Alfred Hitchcock




1 下宿人
The Lodger : A Story of the London Fog
★★★★★
1927年 イギリス モノクロ サイレント 80 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:エリニック・スタナード
原作:マリー・ベロック=ローンズ
製作:マイケル・バルコン/カーライル・ブラックウェル
撮影:バロン・ヴェンティミリア
編集:イヴォール・モンタギュー
CAST
マリー・オールト/アーサーチェス二―/ジューン/マルコム・キーン/アイヴァ―・ノヴェロ
 ヒッチコック監督第3作.サイレント・ムービーでありながら,最小限の説明でミステリーの世界を構築している傑作.登場人物の表情だけでストーリーの展開がほとんど理解できてしまう演出はさすがです.

2 リング
The Ring
★★★
1927年 イギリス モノクロ サイレント 80 min(アメリカン・ヴァージョン)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アルフレッド・ヒッチコック
製作:ジョン・マックスウェル
撮影:ジョン・J・コックス
CAST
カール・ブリッソン/リリアン・ホール=デイヴィス/イアン・ハンター/フォレスター・ハーヴェイ/ハリー・テリー/ゴードン・ハーカー
 ヒッチコック監督第5作.こちらはミステリーではなく,またさらに説明が少ないため,残念ながら男女の三角関係という入り組んだストーリーの展開がうまく理解できませんでした.

3 ふしだらな女
Easy Virtue
★★★★
1928年 イギリス モノクロ サイレント 60 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:エリオット・スタナード
原作:ノエル・カワード
製作:マイケル・バルコン
撮影:クロード・L・マクドネル
編集:イヴォール・モンタギュー
CAST
イザベル・ジーンズ/ロビン・アーヴァイン/イアン・ハンター/フランク・エリオット/フランクリン・ダイオール/エリック・ブランズビー・ウィリアムズ/ヴァイオレット・フェアブラザー/ダーシア・ディーン/ドロシー・ボイド/エニッド・スタンプ=テイラー
 ヒッチコック監督第6作.サイレント期の俳優さんって,表情とアクションだけで演技をしなくてはいけなかったので大変だったと思いますが,女優さんに関しては声が聞こえない分美しく見せることができるので,その点よかったかも? イザベル・ジーンズさん綺麗です.

4
農夫の妻
The Farmer's Wife
★★★
1928年 イギリス モノクロ サイレント 97 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アルフレッド・ヒッチコック
原作:イーデン・フィルポッツ
製作:ジョン・マックスウェル
撮影:ジョン・J・コックス
編集:アルフレッド・ブース
CAST
ジェームソン・トーマス/リリアン・ホール=デイヴィス/ゴードン・ハーカー/モード・ギル/ルイーズ・ハウンズ/オルガ・スレ―ド/アントニア・ブロウ
 ヒッチコック監督第7作.『リング』にも出ていたゴードン・ハーカーさんという俳優さん,表情による演技が絶妙でした.やはり『リング」にも出ていたリリアン・ホール・デイヴィスさんという女優さん,この作品で高く評価されていたにも関わらず,その後のトーキー化の波についていけず,30代後半で自殺されてしまったそうで,かわいそうです.

5
マンクスマン
The Manxman
★★★★
1929年 イギリス モノクロ サイレント 83 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:エリオット・スタナード
原作:サー・ハル・ケイン
CAST
カール・ブリッソン/マルコム・キーン/アニー・オンドラ/ランドン・エアートン/クレア・グリート
 ヒッチコック監督第9作にして最後のサイレント作品.『リング』のカール・ブリッソンさんと『下宿人』のマルコム・キーンさんが,ヒロインのアニー・オンドラさんをめぐって三角関係となる幼馴染を演じています.サイレント映画でありながら,観ているとどんどんドラマに引き込まれていく不思議な感覚を体験させていただきました.アニー・オンドラさん綺麗です.ところでこのタイトルって "Man X Man" って意味じゃないのかしら? 考えすぎか….

6
恐喝(ゆすり)
Blackmail
★★★★★
1929年 イギリス モノクロ 83 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:チャールズ・ベネット
原作:チャールズ・ベネット
撮影:ジャック・コックス
音楽:キャンベル・コネリー
CAST
アニー・オンドラ/セーラ・オールグッド/チャールズ・ベイトン/ジョン・ロングデン/シリル・リチャード
 ヒッチコック監督第10作にして初のトーキー作品.前作『マンクスマン』でヒロインを演じていたアニー・オンドラさん主演の倒叙ミステリーですが,当初サイレントで製作が開始されながら途中でトーキーへと変更され,また主演のオンドラさんはドイツ訛りがきつかったため,声は吹き替えられています.この方もトーキー化の波によって,姿を消してしまった女優さんのお一人でした.

7
ジュノーと孔雀
Juno and the Paycock
★★★
1930年 イギリス モノクロ 94 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ショーン・オケイシー
CAST
バリー・フィッツジェラルド/メイア・オニール/エドワード・チャップマン/シドニー・モーガン/セーラ・オールグッド
 ヒッチコック監督第11作,トーキー第2作.前作『恐喝(ゆすり)』でヒロインの母親を演じたセーラ・オールグッドさんがヒロインのヒューマン・ドラマですが,これでもかってくらいひどい目にあわされる陰惨な悲劇で,全く救われないすご〜くイヤな映画です.

