綾辻 行人

長編小説2(1992 - 2006)



黒猫館の殺人

1992

講談社文庫

★★★★★

 『館』シリーズ第6弾(第2期第1弾).記憶喪失の老人と,その手記に記載された『犯罪』をめぐって,『手記』と『現在』が交互に記述される構成の中,明らかにされる驚くべき真実.『館』に関するトリックのスケールの大きさは,シリーズ中でも群を抜いていると思いますし,また,『人形館』と並んで,綾辻氏らしさが際立つ傑作だと思います.未読の方のため,多くは書けませんが,「?」と思う記述があったら,それらは全て物語の伏線だと思って間違いないです.作者自身も『あとがき』の中で,「伏線だらけの小説」と書いてますし.... 解説は,法月輪太郎氏.

黄昏の囁き

1993

祥伝社ノン・ポシェット
講談社文庫

★★★

 『囁き』シリーズ第3弾.地名等が,この第3作において,初めて前2作とリンクしています.連続殺人,意外な真相は前2作と同じですが,やはり息切れか,少々弱い感じも.... 解説は,千街晶之氏(祥伝社ノン・ポシェット),円堂都司昭氏(講談社文庫).

殺人鬼 II ―逆襲篇―
殺人鬼 ― 逆襲篇

1993

新潮文庫
角川文庫

★★★★★

 超スプラッタ・ホラー第2弾.第1章から前作をはるかに上回る残虐な描写で,これが延々と続き,もうかんべんしてほしいって感じ.小説だから読んでいられるけど,映像だったら見てられないと思うよ,これ.... 作者は嬉々として描いてるけど,読者からして見ると,作者こそ『鬼』です.でも,ミステリとして読んだ場合,やはり1作目の方が良く出来ていたかなっ....て感じ.この人,本当に第3作も描くつもりなのだろうか? 解説は,東雅夫氏(新潮文庫),矢澤利弘氏(角川文庫).

鳴風荘事件―殺人方程式 II ―

1995

光文社文庫
講談社文庫

★★★★

 飛鳥井饗・叶の一卵性双生児と叶の妻・深雪が活躍するシリーズ第2弾.今回の話は,何故死体の髪が切られていたか? 前回ほど大がかりでは「ないけれど,物理トリックが鮮やかな秀作です.そして,冒頭で描かれる第1の殺人についての真相が,ラストで.... これ以上は書けません.ところで,このシリーズ,キャラクターが魅力的に描かれて」いますが,やはり笑えるのは深雪嬢の迷推理でしょう.解説は,貫井徳郎氏(光文社文庫),辻村深月氏(講談社文庫).



最後の記憶

2002

角川文庫

★★★

 2000〜2002年に雑誌『KADOKAWA ミステリ』に連載された長篇ホラー.連載を開始するにあたって,『スプラッタ&フーダニット系ホラー』,『幻想&叙情系ホラー』,『不条理&鬼畜系ホラー』の3案から,担当編集者が一番地味な『幻想&叙情系ホラー』を選択,作者自身も「あの時期の自分がどうしても書かねばならなかった小説だった,と思える」としてますが,その割には作者ならではの切れ味に少々かけているような感がしました.導入部・展開部の第 I 部,第 II 部はスリリングでわくわくしながら読めたのですが,謎が解明される第 III 部に入って,突如としてストーリーが消化不良を起こしてしまっているかのような感じがしてしまいました.月刊誌での連載,また大作『暗黒館の殺人』との並行執筆ってのはしんどかったのかも? 解説は,千野帽子氏.

暗黒館の殺人

2004

講談社文庫

★★★★

 シリーズ最長の超大作って聞いてたけど,こ〜〜〜んなに長いとは思いませんでした.文庫本(それも厚いの)4冊もあるんだよ.でも楽しく一気に読めちゃうのが,この人を始めとする『新本格派』作家のみなさんの凄いところであります.その理由として世代が同じということもあると思いますが,とにかく読みやすい.小説はやはり読みやすいことが大切だと思うよ.エンタテインメントなんだからさ.内容は,エラリー・クイーン大先生や乱歩先生も作品にした『シャム双生児』をはじめ,人魚伝説,吸血鬼伝説,隠れキリシタン,近親相姦,奇病難病,性格異常といった,ミステリ・マニアにとってはたまらないモチーフがてんこもり.しかしながら,ここでは詳しい事はかけませんが,何と言っても凄いのが『時間』に関するトリック.騙されて,そしてやがて,読者は『館』シリーズ全体を俯瞰することができるのです.

びっくり館の殺人

2006

講談社文庫

★★★

 一読してすぐに円谷プロ『怪奇大作戦』の『青い血の女』思い出しました.この作者 Della と同世代で円谷プロ作品の洗礼を受けて育っているので,間違いなく影響受けていると思います.人形には変態老人がよく似合う(笑).
 解説は,円堂都司昭氏.