小池 真理子


長編小説5 (2021 - )



65 神よ憐れみたまえ 2021 新潮社 ★★★★★
 この方の作品には駄作というものが全くなくてそれはそれでとても凄いことなのですが,このサイトを更新しようとして見返したところ,2011年以降の長編小説すべてに★5つつけていたことに気づいて,唖然としております.また,最近とみに本が読めなくなって,1ページ読んだだけで眠くなってしまい困っているのですが,この方の作品だけは一気に読んでしまうことができるのはとても不思議なことなのです.というわけで,本をたくさん読んでいた頃は小説は文庫本しか購入しないようにしていたのですが,本をあまり買わなくなったのと,この方の作品に関しては文庫本化が待ちきれなくなって,この作品からはついに単行本を購入するようになってしまいました,さて.この書下ろし大長編小説ですが,期待通りの素晴らしい作品で,570ページを一気に全く眠くなることもなく読み終えてしまうことができました.エッセイから始まって,ミステリー,怪奇小説.恋愛小説とジャンルの幅を広げていった作者ですが,愛する人たちの別離が続く中で,恋から性へ,生から死へと視点を移しながら人生を見つめている姿が垣間見られるような作品だと思います.そして相変わらず綺麗な文章です.
66 アナベル・リイ 2022 角川書店 ★★★★★
 このサイトで度々絶賛している通り,この方の作品にはジャンルを問わずに駄作が皆無で何を読んでも十分楽しめる,という点で稀有な存在だと思うのですが,個人的にはやはり何といってもとりわけ幻想怪奇小説に属する作品に展開される真理子さんワールドがたまらなく魅力的なのであります.で,この本の帯には「耽美にして妖艶 幻想怪奇小説の到達点」とあったので,これまでのどの作品よりも期待に大きく胸を膨らませて読み始めたのですが,もちろんその期待は全く裏切られることなく,真理子さんワールドの魅力を堪能させていただきました.内容については触れることができませんが,とにかくおススメの一冊です.