8
殺人!
Murder!
★★★★★
1930年 イギリス モノクロ 94 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:アルフレッド・ヒッチコック/ウォルター・C・マイクロフト
原作:クレメンス・デイン/ヘレン・シンプソン
製作:ジョン・マックスウェル
音楽:ジョン・レインダース
撮影:ジョン・J・コックス
編集:レネ・マリソン
CAST
ハーバート・マーシャル/ノラ・ベアリング/フィリス・コンスタム/エドワード・チャップマン/マイルス・マンダー/エスメ・パーシー
 ヒッチコック監督第12作,トーキー第3作.『下宿人』,『恐喝(ゆすり)』に続くサスペンス第3弾,しかも今回は本格ミステリーということで本領を発揮しています.劇団における殺人事件で,容疑者の俳優をオーディションに招き犯人役を演じさせるというアイディアが秀逸なのですが,結局この犯人は自殺してしまうので,もしその際に自白メッセージを残さなかったら証拠は何も残らなかったわけで,その場合はどうするつもりだったんだろうね? 前作『ジュノーと孔雀』で孔雀の旦那を演じていたエドワード・チャップマンさんが,今回は事件の陪審員で事件を再調査するやはり俳優の主人公(ハーバート・マーシャルさん)の,助手の役割を勤めるやはり俳優夫妻の夫の役(「ああややこしい)を演じています.



9
第十七番
Number Seventeen
★★
1932年 イギリス モノクロ 65 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ジョセフ・ジェファーソン・ファージョン
CAST
レオン・M・ライオン/アン・グレイ/ジョン・スチュアート/バリー・ジョーンズ/ゲリー・マーシュ
 この映画,列車のシーン等見どころは多いのですが,残念なことに話の展開が掴みにくくて,何度観てもよくわかりません.

10
リッチ・アンド・ストレンジ
Rich and Strange
1931年 イギリス モノクロ 82 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アルマ・レヴィル
原作:デイル・コリンズ
CAST
ヘンリー・ケンドール/ジョーン・バリー/パーシー・マーモンド/ヘディ・アマン/エルジー・ランドルフ
 ヒッチコック監督自身の自伝的要素を含めたコメディだそーですが,猫がかわいそうなのでこういう評価になるのです.ヒロインのジョーン・バリーさんは,『恐喝(ゆすり)』でアニー・オンドラさんの吹き替えを担当していた方らしいです.

11 暗殺者の家
The Man Who Knew Too Much
★★★★
1934年 イギリス モノクロ 75 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:エドウィン・グリーンウッド/A・R・ローリン
原作:チャールズ・ベネット/D・B・ウィンダム・ルイス
製作:マイケル・バルコン
音楽:アーサー・ベンジャミン
撮影:クルト・クーラン
CAST
レスリー・バンクス/エドナ・ベスト/ピーター・ローレ/フランク・ヴォスパー/ヒュー・ウェイクフィールド/ノヴァ・ピルビーム/ピエール・フレネー/ジョージ・カーソン
 DVD 解説によれば,「ヒッチコック監督がサスペンスの第一人者としての名声を築きあげた出世作」だそうで,後にアメリカへ移ってから『知りすぎていた男』としてリメイクされています.とにかくラストの伏線がオープニングで見事にはられているのに感心させられました.

12 三十九夜
the 39 Steps
★★★★
1935年 イギリス モノクロ 83 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:チャールズ・ベネット
原作:ジョン・バカン
製作:マイケル・バルコン
音楽:ルイス・レヴィ
撮影:バーナード・ノールズ
CAST
ロバート・ドーナット/マデリーン・キャロル/ルーシー・マンハイム/ゴッドフリー・タール/ペギー・アッシュクロフト/ジョン・ローリー/ヘレン・へイ/フランク・セリアー/ウイリー・ワトソン
 前作『暗殺者の家』とともにヒッチコック監督がサスペンスの第一人者と称されるきっかけとなった成功作.スパイ映画って苦手なのであまり期待しないで観たのですが,解り易いストーリーで楽しめました.スパイ側の情報を国外に持ち出すトリックが秀逸だったと思います.

13 間諜最後の日
The Secret Agent
★★★
1936年 イギリス モノクロ 84 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:チャールズ・ベネット
原作:サマセット・モーム
製作:マイケル・バルコン
音楽:ルイス・レヴィ
撮影:バーナード・ノ-ルズ
CAST
ジョン・ギールグッド/マデリーン・キャロル/ピーター・ローレ/ロバート・ヤング/パーシー・マーモント/リリー・パルマ―
 やはりスパイ・サスペンスってわかりにくくて苦手です.ラスト結局何だったのって感じだし.ヒロインのマデリーン・キャロルさんは前作『三十九夜』と似たような役柄ですが,『将軍』役のピーター・ローレさんは,『暗殺者の家』の殺し屋役とはガラッと違ったキャラクターをコミカルに見事に演じてます.最初にスパイと間違えられて殺されてしまうパーシー・マーモンドさんは『リッチ&ストレンジ』にも妻の相手役で出演していました.

