有栖川 有栖

作家アリス・シリーズ 2(2003 - )

白い兎が逃げる
2003
光文社文庫
★★★★
 作家アリス・シリーズ.作者の好きな双児トリックの『不在の証明』,犯行の「意外な動機」をテーマにした『地下室の処刑』,作者によると「賞味期限のあるアイディア」がもととなっている『比類のない神々しいような瞬間』,ストーカーをからめた「見えにくい動機」と鉄道利用トリックの表題作『白い兎が逃げる』の中編4篇を収録.
 個人的には,鉄道トリックってあんまり好きじゃない(時刻表とか〜見るのめんどいんだもん)ので.表題作も良くできていて面白いとは思うのですが,それよりも,以前『暗い宿』の中の『異形の客』に登場したシャングリラ十字軍がらみで,サブ・キャラの森下刑事が活躍(?)する『地下室の処刑』が最高に面白かったりしました.解説は,辻真先氏
モロッコ水晶の謎
2005
講談社文庫
★★★★
 作家アリス・シリーズ.『国名シリーズ』第8弾で,表題作『モロッコ水晶の謎』,5人の作家による競作集『「ABC」殺人事件』に収録されていた『ABCキラー』,異色の誘拐殺人事件もの『助教授の身代金』の中編3編と,サブ・キャラ朝井小夜子が登場する掌編『推理合戦』の計4篇を収録.
 ある意味フーダニットの傑作といえる『助教授の身代金』の最後の火村のセリフにとどめをさされました.現在『助教授』って称号はないそ〜ですが….解説は,佳多山大地氏
乱鴉の島
2006
新潮文庫
★★★★
 作家アリス・シリーズ.「マレー鉄道の謎」同様,休暇中の火村&アリスが巻き込まれる連続殺人事件.学生アリス・シリーズで作者がお得意としていたクローズド・サークルに,ホリエモンをモデルにしたと思われるオタク社長やクローン技術等,現代的なエッセンスを取り入れた秀作だと思います.解説は,村上貴史氏.
妃は船を沈める
2008
光文社文庫
★★★★
 作家アリス・シリーズの第8長篇ですが,もとはと言えば作者が『はしがき』で書いている通り,一編の中編小説として書かれた前編『猿の左手』に,2年後に書かれた後日談ともいうべき後編『残酷な揺り籠』をまとめて一編の長篇としたもの.個人的には,前編におけるジェイコブスの名作『猿の手』に対する解釈論が興味深く感じられました.また,このタイトルはやはりかなりの冒険だと思います.解説は,西澤保彦氏.
火村英生に捧げる犯罪
2008
文春文庫
★★★
 作家アリス・シリーズ.『長い影』『鸚鵡返し』『あるいは四風荘殺人事件』『殺意と善意の顛末』『偽りのペア』『火村英生に捧げる犯罪』『殺風景な部屋』『雷雨の庭で』の計8篇を収録.
 個人的に楽しめたのは,『長い影』,『火村英生に捧げる犯罪』,『雷雨の庭で』の3篇でした.解説は,柄刀一氏
長い廊下がある家
2010
光文社文庫
★★★
 作家アリス・シリーズ.『長い廊下がある家』『雪と金婚式』『天空の眼』『ロジカル・デスゲーム』の4篇を収録.最初の3編に関してはこの作者にしては凡作であるような印象を受けていたのですが,最後の『ロジカル・デスゲーム』は,解説の杉江松恋氏もシリーズの短編ベスト3に入る作品と評価していますが,でらちゃんも同感です.確率論に関するこの理屈っぽさこそ,この作者の作品の醍醐味だと思います.
高原のフーダニット
2012
徳間文庫
★★★
 作家アリス・シリーズ.『オノコロ島ラプソディ』『高原のフーダニット』の中編2編と,ミニ・ミステリ10編から成る異色作『ミステリ夢十夜』を収録.残念ながら,やはりこの作者の作品としてはちょっと期待はずれの感じで,中編2編に関してはストーリーの展開に少し歯切れが悪い印象を受けてしまいましたし,『夢十夜』に関してはエピソードの出来不出来が激しく,すごく面白いものから「なんだこれ?」というものまでバラつきがあるような感じを受けました.