ねこぢる




ねこぢるうどん1

1992 青林堂
1998 文藝春秋

 「しっこしっこぴゅーしゅーの巻」(『月刊ガロ』1991年1月号掲載)・「かたつむりの巻」(同'91年6月号掲載)・「ねこさいばんの巻」(同'91年10月号掲載)・「たましいの巻」(同'91年12月号掲載)・「じじいの巻」(同'92年4月号掲載)・「たんこぶ屋の巻」(同'91年8月号掲載)・「クリスマスの巻」(同'92年1月号掲載)・「川ぞいの家の巻」(同'91年9月号掲載)・「大魔導師の巻」(同'91年4月号掲載)・「ねこちゃん-くそじじいの巻-」(『パックン』'90年11月号掲載)・「日記」(4ページのみ・青林堂『ねこじるうどん1』初掲載)・「ねこじるうどん(デビュー作)」(『月刊ガロ』'90年6月号掲載)収録.文藝春秋からの復刻版には,「とうめい」(ねこぢる 作・山野 一 画・書き下ろし)が追加収録されています.
 ねこぢる作品の大部分を占めるにゃーことにゃっ太のシリーズ初期作品.子どもならではの残酷非道さを描いたシリーズとして有名ですが,この頃はにゃーこもにゃっ太もまだおとなしめです.ここに収められている作品の中では,ねこぢる本人の幼児体験と思われる「しっこしっこぴゅーしゅーの巻」,アル中のおとうさんが初めてその凶暴性を発揮する「クリスマスの巻」が印象に残ります.また「かたつむりの巻」や「ねこさいばんの巻」なんかは,法や正義の否定みたいな感じでヘンに好感が持てたりするのです.またデビュー作の「ねこぢるうどん」は,なんともいえないミョーなおかしさを持った作品ですが,「先生,金玉とれたけど死にましたよ」とくり返す母親ネコが秀逸(変か?).そして,ねこぢるの夢のメモを夫の山野氏が作品化した新作「とうめい」は,かなり美しい作品に仕上がっています.

ねこぢるうどん2

1995 青林堂
1998 文藝春秋

 「のぐちひでよの巻」(『月刊ガロ』1990年11月号掲載)・「さばの天ぷらの巻」(同'90年9月号掲載)・「かわらのこの巻」(同'92年2・3月合併号掲載)・「がの巻」(同'91年5月号掲載)・「□ぬごろしの巻」(同'91年2・3月合併号掲載)・「じてんしゃでゴーの巻」(同'90年8月号掲載)・「ひるねの巻」(同'92年9月号掲載)・「へんなももの巻」(同'90年12月号掲載)・「やまでらの巻」(同'92年12月号掲載)・「やまのかみさまの巻」(同'92年5〜7月号掲載)・「特別編・かぶとむしの巻」(同'90年7月号掲載)・「日記」(2ページのみ・『TV Bros.』'94年8月6日号・10月15日号掲載)収録.文藝春秋からの復刻版には,「へんないえ」(ねこぢる 作・山野 一 画・書き下ろし)が追加収録されていますが,「□ぬごろしの巻」がカットされている他,作品中のセリフなどがかなり変えられてしまっていて残念です.とくに「やまのかみさまの巻・・・」での神様が吐く差別語は最高だったのですが...
 第1巻にくらべて目につくのは人間の登場人物が多いことですが,「のぐちひでおの巻」ののぐちひでお,「かわらのこの巻」のきXがいばばあ,「□ぬごろしの巻」の□ぬごろし,「じてんしゃでゴーの巻」の川の中でうどんを食べる男,「ひるねの巻」の包丁男,「へんなももの巻」の南洋果物スマトラ屋主人,全て狂気を感じさせるキャラクターばかりで,故ねこぢるの人間観を如実に示しているよ〜な気がして,大変微笑ましいです? しかし何と言っても私のお気に入りのキャラは「やまのかみさまの巻」の神様なのです.「大きらいじゃよ.工場も,工場でこつこつ働いているよ〜な連中も.くさいしな」 ... 最高です! ねこぢるの夢のメモを夫の山野氏が作品化した新作「へんないえ」は,かなりシュールで,これも良いです.