14 サボタージュ
Sabotage
★★★
1936年 イギリス モノクロ 76 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:チャールズ・ベネット
原作:ジョセフ・コンラッド
製作:マイケル・バルコン
音楽:ルイス・レヴィ
撮影:バーナード・ノ-ルズ
CAST
シルヴィア・シドニー/オスカー・ホモルカ/デズモンド・テスター/ジョン・ローダー/ジョイス・バーバー
 当初ヒロイン(シヴィア・シドニー)の夫で破壊活動家の映画館支配人を演じる予定だった,『暗殺者の家』・『間諜最後の日』に出演していたピーター・ローレさんがオスカー・ホモルカさんに,またヒロインを助けようとする刑事を演じる予定だった,『三十九夜』に出演していたロバート・ドーナットさんがジョン・ローダーさんに,キャスティングの変更が行われて製作されましたが,ヒッチコックさん自身はこの作品の出来に不満の意を表していたみたいです.

15 第3逃亡者
Young and Innocent
★★★
1937年 イギリス モノクロ 82 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚色:チャールズ・ベネット/エドウィン・グリーンウッド/アンソニー・アームストロング
原作:ジョセフィーン・テイ
製作:エドワード・ブラック
音楽:ルイス・レヴィ
撮影:バーナード・ノ-ルズ
編集:チャールズ・フレンド
CAST
ノヴァ・ピルビーム/デリック・デ・マーニー/パーシー・マーモント/エドワード・リグビー/メアリー・クレア/ジョン・ロングデン/ジョージ・カーゾン/ベイジル・ラドフォード/パメラ・カーメ
 ストーリー自体は面白いのですが,ラストで真犯人が簡単に自白してしまう理由がよくわかりません,ヒロインのノヴァ・ピルビームさんは,『暗殺者の家』では誘拐される娘の役を演じていました.常連のパーシー・マーモントさんは今回はヒロインの父親で警察署長を演じています.

16 バルカン超特急
The Lady Vanishes
★★★★
1938年 イギリス モノクロ 94 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:シドニー・ギリアット/フランク・ラウンダー
原作:エセル・リナ・ホワイト
製作:エドワード・ブラック
音楽:ルイス・レヴィ/チャールズ・ウィリアムズ
撮影:ジャック・コックス
編集:R・E・ディアリング
CAST
マーガレット・ロックウッド/マイケル・レッドグレーヴ/ポール・ルーカス/デイム・メイ・ウェッティ/セシル・パーカー/リンデン・トラヴァース/ノーントン・ウェイン/ベイジル・ラドフォード/メアリー・クレア/エミール・ポレオ/フィリップ・リーヴァ―/セルマ・ヴァズ・ディアス/キャサリン・レイシー/ジョセフィン・ウィルソン
 『暗殺者の家』,『三十九夜』とともに,ヒッチコック監督のサスペンスの第一人者としての評価を決定づけた作品.ミステリー・タッチの前半から,荒唐無稽なスパイ・サスペンスへのストーリー展開は,いま観るとかなりムチャクチャな感じがしますが,これはこれで面白いのです.



17 岩窟の野獣
Jamaica Inn
★★★★
1939年 イギリス モノクロ 93 min(アメリカン・ヴァージョン)
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:シドニー・ギリアット/ジョーン・ハリソン
原作:ダフネ・デュ・モーリア
製作:チャールズ・ロートン/エーリッヒ・ボマー
撮影:ハリー・ストラドリング
CAST
チャールズ・ロートン/モーリン・オハラ/レスリー・バンクス/エムリン・ウィリアムス/ロバート・ニュートン/マリー・ネイ/ウイリー・ワトソン/ホーレス・ホッジス
 1934年の『暗殺者の家』から1938年の『バルカン超特急』までの6本の作品で『サスペンスの第一人者』としての地位を確立,アメリカに移住していたヒッチコック監督が,一旦イギリスに戻って最後に作った作品.この後再度アメリカに渡り映画製作を行うようになりました.前野6本に比べてサスペンス色が薄く目立たない作品ですが,プロデューサー兼任のチャールズ・ロートン氏の怪演もあって,かなり面白い映画に仕上がっています.『暗殺者の家』で主役を演じていたレスリー・バンクスさんが,ヒロインの叔父で海賊の首領を演じてます.

18 レベッカ
Rebecca
★★★★★
1939年 アメリカ モノクロ 130 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ロバート・E・シャーウッド/ジョーン・ハリソン
原案:フィリップ・マクドナルド/マイケル・ホーガン
原作:ダフネ・デュ・モーリエ
製作:デヴィッド・O・セルズニック
音楽:フランツ・ワックスマン
撮影:ジョージ・バーンズ
編集:W・ドン・ヘイズ
CAST
ローレンス・オリヴィエ/ジョーン・フォンテイン/ジョージ・サンダース/ジュディス・アンダーソン/グラディス・クーパー/ナイジェル・ブルース/レジナルド・デニー/C・オーブリー・スミス/メルヴィル・クーパー/フローレンス・ペイツ/レオナルド・キャリー/レオ・G・キャロル/エドワード・フィールディング/ラムスデン・ヘイア/フォレスター・ハーヴェイ/フィリップ・ウィンター
 ヒッチコック監督のアメリカ時代第1作目.全作品中最も高く評価された作品で,第13回アカデミー賞の最優秀作品賞と撮影賞を獲得しましたが,監督賞,主演女優賞(ジョーン・フォンテインさん),主演男優賞(ローレンス・オリビエさん),助演女優賞(ジュディス・アンダーソンさん)等9部門ではノミネートのみに終わっています.個人的にはジュディス・アンダーソンさんの強烈なキャラクターと演技が印象に残っていますが,この作品の真の主役は画面上には姿を現さない前妻レベッカですので,主演女優は存在しないことになります.レベッカの主治医を演じているレオ・G・キャロルさんはこの後ヒッチコック映画の常連さんとなります.

