小池 真理子

長編小説3(1998 - 2003)



美神(ミューズ)

1997

講談社文庫

★★★

 美少女『阿沙子』を主人公に,彼女を巡る男たちの姿を描いた連作集.官能的な美少女はそれだけで罪作りな存在ではありますが,裏返せばそれは「男のくだらなさ」でもあるのです....

蜜月

1998

新潮文庫

★★★

 前年の『美神(ミューズ)』とは逆に,42歳で急逝した天才洋画家『辻堂 環』を巡る女たちを描いた連作集.『美神(ミューズ)』と一対を成す作品であるとも言えますが,結局のところ感じさせられるのは,やはり「男とゆ〜もののくだらなさ」だったりして....

律子慕情

1998

集英社文庫

★★★★

 これも作者の分身とも思われる『律子』を主人公とした連作集.この作者,ここのところ連作づいてますね? 少女の魂の軌跡を描いている連作集であるという点で『美神(ミューズ)』と似通っておりますが,少々 SF 的な要素の入ったこちらの方が私の好みではあります.... でも,もし自分に『死者と話せる能力』があったとしたら....,やたらといじめられたりおこられたりしそうで怖いのです.... これも日頃の行いが悪いせいだよ,やだね....

水の翼

1998

幻冬舎文庫
新潮文庫

★★★★

 『無伴奏』に続く '70年頃の仙台を舞台にした青春小説ともとれる作品ですが,ありきたりの恋愛小説もしくは青春小説に終らせていないところは流石.やはり,この時代を過ごして来た世代にとっては,三島由紀夫事件とか浅間山荘事件とかって,かなりのインパクトのある歴史的事実だったと思うのですが,それにしても三島由紀夫ってそれほど評価されるべき人物なのかね....? 私,生き方としては,三島よりも太宰治の方に共感しているもんで....?

冬の伽藍

1999

講談社文庫

★★★★

 第1章がヒロイン・悠子の視点から,第2章は手紙のやり取り,第3章は友人・摂子の視点から,と効果的に視点を変えて描かれる大恋愛長編.第1章の事件に至るまでの描写は,作者お得意のサスペンス・タッチで描かれていますし,事件の後日談として語られる第3章は,ある意味極上のミステリーとなっております.でも,やはり結末は.... これしかないんだろうね? って感じ.キャラとして,気になるというか許せない気になるのが友人の摂子で,『女の友情』の薄気味悪さみたいなモノを感じてしまいます.解説は,唯川恵氏.

イノセント

1999

新潮文庫

★★★★★

 写真=ハナブサ・リュウ氏とのコラポレーション・ブック.長篇としてはちょっと短いですが,実際この手の小説って,これくらいの長さがちょうどいいかも.... 見事なまでに退廃的な官能小説の傑作だと思います.



蔵の中

2000

祥伝社文庫

★★★★

 祥伝社文庫15周年記念特別書き下ろし作品.読みはじめたところ,「何かよくありそうな話やな〜」と思っていたのですが,最終節に至って「さすがサイコ・サスペンスの第一人者!」と感心させられました.「よくある話」をただの「よくある話」にしない作者の力量に感心させられます.

ノスタルジア

2000

双葉文庫
講談社文庫

★★★

 短篇集『水無月の墓』や連作『律子慕情』の流れを汲む『異界小説』であると同時に,『恋』や『欲望』以来の一連の恋愛小説としても位置付けられる作品.以前のサイコ・サスペンスとは少々風情の違うこれらの作品群ですが,たとえばこの作品の18節以降に見られる急展開はあくまでミステリーであるという点で,その根源はやはり同じであることが伺えます.また,『水の翼』以降に感じられる三島文学からの影響の元においても,確固としたオリジナリティーが感じられるのは,やはりこの作者一流の感性によるものだと思います.但し,個人的には以前のサイコ・サスペンスが好きだったので,あまりこの傾向に走ってもらいたくないような気がいたしますが.... 解説は,東雅夫氏.

浪漫的恋愛

2000

新潮文庫

★★★

 『月狂ひ』改題.『恋』・『欲望』の流れを汲む恋愛小説の大作.結局この人,ミステリーから恋愛小説に作風を移しても,しっかり異常心理入っているので,私個人としましては,かなりハマってしまうのでした.解説は,稲葉真弓氏.

薔薇いろのメランコリア

2001

角川文庫

★★★

 シチュエーションは全然違うんだけど,読み始めた当初は,サガンの『悲しみよこんにちは』を思い出してしまいました.ま,あの作品にしても,これにしても,多分男性作家じゃ書けない小説だよね.... 解説は,小川洋子氏.

狂王の庭

2002

角川文庫

★★★

 ふ〜ん,今度は凄いの書いたね〜 だんだん『文豪』じみてきて,以前のような軽い洒脱さが希薄になっているのが残念なよ〜な気がするものの,読みごたえのあるこの『大恋愛長篇』を一気に読ませてしまうのは流石だと思います.ところで,結局,主な登場人物のうち最も不幸だったのは誰でしょう? 

虚無のオペラ

2003

文春文庫

★★★★

 『恋情と性愛』そして『老いと死』というおも〜いテーマに真正面から取り組んだ力作だと思います.この作者,かなり自分の『老いと死』を身近に感じてきたせいか,ここんところ,こんな作品多いような.... でも,男と女ってどちらが自分の『老いと死』を強迫的に感じるもんだろかね? 実は Della も精神年齢的にはいつまでも子供なんだけど,最近『肉体の老い』に怯えているのです.解説は,高樹のぶ子氏.