Stanley Kubrick




1 ロリータ
Lolita
★★★★
1962年 イギリス/アメリカ モノクロ 137 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:ウラジーミル・ナポコフ
原作:ウラジーミル・ナポコフ
制作:ジェームズ・B・ハリス
音楽:ネルソン・リドル/ボブ・ハリス
撮影:オズワルド・ハリス
編集:アンソニー・ハーヴェイ
CAST
ジェームズ・メイソン/スー・リオン/シェリー・ウィンタース/ピーター・セラーズ/マリアン・ストーン/ロイス・マクスウェル
 亡命したロシア人作家ウラジーミル・ナボコフさんの『ロリコン』の語源としてあまりに有名なベストセラー小説の映画化.脚本には原作者の名前がクレジットされていますが,あまりに長すぎたのでかなり割愛されほとんどキューブリック監督のオリジナル脚本だったらしいです.長い間観たいと思っていた作品で今回 DVD でやっと観ることができたのですが,期待があまりに大きすぎたためかちょっと残念な感じだったかもしれません.当時のコンプライアンス上の問題で性描写がほとんどなかったことと.ロリータ役のスー・リオンさんがそれほど蠱惑的でも魅力的でもないフツーの女優さんだったことがその原因だと思われます.それよりもどちらかというと固い役が多いイメージのジェームズ・メイソンさんの変態オヤジと,シェリー・ウィンタースさんのエキセントリックなアブナイ母親役の演技はお見事でした.

2 博士の異常な愛情
または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
Dr. Strangelove
Or: How I Learned To Stop Worrying And Love The Bomb
★★★
1964年 イギリス/アメリカ モノクロ 93 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/ピーター・ジョージ/テリー・サザーン
原作:ピーター・ジョージ 『破滅への二時間』
制作:スタンリー・キューブリック/ヴィクター・リンドン
音楽:ローリー・ジョンソン
撮影:ギルバート・テイラー
編集:アンソニー・ハーヴェイ
CAST
ピーター・セラーズ/ジョージ・C・スコット/スターリング・ヘイドン/キーナン・ウィン/スリム・ピケンズ/ピーター・ブル/ジェームズ・アール・ジョーンズ/トレイシー・リード/ジャック・クレリー/フランク・ベリー/グレン・ベック/シェイン・リマ―/ポール・タマリン/ゴードン・タナ―
 この作品も今回 DVD で初めて観ることができました.キャーブリック監督のいわゆる『SF 三部作』の第一作目で,かつこの監督の代表作のひとつとしてやたらと評価の高い作品ですが,戦争映画って苦手なため,ストーリーそのものが難解であまりよく理解できませんでした.『ロリータ』では脇役ながらちょっと常識はずれな作家役で印象に残る演技を見せてくれたピーター・セラーズさんが,今回は1人4役に挑戦,結果として異なった3つのキャラクターを見事に演じ分けています.その結果,現実として全ての戦争は狂気の産物に他ならないことを立証している,ブラック・コメディとしてより反戦映画として評価されるべき作品だと思います.但し,登場人物の名前を『博士の以上な愛情』と訳してしまった日本語タイトルはダメダメで,配給会社による昔からの悪習の代表的な例だと思います.

3 2001年宇宙の旅
2001: a space odyssey
★★★★★
1971年 イギリス/アメリカ カラー 142 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/アーサー・C・クラーク
原作:アーサー・C・クラーク
制作:スタンリー・キューブリック
撮影:ジェフリー・アンスワース/ジョン・オルコット
編集:レイ・ラヴジョイ
CAST
キア・デュリア/ゲイリー・ロックウッド/ウィリアム・シルベスター/レナード・ロシター/ロバート・ビーティ/ダグラス・レイン/ダニエル・リクター/マーガレット・タイザック/ショーン・サリヴァン/フランク・ミラー/エド・ビショップ/アラン・ギフォード/アン・ギリス/ケヴィン・スコット(ノンクレジット)/ビビアン・キューブリック(ノンクレジット)/ビル・ウェストン(ノンクレジット)
 『宇宙戦艦ヤマト』,『未知との遭遇』,『スター・ウォーズ』といった一連の SF 映画のヒットを受けて,大学在学中の1980年頃リバイバル上映された際にすぐに観に行きました.その後 TV 放映された際もしっかり観ていて,今回 DVD を購入してまたはまっているのです.キューブリック監督の代表作にして, SF 映画の最高峰と呼べる傑作だと思います.何と言ってもコンピュータ HAL 9000 の反逆(「歌を歌ってあげよう」)と宇宙空間に浮かぶ胎児(「次に何をしようか?」)の印象は強烈で,21世紀現在の世界を予見していたようなストーリー展開には感心させられました..