19 海外特派員
Foreign Correpondent
★★★★
1940年 アメリカ モノクロ 120 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:チャールズ・ベネット/ジョーン・ハリソン
製作:ウォルター・ウェンジャー
音楽:アルフレッド・ニューマン
撮影:ルドルフ・マテ
編集:オットー・ラヴァ―リング/ドロシー・スペンサー
CAST
ジョエル・マクリー/ラレイン・デイ/ハーバート・マーシャル/ジョージ・サンダース/アルバート・バッサーマン/ロバート・ベンチリー/ハリー・ダヴェンポート
 ハリウッドにおける第2作目.第二次世界大戦前のヨーロッパを舞台にしているので,サスペンスたっちの前半から後半の飛行機墜落における大スペクタクルまでの息をつかせないスリリングな展開は,ヒッチコック監督の円熟期を感じさせる傑作だと思います.前作『レベッカ』で主人公を陥れようとするレベッカの従妹で愛人を演じていたジョージ・サンダースさんが,今回は主人公を補佐する立場のやはりストーリーにおける重要な役柄を演じています.

20 スミス夫妻
Mr. & Mrs. Smith
★★★
1941年 アメリカ モノクロ 95 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ノーマン・クラスナー
製作総指揮:ハリー・E・エディグトン
音楽:ロイ・ウェッブ
撮影:ハリー・ストラドリング
CAST
キャロル・ロンバード/ロバート・モンゴメリー/ジーン・レイモンド/ジャック・カーソン/フィリップ・メリヴェイル/ルシール・ワトソン/ベティ・カンプソン
 ハリウッドにおける第3作目で,久々のコメディ映画.正直なところ,この時期にはすでに『サスペンスの第一人者』の地位を確立してしまってますので,他のものをそんなに上手に作ったところで見劣りしてしまうし,正当な評価を得ることは難しいのではと思ってしまいます.

21 断崖
Suspicion
★★★★★
1941年 アメリカ モノクロ 100 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:サムソン・ラファエルソン/アルマ・レヴィル/ジョーン・ハリソン
原作:フランシス・アイルズ
製作総指揮:デヴィッド・O・セルズニック
音楽:フランツ・ワックスマン
撮影:ハリー・ストラドリング
編集:ウィリアム・ハミルトン
CAST
ケーリー・グラント/ジョーン・フォンテイン/サー・セドリック・ハードウィック/ナイジェル・ブルース/デイム・メイ・ウィッティ/イザベル・ジーンズ/ヘザー・エンジェル/オリオール・リイ/レジナルド・シェフィールド/レオ・G・キャロル
 ハリウッドにおける第4作目で,本格的なサスペンス作.『レベッカ』で先妻レベッカの亡霊におびえる後妻を演じていたジョーン・フォンテインさんが,今回は夫(ケーリー・グラントさん)に対する猜疑心に苛まれる妻を好演しています.また,『レベッカ』でレベッカの主治医を演じていたレオ・G・キャロルさんは,今回は夫の従兄で雇い主でした.光るミルクが怖いです.

22 白い恐怖
Spellbound
★★★★
1945年 アメリカ モノクロ 111 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ベン・ヘクト/アンガス・マクファイル
原作:フランシス・ビーディング
製作:デヴィッド・O・セルズニック
音楽:ミクロス・ローザ
撮影:ジョージ・バーンズ
編集:ハル・C・カーン
CAST
イングリッド・バーグマン/グレゴリー・ペック/マイケル・チェーホフ/レオ・G・キャロル/ロンダ・フレミング
 ヒッチコック監督いよいよ本領発揮のサイコ・サスペンスですが,記憶喪失と精神分析をモチーフにしたそのものズバリの直球勝負でありながら,幻覚シーンにサルヴァドール・ダリ氏を起用するなど凝りに凝った作風の映画です.ヒロインの恩師を演じているマイケル・チェーホフさんはロシアの名優・演出家で,現実でもイングリッド・バーグマンさんやグレゴリー・ペックさんに演技指導をしていた,いわば恩師だった方です.『レベッカ』,『断崖』でわりと重要な役を演じていたレオ・G・キャロルさんは,今回も事件のカギを握る人物を演じています.

23 汚名
Notorius
★★★
1946年 アメリカ モノクロ 101 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ベン・ヘクト
製作:デヴィッド・O・セルズニック
音楽:ロイ・ウェッブ
撮影:テッド・ラズラフ
編集:スローン・ウォース
CAST
ケーリー・グラント/イングリッド・バーグマン/クロード・レインズ/ルイス・カルハーン/レオポルディーネ・コンスタンチン/レインホールド・シュンツェル/アレクシス・ミノティス
 『断崖』のケーリー・グラントさん+『白い恐怖』のイングリッド・バーグマンさんによる,スパイ・サスペンス+ラブ・ロマンス.前半はストーリーの進行が少し冗長でわかりにくい部分もあるのですが,後半の救出劇のスリリングな展開はヒッチコック監督ならではだと思います.

