Lily


DISCOGRAPHY (1972 - 1976)



1

ONION

1972

★★★★
 私が本格的に音楽を聴き始めた1972年という年の国内の音楽シーンは,洋モノではグラム・ロック,和モノではニュー・フォークと呼ばれたジャンルがブームとなっている中,このりりィさんを筆頭に,井上陽水(再デビュー),アリス,石川セリ,頭脳警察,猫,古井戸,なぎらけんいち,ケメ(佐藤公彦),山本コウタロー(ソロ・デビュー),谷山浩子,あがた森魚,バンバン,サディスティック・ミカ・バンド,チューリップ,荒井由実,ファニー・カンパニー,伊藤銀次,大塚たけし,五輪真弓,海援隊,丸山圭子,上田正樹,キャロル等のアーティストが次々とデビューを飾りました,当時,『明星』・『平凡』といった芸能雑誌や『ヤング・フォーク』・『ヤング・ギター』といった音楽雑誌でこれらのアーティストに関する情報を入手していたのですが,『ニュー・フォークの旗手たち』などと題された特集記事で紅一点として取り上げられていたのが,荒井・五輪・丸山さんたちよりちょっとデビューが早かったりりィさんで,どういうわけか多分仮名文字ネーミングのせいだと思われますがケメさんとセットで紹介されていたことが多かった記憶があります.というわけで,私にとって初めて知った女性アーティストだったわけですが,地味な作風だったこともあって,当時はあまり関心がありませんでした.その数年後,石川セリさんを始めとする女性シンガーのレコを買い集めるようになって,この方の一連のアルバムを入手したところ,今度はしっかりはまってしまいました.このデビュー・アルバムの中では,何といっても『ねつかれなくて』.この方独特のハスキー・ヴォイスに一番よく合ったダルな雰囲気を持った作品だと思います.

2

DULCIMER

1973

★★★★

 アルバム全体の持つ雰囲気・作風は前作の延長線上にあるような感じではありますが,個々の曲に関してはかなり作りこまれている感じで,これはアレンジャーの木田高介さんの功績大だったと思います.そして初期の代表曲『心が痛い』はやはり名曲だと思うのです.

3

Taeko

1974

★★★★
 当初,りりィさんが仲良しの研ナオコさんのために作ったもののボツとなり,本人が歌って大ヒットとなったという逸話を持つ名曲『私は泣いています』を収録.でも私自身はこの曲のヒットした頃ご本人の作品だとは思ってなくて,「また歌謡曲に迎合するアーティストがひとり増えた」と思ってしまいとても残念だったのですが,実は全くの誤解でした.

4

Lily Live

1974

★★★★★
 というわけで,ゲストに研ナオコさん,バックに木田高介さん率いる By-By Session Band を招いて製作されたライブ・アルバム.トップの『私はないています』から『ねつかれなくて』,『沖縄にて』を経て Bob Dylan 先生の "I Shall Be Released" に至る怒涛のオープニングのA面,そして『クイズの賞金』に始まり『心が痛い』でクライマックスを迎えるB面と,アナログ・ディスクの特性を最大限に生かした構成が見事な傑作ライブアルバム.そういえば昔のフォークのライブ・アルバムって2・3枚組の大作ではなくシングル・アルバムが多かったのですが,よしだたくろうさんの『オン・ステージ・ともだち』や,加川良さんの『やぁ!』,井上陽水さんの『陽水ライブ・もどり道』等,ライブならではの魅力を収録した名盤が多かったと思います.

5

LOVE LETTER

1975

★★★★

 このアルバムがリリースされた1975年という年は日本の音楽シーンにおけるひとつのターニング・ポイントで,1970年代初頭のニュー・フォーク・ブームが終わりをつげ,ニュー・ミュージックの抬頭と共に,歌謡曲とフォークとの境目があいまいとなり,ジャンルの崩壊が生じました.それと共に私自身の音楽嗜好も洋モノ中心に移行していったため,この方の作品に関してもこの後のものはほとんど聴いていません.フォーク・テイスト溢れる最後の作品です.

6

AUROILA

1976

★★★★

 アレンジャーに坂本龍一さんを迎え,これまでのフォーク・スタイルを脱却しようとした意欲作ですが,リリース当時は正当な評価を得られなかったようで,長い間 CD 化が見合されていた幻の名盤.このアルバムでのバック By-By Session Band のメンバーは坂本さん(Kbd),伊藤銀次さん(G),吉田健さん(B),上原裕さん(Ds),斉藤ノブさん(Perc).