4 時計じかけのオレンジ
A Clockwork Orange
★★★★★
1971年 イギリス/アメリカ カラー 137 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
制作:スタンリー・キューブリック
音楽:ウォルター・カーロス
撮影:ジョン・オルコット
編集:ビル・バトラー
CAST
マルコム・マクダウェル/パトリック・マギー/マイケル・ベイツ/ウォーレン・クラーク/ジョン・クライヴ/エイドリアン・コリ/カール・デュ―リング/ポール・ファレル/クライブ・フランシス/マイケル・ゴヴァー/ミリアム・カーリン/ジェームズ・マーカス/オーブリー・モリス/ゴッドフリー・クイグリー/シーラ・レイナー/マッジ・ライアン/ジョン・サヴィデント/アンソニー・シャープ/フィリップ・ストーン/ポーリーン・テイラー/マーガレット・タイザック/スティーヴン・バーコフ/リンゼイ・キャンベル/マイケル・ターン/デヴィッド・プラウズ/バリー・コックソン/リチャード・コンノート
 個人的に一番好きな映画監督さんはスタンリー・キューブリックさんと実相寺昭雄さんなのですが,そのキューブリック監督作品の中で一番凄いと思うのが前作の『2001年宇宙の旅』(3),そして一番好きなのがこの作品です.つまり現時点で最も好きな映像作品ということになります.しかしながらこの作品も『イージー☆ライダー』同様に封切りの時には見逃してしまっていて,原作小説は読んでいたものの,初めて観ることができたのは大学在学中のリバイバル公開の時で,新宿の映画館で観ました.何度観てもあきない映画なので,ソフト化されてからもビデオ, LD, DVD の全てを入手して繰り返し観ています.今回久しぶりに DVD のノーカット版を観たのですが,137分の長尺を全く眼をそらさず,画面に観入ってしまいました.全く無駄なカットが全く存在しない最強の映像作品だと思っています.『スター・ウォーズ』シリーズのダースベイダー役のデヴィッド・プラウズさんが作家宅のマッチョ,フランシス役で顔出し出演しています.

5 バリー・リンドン
Barry Lyndon
★★★
1975年 イギリス/アメリカ カラー 185 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック
原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー
制作:スタンリー・キューブリック
製作総指揮:ヤン・ハーラン
音楽レナード・ローゼンマン
撮影:ジョン・オルコット
編集:トニー・ローソン
CAST
ライアン・オニール/マリサ・ベレンソン/ゲイ・ハミルトン/レオナルド・ロッシーター/アーサー・オサリヴァン/ゴッドフリー・クイグリー/ハーディー・クリューガー/パトリック・マギー/フランク・ミドルマス/レオン・ヴィタリ/ドミニク・サヴェージ/デイビット・モーリー/マーレイ・メルヴィン/マリー・キーン/マイケル・ホーダーン
 キューブリック監督が『SF 三部作』から 180°転換して撮った3時間強に及ぶサッカレーさん原作の長編歴史映画.流石に面白く,二部構成ということもあって上映時間の長さを全く感じさせられませんでした.但し第一部を観ていて主人公に対する感情移入がだんだん芽生えてくると,その没落を描いた第二部は観ていて何か割り切れないものを感じてしまいました.当時のヨーロッパにおける各国ごとの社会制度や法制度がどうなっていたのかはわかりませんが,なんで決闘に勝った方が犯罪者にされたりされなかったりするのかしらね?