24 私は告白する.
I Confess
★★★★
1953年 アメリカ モノクロ 95 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ウィリアム・アーチボルド/ジョージ・タボリ
原作:ポール・アンセルム
製作:アルフレッド・ヒッチコック/シドニー・バーンスタイン
音楽:ディミトリ・ティオムキン
撮影:ロバート・バークス
編集:ルディ・フェア
CAST
モンゴメリー・クリフト/アン・バクスター/カール・マルデン/ブライアン・エイハーン/O・E・ハッセ/ロジャー・ダン/ドリー・ハス/チャールズ・アンドレ/ジル・ペルティエ/オヴィラ・レガーレ
 聖職者の守秘義務と不倫というミステリーにはうってつけのモチーフを正面から取り上げた傑作です.冒頭から犯人が明らかにされる倒叙形式ですが,犯人を知っていながら神父であるが故に容疑者として裁かれるスリリングな裁判のシーンと,その後のホテルを舞台に繰り広げられるラストシーンに,ヒッチコック監督ならではの名演出が冴えわたっています.

25 北北西に進路を取れ
North by Northwest
★★★★★
1959年 アメリカ カラー 136 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アーネスト・レーマン
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ロバート・バークス
編集:ジョージ・トマシー二
CAST
ケーリー・グラント/エヴァ・マリー・セイント/ジャームズ・メイソン/ジェシー・ロイス・ランディス/レオ・G・キャロル/エドワード・ビンズ/ジョセフィン・ハッチンソン/フィリップ・オバー/マーティン・ランド―/アダム・ウィリアムズ/ロバート・エレンシュタイン
 ヒッチコック監督お得意の『巻き込まれ型』スパイ・サスペンスの傑作.2時間以上にわたる長尺でありながら,主人公が誘拐される冒頭から有名なラシュモア山モニュメント上でのクライマックスまでスリリングなシーンの連続で,全く時間を感じさせないストーリー展開です.主人公ソーンヒル役は『めまい』のジェームズ・スチュワートさんが熱望していたらしいですが,『断崖』,『汚名』に続いてケーリー・グラントさんが演じています.ジェームズ・メイソンさんが敵側スパイのボス,その配下にTVシリーズ『スパイ大作戦』のマーティン・ランド―さん,常連のレオ・G・キャロルさんが政府側のスパイのリーダー『教授』,その配下でヒロインのイヴ・ケンドールにエヴァ・マリー・セイントさんと豪華なキャスティングですが,でらちゃん個人的にはソーンヒルの母親役のジェシー・ロイス・ランディスさんがお気に入りなのです.



26 逃走迷路
SABOTEUR
★★★
1942年 アメリカ モノクロ 109 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ピーター・ヴィエルテル/ジョーン・ハリソン/ドロシー・パーカー
製作:フランク・ロイド/ジャック・スカーポール
音楽:フランク・スキナー
撮影:ジョセフ・A・バレンタイン
編集:オットー・ルードヴィヒ
CAST
プリシラ・レイン/ロバート・カミングス/オットー・クルーガー/アラン・バクスター/クレム・ベヴァンス/ノーマン・ロイド/アルマ・クルーガー/ヴォーン・グレイザー/ドロシー・ピーターソン/イアン・ウルフ/フランシス・カーソン/マレイ・アルパー/キャサリン・アダムス/ペドロ・デ・コルドバ/ビリー・カーティス/マリー・ル・ド―/アニタ・ポルスター/ジャン・ローマ―/リン・ローマ―
 ストーリー前半,主人公(ロバート・カミングスさん)が無実の罪を着せられ逃亡を続けている間はスリリングで話も分かりやすいのですが,逆に犯人側に潜伏してからはちょっとわかりにくかったのです.やはりスパイ・サスペンスってちょっと苦手かも.有名な自由の女神像におけるラストシーンも何が何だかわからないうちに終わってしまいました.主人公とヒロイン(プリシラ・レインさん)がサーカスの一団にかくまってもらうシーンが印象に残っています.

27 疑惑の影
SHADOW OF A DOUBT
★★★★
1943年 アメリカ モノクロ 108 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ソーントン・ワイルダー/アルマ・レヴィル/サリー・ベンソン
原作:ゴードン・マクドネル
製作:ジャック・H・スカーポール
音楽:ディミトリ・ティオムキン/チャールズ・プレヴィン
撮影:ジョセフ・バレンタイン
編集:ミルトン・カルース
CAST
テレサ・ライト/ジョゼフ・コットン/マクドナルド・ケリー/ヘンリー・トラヴァース/パトリシア・コリンジ/ヒューム・クローニン/ウォーレス・フォード/エドナ・メイ・ウォナコット/チャールズ・ベイツ
 未亡人連続殺人事件の容疑者の叔父と,彼に対し慕いながらも疑惑を持つ姪の心理的葛藤を描いた秀作.だんだんその疑惑が露わになってラストの列車における対決とつながっていくわけですが,そこに至るまでの家族やその友人,図書館職員,警官,酒場に勤める旧友といった人たちとの交流シーンに,ヒロインの心理状態の移り変わりが見事に表現されていると思いました.叔父さんの正体について最後まで謎が残っていたのも良かったです.

