溝正史シリーズⅡ』に替わっており,シリーズ主題歌も変更されています.このシリーズ,リアルタイムで観たことはほとんどないのですが,『悪魔~』の沖雅也さん同様,こちらの作品は岸田森さん目当てで DVD を購入して観ました.この第1回では,金田一探偵が戦友の屋代寅太を訪ねて古神家を訪れ,古神家の娘・八千代を巡っての一連の騒動に遭遇し,最初の首無し死体が発見されるまでが描かれており,岸田さんが演じているのはその死体と目される八千代の婚約者の蜂谷小市ですが,このエキセントリックなアーティスト役はまさにはまり役だったと思います.また,日本刀を振りかざして蜂谷を威嚇する古神家の執事・仙石鉄之進を演じている怪優・伊藤雄之助さんも相変わらずの狂いっぷりを見せてくれています.そして,八千代の腹違いの兄・古神守衛の乳母・お喜多役の原泉さんですが,この方『悪魔~』でもヒロインの乳母役でした.乳母キャラ?

第2回

 作品のタイトル『夜歩く』とは夢遊病のことで,このドラマでは八千代と鉄之進の発症している様子が描かれていますが,原作では直記も発症している設定となっているらしいです(未読).鉄之進の夢遊病発症によって発見された死体の首は守衛のもので,当初被害者と目された蜂谷は一転して容疑者となるわけですが,実は…,ここにこの事件の最も大きなトリックが隠されており,ラストに第2の首無し死体が発見され,物語は佳境に入っていくのでした.

最終回

 で,舞台は古神家本家のある岡山に移り,物語は早くも解決編に入る最終回.内容については省略させていただきますが,正直なところ,この最終回で全てを描写するのにはちょっと無理があって,物語自体が消化不良を起こしてしまっている感はぬぐえません.『悪魔~』同様全5回くらいで製作されていれば,もっと面白い作品になっていたと思われ,ちょっと残念でした.また,これは原作者の作品全般に見られることなのですが,ストーリーの最も大きなトリックがきちんと描写されていなかったり,偶然によって発見されてしまうような描写がなされていたりという,ちょっとアンフェアな傾向が散見されるので,あまり高く評価はされていないように思われます.