6 シャイニング
The Shining
★★★★
1980年 イギリス/アメリカ カラー 143 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/ダイアン・ジョンソン
制作:スタンリー・キューブリック
製作総指揮:ヤン・ハーラン
音楽:バルトーク・べーラ/クシシュトフ・ペンデレツキ/リゲティ・ジョルジュ/ウェンディ・カルロス/アル・ボウリ―
撮影:ジョン・オルコット
編集:レイ・ラヴジョイ
CAST
ジャック・ニコルソン/シェリー・デュヴァル/ダニー・ロイド/スキャットマン・クローザース/バリー・ネルソン/フィリップ・ストーン/ジョー・ターケル
 今度はホラーですが,確かに怖いです.特にジャック・ニコルソンさんの狂いっぷりと,シェリー・デュヴァルさんの恐怖におののく表情は絶品.但し,ストーリーが原作とかなり変更されていたり,編集の際にカットされてしまった部分もあったため,少々難解になってしまっており,特にジャック・ニコルソンさん演じる作家志望の男が実は重度のアルコール依存症に蝕まれているという設定が十分に生かされていなかったのは残念でした.それでもホラー映画としては最高の出来となっているのは,キューブリック監督の才能もさることながら,わからないということが実は一番恐ろしいということなのかしらね.

7 フルメタル・ジャケット
Full Metal Jacket
★★★
1987年 アメリカ/イギリス カラー 116 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/マイケル・ハー/グスタフ・ハスフォード
原作:グスタフ・ハスフォード
制作:スタンリー・キューブリック
製作総指揮:ヤン・ハーラン
音楽:アビゲール・ミード(ヴィヴィアン・キューブリック)
撮影:ダグラス・ミルサム
編集:マーティン・ハンター
CAST
マシュー・モディーン/アダム・ボールドウィン/ヴィンセント・ドノフリオ/R・リー・アーメイ/ドリアン・ヘアウッド/ケヴィン・メージャー・ハワード/アーリス・ハワード/エド・オーロス/ジョン・テリー/キアソン・ジェニキス/カーク・テイラー/ピーター・エドモンド/ジョン・スタフォード
 戦争映画って苦手なのですが,最後まで退屈しないで観ることができました.流石キューブリック監督作品です.個人的にはやはり訓練を描いた前半の方が,実戦を描いた後半よりおもしろく観ることができました.しかしながら,あまりにも下品なスラングが連発されるため放送コードにひっかかってしまい,吹替版の TV 放映が見送られたといういわくつきの作品でもあります.それにしても軍隊って最低,男の人ってや~ね.

8 アイズ・ワイド・シャット
A Clockwork Orange
★★★★
1999年 アメリカ/イギリス カラー 159 min
STAFF
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック/フレデリック・ラファエル
原作:アルトゥル/シュニッツラー
制作:スタンリー・キューブリック
製作総指揮:ヤン・ハーラン
音楽:ジョスリーン・プーク
撮影:ラリー・スミス
編集:ナイジェル・ゴルト
CAST
トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/シドニー・ポラック/マリー・リチャードソン/トッド・フィールド/マディソン・エジントン/ヴィネッサ・ショウ/アラン・カミング/ラデ・シェルベッジア/リーリー・ソビエスキー/フェイ・マスターソン/スキ・デュモン/レオン・ヴィタリ/トウゴ・イガワ
 遺作.この映画の試写会の5日後に,キューブリック監督は心臓発作で急死されました.キューブリック監督自身が「この作品が私の最高傑作だ」と語ったと言われる,『倦怠期の夫婦の嫉妬』をテーマとしたサイコロジカル・サスペンスですが,一方でキューブリックさんと親しかった『フルメタル.ジャケット』(7)でハートマン軍曹を演じたR・リー・アーメイさんによれば「クルーズがメチャクチャにした完全な失敗作だ」と語っていたともいわれており,どちらが正しいのかは謎のままとなっています.さてその作品ですが,それにしてもトム・クルーズさん扮する主人公の医者の行動が軽率すぎ,こんな軽薄な男が医者やってていいのか? そしてニコール・キッドマンさん扮する奥方はじめ,シドニー・ポラックさん(!)扮する大富豪からアラン・カミングさん扮するホテルのフロント係に至るまで,登場人物のほとんどが性的な問題を抱えたヘンな人たちばかりで観ていてとても楽しいのですが,極めつけはラデ・シェルベッジアさん扮する扮する貸衣装屋さんとリーリー・ソビエスキーさん扮するその娘ではじけまくってます.この父子キャラ,実は『ロリータ』(1)のセルフ・パロディではないのかしら?