小池 真理子


長編小説2 (1989 - 1997)



17 死者はまどろむ 1989 集英社文庫 ★★★★
 『墓地を見おろす家』に続いて書かれた長編モダン・ホラー.やはりこの手の作品にこそ,この作者の持ち味が最大限に生かされると思います.救いのないラストがすご〜くコワイです.解説は坂東眞砂子氏.
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無伴奏 1990 集英社文庫
新潮文庫
★★★
 ミステリーというより優れた青春小説として評価されるべき作品,60年代末〜70年代初頭の雰囲気はうまく表現されていると思います.解説は佐々木譲氏(集英社文庫),石田衣良氏(新潮文庫).
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柩の中の猫 1990 新潮文庫
集英社文庫
★★★
 猫と少女を中心にひき起こされる事件と悲劇を第三者の眼を通して描いた心理サスペンス.あまりにも悲劇的な真相が明らかにされるまでの,それぞれの登場人物の描写がなかなか... 解説は皆川博子氏(新潮文庫).集英社文庫版には,解説に代えて作者による『過ぎてきた道ー文庫版あとがき』が収録されてます.
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唐沢家の四本の百合 1991 中公文庫
徳間文庫
★★★
 すご〜く面白い小説だと思いますが,やはりどちらかというと純文学作品として評価されるべきか... ミステリーとして評価すると... 解説は郷原宏氏.
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懐かしい骨 1992 双葉文庫
双葉文庫(新装版)
★★★
 20数年前の母親の犯罪に対する,兄妹の推理と捜査? 素材は面白いのですが,最終的に「いったい何だったの?」と思わせてしまう,この作者には珍しく消化不良的な結末が少々残念でした.解説は山前譲氏.



26 夜ごとの闇の奥底で 1993 新潮文庫 ★★★★★
 ここのところしばらくミステリー離れというか,純文学指向に陥っていた作者が放つサイコ・サスペンスの傑作.主人公兄妹を始め正確欠陥・異常心理のオンパレードのよ〜な登場人物の面々の描写が見事です.そしてハラハラさせつつも静かに進行していくストーリーの展開とあっけない幕切れが見事だと思います.解説は吉野仁氏.
27 ナルキッソスの鏡 1993 集英社文庫 ★★★★
 猟奇殺人とトランスヴェスティズムを縦糸と横糸に使用して織り成すサイコ・サスペンスの傑作.殺人鬼の娘の正体が無気味です.女装倒錯者の青年があまりにもあっけなく殺されてしまうのには,肩すかしをくったような感じがして少し意外というか残念というか... 解説は香山二三郎氏.
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死に向かうアダージョ 1994 双葉文庫
双葉文庫(新装版)
★★★
 作者が『あとがき』の中で述べている通り,ミステリーの構成を取ってはいますが,作者が書きたかったテーマは別のところに存在しているような気がします.すでに単なるミステリーに飽き足らなくなっていたのでしょうか? この翌年に書かれた『恋』で直木賞を受賞する事を考えると...
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1995 双葉文庫 ★★★★★
 前言撤回,やはりこの方は超一流のミステリー作家だと思うし,解説の阿刀田高さんもお書きになっている通り,「小説はすべてミステリーである」と思います.結論,小池真理子さんこそ,私にとっては現時点で最高の小説家なのです.
 実は私ひねくれているもんで,直木賞受賞作であること,そして物語の背景が連合赤軍時代(そんな時代あるのか?)であることなどから,あまり期待しないで読み始めたのですが,その期待は裏切られ(?),ま〜ったく退屈することなく,一気に文庫本で500ページ以上を読みきってしまいました.物語の中心となる夫妻の秘密については,何となく途中から予測できましたが,それにしてもすごく良くできたミステリーだったと思います.
32 欲望 1997 新潮文庫 ★★★
 直木賞受賞作『恋』に続く長篇恋愛小説.とにかくこの人,本当に文章がうまいというか,読みはじめたら一気に読ませてしまう作家だと思います.解説の池上冬樹さんもお書きになってますが,私にとっても「至福の時間を約束させてくれる作家」のひとりなのです.ただ前作に比べて,物語の内容がよくありそうで意外性に乏しいのと,あと私,三島由紀夫って作家のナルシズムってどうも苦手なもんで.... 第5回島清恋愛文学賞受賞作.