ねこぢるうどん3

1998 文藝春秋

 青林堂から刊行された単行本未収録の作品を全て掲載した第3弾で,文藝春秋より刊行.
 「こっきょうの巻」他全8話(『月刊ガロ』掲載)・「にゃんごたん」(ねこぢるy・『COMIC GON!』掲載)・「ねこ神さま」(4コマ3編・ねこぢるy・『コミックビンゴ』掲載)・「探偵」(ねこぢる 作・山野 一 画・書き下ろし)及び故ねこぢるの「夢のメモ」7編収録.
 個人的には前2作にくらべて印象に残る話が少なく,内容はますます過激になっているにも関わらずトーンダウンしているような印象受けましたが... ねこぢるの夢のメモを夫の山野氏が作品化した新作「探偵」は,かなりの傑作だと思います.

ねこぢる食堂

1997 白泉社

 「ねこぢるごはん」全5話(『Jack Pot』・『YOUNG ANIMAL』掲載)・「ねこぢる4コマ劇場」2編(『PC fan』掲載)・「ねこちゃん」2編(『Packn'』掲載)・「ぢるぢる御近所日記」3編(『SPA!』掲載)・「ぢるぢるねこばなし」5編・(『週間女性』掲載)・「ねこぢる9コマ劇場」2編(『TV Bros』掲載)・「ぢるぢるばなし」5編(『週間女性』掲載)・「ばばあの習性」(『危ない1号』掲載)・「ぢるぢる恐怖体験」5編(『週間女性』掲載)・「ぢるぢる新入社員」5編(『週間女性』掲載)・「ぢるぢる昔ばなし」全4話(『スピリッツ21』掲載)・「ぢるぢる見聞録」(『PUTAO』掲載)・「ぢるぢるおまけばなし」(『PC fan』掲載)収録.
 ねこぢるの単行本の中では最もバラエティーに富んだ内容になっています.まず,にゃーことにゃっ太の活躍するシリーズ「ねこじるごはん」の中では,『ねこじるうどん2』の「やまのかみさまの巻」に出てくる『ころぺた号』が再登場する「COMPUTER TUNED」と,ニワトリのぴーたろう君に両親の肉で作った親子丼をごちそうする「にわとり」,また『本当は恐ろしいグリム童話』なんかよりもよっぽど早く童話の残酷性を浮きぼりにした「ぢるぢる昔ばなし」の中では「和風ヘンゼルとグレーテル」が傑作だと思います.その他の作品も佳作揃いですが,個人的にはねこぢるの実生活に基づいた「ぢるぢるねこばなし」・「ぢるぢる恐怖体験」・「ぢるぢる見聞録」が気にいっております.

ねこぢるだんご

1997 朝日ソノラマ

 「半魚人」(書き下ろし)・「かちく」(書き下ろし)・「ねこぢるだんご」全6話(『まんがジャパンダ』・『スコラ』掲載)・「つなみ」(書き下ろし)収録.
 ねこぢる最初で最後の書き下ろし(本人談だそ〜です)3編を含む作品集.にゃーことにゃっ太が活躍するシリーズ「ねこぢるだんご」・「半魚人」・「かちく」では2人(匹?)はますます残酷非道になり,おとーさんはますますたのもしさ(?)を発揮していて,シリーズ最高の過激さを感じさせてくれます.とくにブタの子にトンカツを食べさせる「かちく」,おとーさんが大活躍する「半魚人」は最高のテンション.オススメです.また,めずらしく人間型キャラが主人公の「つなみ」は,ねこぢる作品にはやはり珍しく希望的なエンディングを持つ作品で,作者の別の一面を見せてくれたよーな気がしました.




ねこぢるせんべい

1998 集英社

 『小説すばる』に連載されたにゃーことにゃっ太のシリーズ「ねこぢるせんべい」全45話(ただし最後の「にゃーことにゃっ太の夏休みの巻・後編」のみ,ねこぢる 作・山野 一 画)収録.
 単行本のオビには「にゃーことにゃっ太 最後の日常」と書かれていました.この頃になると絵柄も完全に完成されていて,また内容的にもあたりはずれがなく,非常に安心(?)して読んでいられます.作品の中であいかわらず猫以外の動物はみんないじめられてますが,特にブタは徹底的にいじめられ,にゃーこの友達の人間の女の子はみんな悲惨な目にあっているのが目をひきます.作者はブタと女の子に対して,一種特殊な感情を持っていたのでしょ〜か?