28 ロープ
ROPE
★★★★
1948年 アメリカ カラー 80 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アーサー・ローレンツ/ヒューム・クローニン
原作:パトリック・ハミルトン
製作:アルフレッド・ヒッチコック/シドニー・L・バーンスタイン
音楽:レオ・F・フォーブスタイン
撮影:ジョゼフ・ヴァレンタイン/ウィリアム・H・ジグラー
編集:ウィリアム・H・ジグラー
CAST
ジェームズ・スチュワート/ジョン・ドール/ファーリー・グレンジャー/サー・セドウィック・ハードウィック/コンスタンス・コリア―/ダグラス・ディック/イディス・エヴァンソン/ディック・ホーガン/ジョーン・チャンドラー
 ヒッチコック監督初のカラー作品.倒叙ミステリーの傑作.二人の青年によるニーチェの超人思想に触発された動機なき殺人と,パーティに招かれた恩師の教授によってそれが発覚してしまうまでがほとんど密室劇の形で描かれていくわけですが,もともとはパトリック・ハミルトンによる舞台劇の映画化で,さらには1924年に実際に起きた誘拐殺人事件を元にしている作品らしいです.ストーリーそのものもスリリングなのですが,2人の青年の間にホモセクシュアルの関係が覗われ,実際に演しているジョン・ドールさんとファーリー・グレンジャーさんは,実生活でもそれぞれゲイ,バイセクシュアルだったらしいです.教授役のジェームズ・スチュワートさんはこれ以降,ヒッチコック監督の多くの名作の常連俳優さんとなりました.

29 裏窓
REAR WINDOW
★★★★
1954年 アメリカ カラー 112 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョン・マイケル・ヘルズ
原作:ウィリアム・アイリッシュ
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:フランツ・ワックスマン
撮影:ロバート・バークス
編集:ジョージ・タマシーニ
CAST
ジェームズ・ステュワート/グレース・ケリー/ウェンデル・コーリイ/テルマ・リッター/レイモンド・バー/ジュディス・エブリン/ロス・バグダッサリアン/ジョージヌ・ダーシー/サラ・バーナー/フランク・キャディ/ジェスリン・ファックス/ランド・ハーバー/アイリーン・ウォンストン/ハビス・ダベンポート
 ヒッチコック・サスペンスの最高傑作とも言える作品ですが,殺されてしまう犬が可哀そうなので★ひとつマイナスしました.グレース・ケリーさんは流石に綺麗です.

30 ハリーの災難
THE TROUBLE WITH HARRY
★★★
1955年 アメリカ カラー 99 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョン・マイケル・ヘルズ
原作:ジャック・トレヴァ―・ストーリー
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ロバート・バークス
編集:アルマ・マクロリー
CAST
エドマンド・グウェン/ジョン・フォーサイス/ミルドレッド・ナトウィック/ミルドレッド・ダンノック/シェリー・メイザース/ロイヤル・ダノ/パーカー・フェンネリー/バリー・マコラム/ドワイト・マーフィールド/シャーリー・マクレーン
 この時期のヒッチコック監督作品の中では珍しいブラック・コメディ.面白いのですが,やはりサスペンスの巨匠ならではの他の作品群と比べると,印象に残らない作品であるのは仕方のないことかもしれません.シャーリー・マクレーンさんのデビュー作で,かわいいです.

31 知りすぎていた男
THE MAN WHO KNEW TOO MUCH
★★★★
1955年 アメリカ カラー 120 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョン・マイケル・ヘルズ/アンガス・マクファイル
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ロバート・パークス
編集:ジョージ・トマシーニ
CAST
ジェームズ・ステュアート/ドリス・デイ/ブレンダ・デン・バンジー/バーナード・マイルズ/ラルフ・トルーマン/ダニエル・ジュラン/モーゲンス・ヴィ―ス/アラン・モウブレイ/ヒラリー・ブルック/クリストファー・オルセン/レジ―・ナルダー/リチャード・ワティス/ノエル・ウェルマン/アリックス・タルトン/イヴ・ブレインビル/キャロリン・ジョーンズ
 1934年の作品『暗殺者の家』(11)のヒッチコック監督自身によるリメイク.自作のリメイクって珍しいと思うのですが,事件の発端が起きる場所や誘拐される子供の設定等,かなり違っているところが多いです,でも何といっても,こちらのラストは傑作だったと思います.

32 サイコ
PSYCHO
★★★★★
1960年 アメリカ カラー 109 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジョセフ・ステファノ
原作:ロバート・ブロック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ジョン・L・ラッセル
編集:ジョージ・トマシーニ
CAST
アンソニー・パーキンス/ヴェラ・マイルズ/ジョン・ギャヴィン/マーティン・バルサム/ジョン・マッキンタイア/サイモン・オークランド/ヴォーン・テイラー/フランク・アルバートソン/ルーリン・タトル/パトリシア・ヒッチコック/ジョン・アンダーソン/モート・ミルズ/ジャネット・リー
 後にブームとなった一連のホラー映画の原点ともいうべき作品で,ヒッチコック監督の最高傑作でもあると思います.そして,この映画が成功した最大の要因はあえてモノクロで撮ったことで,ストーリーのおどろおどろしさを見事に増幅しています,主演のアンソニー・パーキンスさんは後に AIDS の合併症で亡くなってしまいましたが,この映画における演技の印象が強烈すぎたため,他の役柄に個性を生かしきれず気の毒な俳優さんでした.劇中のジャネット・リーさんとヴェラ・マイルズさんとの関係について翻訳によって姉妹の地位が逆転してしまっていますが,実際の年齢はジャネット・リーさんの方が2歳上なので,こちらがお姉さんと見るのが正しい?と思われます. 



