ますむら ひろし


作品2 (1985〜2000年頃)



アタゴオル玉手箱 全9巻

1986-96 偕成社・MOE 出版

 1984年より『月刊 MOE』・『コミック・モエ』を経て『コミック Fantasy』に連載された「アタゴオル物語」の続編的作品.
 さすがに前作よりテンション少し落ちている気はしますが,あいかわらずのファンタジー・ワールド.米沢訛りのビートルズ・ナンバーも健在です.もちろんヒデヨシも.




コスモス楽園記 全5巻

1988-90 スコラ

 『コミック・バーガー』1986年3号〜'89年23号連載,全72話.
 南大平洋に浮かぶロバス島へ単独でテレビ番組のロケハンに出かけた藤田光介と島の猫たちの織り成すファンタジー.『アタゴオル...』の世界では初めから猫と人間が自然に共存していたのに対し,ここではあくまで人間は「ヨソモノ」で,その目を通して猫たちの日常が描かれていており,また,異常に進んだバイオテクノロジーやゴッホの絵に似た風景の謎に始まり,細胞群・スネールやネコたちの記憶の秘密,それにからむねんねこ商会等,『アタゴオル』に比べてかなりストーリー性の強い作品となってますが,作者独特のファンタジー性は健在です.『アタゴオル』のヒデヨシ同様,文太のキャラクターは最高.また煙鳥・鹿松・針王等,他の猫キャラも相変わらず魅力的に描かれております.

ますむら・ひろし詩画集―アタゴオル―

1992 偕成社・MOE 出版

 ますむらひろし詩画集.




夢降るラビットタウン 全10巻

1990- 増進会出版社

 ネコの次はウサギ... やはりネコの方がキャラの印象強烈なので,少々テンションおちますが,怪キャラ・骨平太と夏美が気にいってたりするのでした.




ペンギン草子

1990 MOE 出版

 『コミック・モエ』No.1〜6連載,全6話.
 日本語を話すペンギンたちの島・カリン島に,“アナンサー”としてやって来た小港美優とペンギンたちの織り成すファンタジー第1作.作者によると,この『カリン島シリーズ』はこれ以前にイラストと小文の形による『カリン島見聞録』で始まったそうですが,その作品はまだ本になっていないらしいです.ペンギンたちの中では放送局のプクトよりも山賊・ウニ頭親分のキャラクターが最高で,ウニ頭が美優に対して言う「トド娘」とゆ〜表現ともども大いに気にいっているのです.
「うるせいっこのトド娘! おめえこそピンクのふんどしつけてマグロと相撲とらせてやるぜっ」
「ま〜 ま〜っ...なんてお下劣ペンギン」

のやりとりが最高でした.

オーロラ放送局 全2巻

1993 学習研究社

 『LC ミステリー』1992年1月号〜'93年2月号連載,全14話.
 『ペンギン草子』に続くカリン島シリーズで,タイトルこそ『オーロラ放送局』ですが,放送局を離れて,美優とウニ頭中心に進む話が多くなっています.前作から比べてウニ頭のキャラが変化してしまった(敵対してたはずの美優に対してかなり好意的になってしまった)のが少々残念でした.時期的に結構ジョン・レノンねたが多いのですが,作者自身没後のレノンが神聖化されてしまっていることに対し,かなり批判的なようです.また『あとがき』にもあるように, 1976年に作者はアントニオ・ガウディの建築にかなり衝撃を受けたらしく,この作品の下巻にもネタとなって出てきますが,これ以来の作者のスペイン贔屓趣味が後の傑作『アンダルシア姫』に引きつがれている感じです.

アンダルシア姫 全3巻

1995-96 学習研究社

 『LC ミステリー』1993年10月号〜'96年3月号連載,全22話.
 ...というわけで,スペイン・アンダルシア地方を舞台に繰り広げられる「アンダルシア姫」・織部と時蔵の物語ですが,最高傑作だと思います.今回はネコもウサギもペンギンも出てきません.他の作品に見られるファンタジー色に変わって,初期作品に見られたような暗さ・おどろおどろしさが見事に復活しておりますが,洗練されたタッチで,ともすれば悪趣味になりがちなストーリーを最高に美しい作品に仕上げていると思います.ほかのシリーズが少々マンネリ気味のような気がしてきたところだったので,すご〜く新鮮な感じがしました.




アタゴオル 全2巻

1995-96 スコラ

 『コミック・バーガー』1994年3月号〜'96年1月号連載,全14話.
 『アタゴオル物語』・『アタゴオル玉手箱』に続くシリーズ第3作.ヒデヨシの大活躍は相変わらずですが,他のキャラクター(特にテンプラ・ドラネコ団のブチ丸等)の絵柄がかなり変わってきております.個人的には昔の方が絵・ストーリー共に好きでしたが,魅力的なキャラクターの織り成すファンタジー・ワールドはあくまで健在なのでした.

円棺惑星

1996 朝日ソノラマ

 『眠れぬ夜の奇妙な話』1991年10月Vol.4〜'93年5月Vol.13に6回にわたって掲載されたシリーズの単行本化.短編「KARA」(同'91年8月Vol.3)を併録.
 『眠れぬ夜の奇妙な話』連載作だけあって,かなりシリアスで少々暗いないようを持ったシリーズですが,作者のファンタジー性は充分に発揮されている佳作だと思います.ただこの人の場合,主人公が人間型だとど〜しても... 短編「KARA」は傑作だと思います.

イーハトーブ波

1997 朝日ソノラマ

 ますむらひろし画文集.

ギルドマ

1999 朝日ソノラマ

 『ネムキ』1997年7月号〜'99年3月号に10回にわたって連載されたシリーズの単行本化.
 アタゴオルの西方に広がるギルドマ・ジャングルを舞台にギルバルス・タクマ・ヒデヨシたちが活躍するファンタジーですが,『眠れぬ夜の奇妙な話』コミックスだけあって,他のアタゴオル・シリーズとは雰囲気の違った長編になっています.少しストーリーが解り辛い部分があるのが難点ですが,ラストの1ページには思わず納得させられてしまうヘンな魅力を持った作品でもあります.やはりヒデヨシこそ最強のキャラクターであることを実感させられてしまうのです.

JARIA ジャリア

2000 偕成社

 「ジャリア」河出書房『こども時刻表』1991年〜'93年に7回にわたって連載されたシリーズの単行本化.東京都・世田谷区産業新興部産業新興課小冊子1992年7月掲載の「土が歌ってるよ」同時収録.
 作者のあとがき「ずっと踊っている」にもあるように,この人の作品には『子供であり続けること』が重要なファクターとなっているわけですが,初期の作品にはもう少し毒があったような気もするのです.これを円熟と見るか後退と見るかは読者次第ですが.