ねこぢるまんじゅう

1998 文藝春秋

 「ぢるぢる昔ばなし」全2話(『スピリッツ21』掲載)・「ねこぢるごはん-おつかいの巻-」(『ヤングアニマル』掲載)・「ねこぢるまんじゅう」全10話(ヤングサンデー増刊大漫王No.11〜No.20)・「エーギョーさん」(『PC fan』掲載)収録.
 「ぢるぢる昔ばなし」・にゃーことにゃっ太が活躍する「ねこじるごはん」は相変わらずの過激さですが,メインの「ねこぢるまんじゅう」では珍しく全体を通じてのストーリー(育ての親のおじ〜ちゃんを亡くしたしろ太とくろ太がおか〜さんを探して旅を続ける設定)があったり,残酷描写が影を潜めていたり,かなりこれまでのねこぢる作品とは趣を異にしておりますです.

ねこ神さま1

1997 文藝春秋

 『コミック95/96』・『コミックビンゴ』・『スコラ』に不定期掲載されたシリーズの単行本第1弾.4コマ「旅立ち」(『PC fan』掲載)・「ムダ毛」(『PC fan』掲載)も収録.
 個人的にはにゃーことにゃっ太のシリーズもその過激さゆえ大好きなのですが,やはりこのシリーズこそねこぢる作品の最高傑作だと思います.ねこ神1号・2号(『ねこぢる純粋理性批判』によると,にゃーことにゃっ太の生まれ変わりと推察されるらしいです)は言うに及ばず,神様,魔王,犬神1号・2号とサブキャラも充実してますが,何といっても私のお気に入りは『直子と啓一』シリーズの直子だったりするのです.

ねこ神さま2

1998 文藝春秋

 「ねこ神さま」(『コミックビンゴ』掲載)・「おとなりさん」(『少女コミック』掲載)・「ぢるぢる4コママンガ」(『PC fan』掲載)・「ぢるぢる見聞録」9編(「『PUTAO』掲載)・「ぢるぢるページ」(「『PUTAO』掲載)・「ねこぢる汁」2編(『BUBKA』掲載)・「ガラス窓(遺稿)」(『コミックビンゴ』掲載)・4コマ「主婦の目」(『PC fan』掲載)・「金星人」(『PC fan』掲載)収録.
 直子のボケは相変わらず健在ですが,さらに強力なキャラクター「お嬢様」も登場,ねこ神さまの格好のターゲットとされてしまいます.他の作品もテンション高いです.

ぢるぢる旅行記 インド編

1998 ぶんか社

 『まんがガウディ』1996年1月号〜'97年2月号・『まんがアロハ!』'97年7月号〜'97年11月号連載の全19話収録.ねこぢる自身はよほどインドという国を気にいっていたみたいですが,私は暑くて汚くて辛い国って苦手なもんで...

ぢるぢる日記

1998 二見書房

 『TV Bros』1994年5月〜'98年6月連載.ねこぢる自身の日常を描いた最後の記録とゆ〜ことですが,この人かなりモノ凄い日常を送っていたみたいですね... インド旅行の前後の話や猫のにゃんすけに関する話など,他の作品に出てくるエピソードも結構多く含まれていますが,ねこぢる本人の感性の鋭さを示している話結構多くて好きです.個人的に気にいっているのは,「高校の時体育の時間に女の子がヨレヨレになって泣きだした.どうしたのときいたら,彼氏がジョナサンの前でバイクで死んだといった.ジョナサンてなにときいたら泣きながらファミレスといった.」...何か知らんけど笑えました.あと,「燃えるゴミの日に雑誌を出したらゴミ番のババアに『こーゆーのは新聞の日に出してよねー市の広報読まなかった?』と怒られた.でも『広報は読まないしコレは新聞じゃない』と投げてきた」.う〜ん,共感.

ねこぢる純粋理性批判

1998 祥伝社

 ねこぢる研究会・編,ねこぢる作品の完全徹底解析.「第1章:にゃ−ことにゃっ太の世界」・「第2章:ねこ神さまの世界」・「第3章:ねこぢるワールドの研究」の他,「ねこぢる作品紹介」・「ねこぢる作品年表」・「ねこぢるグッズ紹介」も載っており,ねこぢる入門書としては結構よく出来ていると思います.ねこぢるy 書き下ろし漫画「marble」と,ねこぢるが飼っていた愛猫「にゃんすけ」の写真も掲載されています.