33 めまい
VERTIGO
★★★★★
1958年 アメリカ カラー 128 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アレック・コペル/サミュエル・テイラー
原作:ポワロ=ナルスジャック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ロバート・バークス
編集:ジョージ・トマシーニ
CAST
ジェームズ・ステュアート/キム・ノヴァク/バーバラ・ベル・ゲデス/トム・ヘルモア/ヘンリー・ジョーンズ/レイモンド・ベイリー/エレン・コービー/コンスタンティン・シェイン/リー・パトリック
 ヒッチコック監督・ジェームズ・スチュワート主演の4作品の中では,この作品が一番好きです.でらちゃんも実は高所恐怖症なので,これが狂気と紙一重の関係にあることがなんとなく理解できるのです.ジェームズ・スチュワートさんってあまり演技の巧くない,失礼ながらどちらかといえば大根さんだと思うのですが,この作品ではだんだん狂気に陥っていく主人公を見事に演じています.とくにストーリー後半,ヒロインのキム・ノヴァクさんに対してヒッチコック監督称するところの『屍姦』を行っていく主人公と,それに翻弄されていくヒロインの心理描写は見事だったと思います.但し,一部使用されているアニメーションやフィルム・コラージュ等は現在観るとちょっと稚拙な感じがしていただけませんま,これは仕方ないです.皮肉の効いたラストも秀逸だったと思います.

34
THE BIRDS
★★★★★
1963年 アメリカ カラー 119 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:エヴァン・ハンター
原作:ダフネ・デュ・モーリエ
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音響コンサルタント:バーナード・ハーマン
電子音制作:レミ・ガスマン&オスカー・ザラ
撮影:ロバート・バークス
編集:ジョージ・トマシーニ
CAST
ロッド・テイラー/ジェシカ・タンディ/スザンヌ・プレシェット/ティッピ・ヘドレン/ヴェロニカ・カートライト/エセル・グリフィス/チャールズ・マッグロー/ルーズ・マクデヴィット/ロニー・チャップマン/ジョー・マンデル/ドゥードゥルス・ウィーヴァ―/マルコム・アターバリー/ジョン・マクガヴァン/カール・スウェンソン/リチャード・ディーコン/エリザベス・ウィルソン/ウィリアム・クイン/ドリーン・ラング
 こちらはやはり後にブームとなった生物パニック映画の原点ともいうべき作品で,未だにこれを超える作品は出ていないし,これからも出ることはないと思われる傑作です.人類の自然破壊に対する『自然の怒り』を暗喩したこの映画の主題は50余年を過ぎた現在でも強烈な印象を与え,古さを感じさせない内容だと思います.スクリーンに登場する鳥のほとんどは本物だということですが,その大群が襲ってくるシーンはどうやって撮ったのかいまだに不思議です.観ていて緊張する迫力的なシーンの連続ですが,ヒロインがプレゼントしたラブバードを連れて一行が自動車で避難していくシーンに言いようのない安心感を与えてくれるラスト・シーンも秀逸だったと思います.

35 マーニー
MARNIE
★★★★
1964年 アメリカ カラー 130 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ジェイ・プレッソン・アレン
原作:ウィンストン・グレアム
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:バーナード・ハーマン
撮影:ロバート・バークス
編集:ジョージ・トマシーニ
CAST
ティッピ・ヘドレン/ショーン・コネリー/ダイアン・ベイカー/マーティン・ガベル/ルイーズ・ラサム/ボブ・スウィーニー/アラン・ネイビア/マリエット・ハートレー/ブルース・ダーン/メグ・ワイリー
 幼少時のトラウマから盗癖と男性恐怖症に陥った女性マーニー(ティッピ・ヘドレンさん)とそれを救おうとする夫(ショーン・コネリーさん)のラブ・ロマンスの要素を持ったミステリー・サスペンス.前作『鳥』で主演に抜擢されたティッピ・ヘドレンさんにヒッチコック監督はかなり入れ込んでいたらしく,この作品ではトップ・クレジットの待遇を与えていますが,でらちゃん個人としてはそれほど魅力的で優れた女優さんとは思えなくて,前作ではスザンヌ・プレシェットさん,この作品ではダイアン・ベイカーさんの方に存在感を感じていました.むしろショーン・コネリーさんに関しては,昔から『007』シリーズ以外の作品の方が好きなのですが,この作品でも魅力を最大限に発揮していると思います.あと,回想シーンのみに登場するブルース・ダーンさん,作品のテーマである『女性犯罪者と性的異常』の原因となるトラウマとなる重要な役柄なのですが,この手のキャラクターを演じさせたら最高の俳優さんだと思います.

