有栖川 有栖

その他の作品

マジックミラー
1990
講談社文庫
★★★
 『新本格派』の旗手である作者が,真正面から『アリバイ崩し』に取り組んだ佳作.作者自身の『あとがき』によると,メイン・トリックは大学時代に考えついていて,誰かに先を越されて使われないかと焦っていたとか(笑).第7章における推理作家・空地雅也のアリバイ講議も,作者のミステリに対する造詣(師とする鮎川哲也氏の他,アリバイに関しては笹沢左保氏を高く評価しているのは流石)が示されていて,興味深く読むことができました.解説は,鮎川哲也氏.
山伏地蔵坊の放浪
1996
創元推理文庫
★★★
 怪し気な山伏地蔵坊が自ら体験した事件をスナックの常連客たちに語るという形の連作短編集.『ローカル線とシンデレラ』・『仮装パーティの館』・『崖の教祖』・『毒の晩餐会』・『死ぬ時はひとり』・『割れたガラス窓』・『天馬博士の昇天』の7篇を収録.
 創元推理文庫ではその系列としていますが,いわゆる『安楽椅子探偵』っていうのとはちょっと違うと思いますぅ.
幻想運河
1996
講談社文庫
★★★
 この作品,はっきり言って評価するの難しいです.最初に読んだときは,アムステルダムを舞台に繰り広げられる幻想的な事件と,前後を挟む大阪での事件との結びつきに「これは凄い,傑作だ!」と思ったのですが,今回再読してみたところ,難解な描写のみが目立ち,「はたしてそれほどのモノでもないのでは....」と思ってしまいました.『有栖川裏ミステリ・ベスト1の傑作』なのだそうですが,傑作か駄作か評価の分れる作品だと思います.今度クスリでもやりながら読んでみようかしらん? 解説は,大村アトム氏.
ジュリエットの悲鳴
1998
角川文庫
★★★★
 1990〜98年に発表された,シリーズ・キャラクターの登場しないショート・ショートおよび短編12篇を収録した作品集.
 これを読めば『新本格派』の旗手として語られることの多い有栖川氏が,倒叙物,心理サスペンス,SF,ギャグ等,どんな作品でも書ける多才な作家であることがよ〜くわかります.個人的におススメなのは,『落とし穴』,『登竜門が多すぎる』,『ジュリエットの悲鳴』の3作ですね.
幽霊刑事
2000
講談社文庫
★★★★
 作者にしては珍しくSFですが,SFとしてだけでなく,本格推理としても,ラヴ・ロマンスとしても読みごたえのある作品です.ただ,主人公が巡査で巡査部長昇進試験を目指しており,死後二階級特進により警部補となるというくだり,警察官の階級は,巡査→巡査長→巡査部長→警部補なので,変です.後に「巡査長が大麻所持」という記述もありますので,これは単なるミスでしょう.
作家小説
2001
幻冬舎文庫
★★★
 作者曰く「ほとんど冗談めいた作品」,「気紛れだったのだろう」.『作家』をテーマにした,有栖川版『奇妙な味』の連作短編集.『書く機械』・『殺しにくるもの』・『締切二日前』・『奇骨先生』・『サイン会の憂鬱』・『作家漫才』・『書かないでくれます?』・『夢物語』の8編を収録.
 個人的に好きなのは『殺しにくるもの』,笑えたのは『締切二日前』,あと単なる『夢オチ』かと思いきや最後の1行が光る『サイン会の憂鬱』.解説は,末國善己氏.
まほろ市の殺人 冬
―蜃気楼に手を振る
2002
祥伝社ノン・ポシェット
★★★
 『幻想都市の四季』として,『春』―倉知淳,『夏』―我孫子武丸,『秋』―麻耶雄嵩,の各氏と書き下ろされた競作の一.だからというわけでもないのでしょうが,有栖川氏の他の作品群と比べると,ストーリー・トリック共に少々精彩に欠けているよ〜な気がします.

虹果て村の秘密
2003
講談社文庫
★★★★★
 叢書〈かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド〉のために書かれた作者初のジュブナイル・ミステリー.でらちゃん,あまりジュブナイルって好きじゃないんですが,この作品は大人として文句なく楽しめました.ミステリとしての作品そのものもさることながら,登場人物を通してところどころに作者のミステリに対する愛情が感じられる記述があって,とても暖かい気持ちにさせられた不思議な作品です.解説は,青柳碧人氏.
壁抜け男の謎
2008
角川文庫
★★★
 1998〜2007年の作品を集めた,『ジュリエットの悲鳴』に続くノン・シリーズものの掌編・短編集.『ガラスの艦の殺人』『壁抜け男の謎』『下り「あさかぜ」』『キンダイチ先生の推理』『彼方にて』『ミタテサツジン』『天国と地獄』『ざっくばらん』『屈辱のかたち』『猛虎館の惨劇』『Cの妄想』『迷宮書房』『怪物画趣味』『ジージーとの日々』『震度四の秘密』『恋人』の計16篇を収録.
 『天国と地獄』,『屈辱のかたち』,『Cの妄想』といった掌編に作者の鋭い感性が感じられて好きです.解説は,倉知淳氏
赤い月,廃駅の上に
2009
角川文庫
★★★
 鉄道にまつわる怪奇小説による,作者によれば『鉄道怪談集』.『夢の国行き列車』『密林の奥へ』『テツの百物語』『貴婦人にハンカチを』『黒い車掌』『海原にて』『シグナルの宵』『最果ての鉄橋』『赤い月,廃駅の上に』『途中下車』の計10篇を収録.
 初のジャンルの作品集のせいか,この作者にしては珍しく,作品ごとの出来不出来の差が激しいような気がしてしまいました.好きなのは『夢の国行き列車』,『貴婦人にハンカチを』,『最果ての鉄橋』,『赤い月,廃駅の上に』,『途中下車』の5編です.解説は,小池滋氏
闇の喇叭
2010
講談社文庫
★★★
 女子高校生・空閑純(探偵ソラ)を主人公に探偵行為が禁止された近未来を描く新シリーズ第一作.慣れない SF に苦心している作者の姿が感じられますが,やはりどうしてもそこはかとなく違和感を感じてしまうのです.これからの展開に期待しましょ.