36 引き裂かれたカーテン
TORN CARTAIN
★★★
1966年 アメリカ カラー 128 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ブライアン・ムーア
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:ジョン・アディソン
撮影:ジョン・F・ホーレン
編集:バッド・ホフマン
CAST
ポール・ニューマン/ジュリー・アンドリュース/リラ・ケドロヴァ/ハンスイェルク・フェルミ―/タマラ・トゥマノワ/ヴォルフガング・キーリング/ルドウィヒ・ドナート/ギュンター・シュトラック/デヴィッド・オパトッシュ/ギゼラ・フィッシャー/モート・ミルズ/キャロリン・コンウェル/アーサー・グールド=ポーター/グロリア・ゴルヴィン
 1950年代に最盛期を迎えていたヒッチコック監督が,前2作で主演を演じたティッピ・ヘドレンさんに3度目の起用をオファーしたものの断られ,またこの作品の内容をめぐって音楽担当のバーナード・ハーマン氏と対立,降板に至ったこともあって,スランプに陥ってしまったといういわくつきの作品.内容的には久々のスパイ・サスペンス路線で,ミステリー・タッチの前半とスリリングな脱出劇の後半ともに予想していたよりも解り易く面白く観ることができましたが,ポール・ニューマンさん,ジュリー・アンドリュースさんともに心なしか少し精彩に欠けていたような気がしました.それよりも3番目にクレジットされているリラ・ケドロヴァさん,1シーンのみの出演ですがものすごい存在感でした.

37 トパーズ
TOPAZ
★★★
1969年 アメリカ カラー 126 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:サミュエル・タイラー
原作:レオン・ユリス
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:モーリス・ジャール
撮影:ジャック・ヒルデヤード
編集:ウィリアム・H・ジーグラー
CAST
フレデリック・スタフォード/ダニー・ロバン/ジョン・ヴァーノン/カリン・ドール/ミシェル・ピコリ/フィリップ・ノワレ/クロード・ジャド/ミシェル・シュボール/ジョン・フォーサイス
 この映画,中学生の時にTVで観たのが最初だったのですが,さっぱりストーリーの展開がわかりませんでした.ヒッチコック監督お得意のスパイ・サスペンスなのですが,アメリカ・フランス・ソ連・キューバの4か国が入り乱れて,その上それぞれに複雑な人間関係があったりするので,観終わった後一体何だったんだろうというのが正直な感想でした.やっぱりスパイの出てくる話って難しくて嫌いです.最近 DVD で久しぶりに観て,やっとストーリーの筋がつかめたのと,フランスの名優お二人,ミシェル・ピコりさんとフィリップ・ノワレさんの渋い演技を堪能することができました.

38 フレンジー
FRENZY
★★★★★
1972年 イギリス・アメリカ カラー 116 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アンソニー・シェーファー
原作:アーサー・ラ・バーン
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:ロン・グッドウィン
撮影:ギル・テイラー
編集:ジョン・シンプソン
CAST
ジョン・フィンチ/アレック・マッコーエン/バリー・フォスター/ビリー・ホワイトロー/アンナ・マッセイ/バーバラ・リー・ハント/バーナード・クリビンス/ヴィヴィアン・マーチャント/マイケル・ベイツ/ジーン・マーシュ/クライヴ・スウィフト/ジョン・ボクサー/マッジ・ライアン/ジョージ・トービー/エルシー・ランドルフ/ジミー・ガードナー/ジェラルド・シム/ノエル・ジョンソン
 不作の60年代を脱して70年代に入り,久しぶりに故郷イギリスを舞台に撮られた,『ヒッチコック復活』との好評を得た作品.私にとっては中学に入った年,初めて東京のロードショー館で観た映画で思い入れが深いのですが,前作とは対照的に非常にわかりやすい倒叙ミステリーで,ユーモアのセンスにも満ち溢れたヒッチコック監督ならではのシニカルなある意味ブラック・コメディ的な要素も持った傑作だと思います.俳優陣の中では,真犯人役のバリー・フォスターさんの変態ぶりと,ヴィヴィアン・マーチャントさんのとぼけた味が絶妙でした.

39 ファミリー・プロット
FAMILY PLOT
★★★★★
1976年 アメリカ カラー 121 min
STAFF
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アーネスト・レーマン
原作:ヴィクター・カニング
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:ジョン・ウィリアムス
撮影:レナード・J・サウス
編集:J・テリー・ウィリアムズ
CAST
バーバラ・ハリス/ブルース・ダーン/バーバラ・ハリス/ウィリアム・ディヴェイン/エド・ロータ―/キャスリーン・ネスビット/キャサリン・ヘルモンド/エディス・アトウォーター/ウィリアム・プリンス/ニコラス・コラサント/マージュ・レドモンド/チャールズ・タイナ―
 ヒッチコック監督の遺作にして,個人的には最高傑作だと思います.とにかく面白い映画だと思います.主演のお二人(ブルース・ダーンさん・バーバラ・ハリスさん)をアル・パチーノさん・ゴールデイ・ホーンさん,敵役のお二人(ウィエリアム・ディヴェインさん・カレン・ブラックさん)をバート・レイノルズさん・フェイ・ダナウェイさんの起用もそれぞれ検討されていたとのことで,そちらのキャストで作られていたらそちらも観てみたい気がしますが,この作品でのブルース・ダーンさんとバーバラ・ハリスさんのコンビネーションは最高だったと思います.ところで,劇中でブルース・ダーンさんが弁護士を騙るときに使う偽名が『フランク・マクブライド』で,これは同じ頃のTVシリーズ『華麗な探偵ピート&マック』でエディ・アルバートさんが扮していた元刑事の老探偵の名前と同じなんですが,これは偶然? それともパロディ?