小池 真理子

短編小説2(1995 - )



記憶の隠れ家

1995

講談社文庫

★★★★

 『記憶』と『家』を共通のテーマにした初の連作短編集.『刺繍の家』・『獣の家』・『封印の家』・『花ざかりの家』・『緋色の家』・『野ざらしの家』の6篇を収録.
 どの作品も傑作ですが,特に映画『サイコ』を髣髴とさせる『刺繍の家』と・・・・な『花ざかりの家』が印象に残りました.

怪しい隣人

1995

集英社文庫

★★★

 『妻と未亡人』・『家鳴り』・『終の道づれ』・『寺田家の花嫁』・『本当のこと』・『隣の他人』の6篇収録.解説は池上冬樹氏.
 身近な『怪しい隣人』たちをテーマに,他人に振り回される男女の姿を描いた短編集.それぞれの作品はとても面白く水準作以上の出来だと思うのですが,この作者の持ち味という点でもうひとつか...? 中ではやはり『妻と未亡人』と『隣の他人』の「女の恐さ」を感じさせる作品の出来がよいと思いまふ.

水無月の墓

1996

新潮文庫

★★

 『異界』をモチーフにした幻想小説8編『足』・『ぼんやり』・『神かくし』・『夜顔』・『流山寺』・『深雪』・『私のいる場所』・『水無月の墓』を収録.解説は東雅夫氏.
 新しいジャンルへの挑戦で,それぞれの作品は読みごたえはあるのですが,作者の持ち味を生かした面白さという点に関しては,「?」が残るような気がします.

うわさ

1996

光文社文庫

★★★★

 『独楽の回転』・『災厄の犬』・『ひぐらし荘の女主人』・『うわさ』の4篇を収録.
 悪女小説の傑作『ひぐらし荘の女主人』...作者の面目躍如といったところか...? あと表題作の『うわさ』に描かれている中年女性(異常心理入ってます)が変に魅力的に描かれているあたり,女性作家ならではのものを感じさせられます.

 *ゆがんだ闇

1996

角川ホラー文庫

★★★

 カッパ・ノベルス刊『絆』を改題文庫化.小池さんの『生きがい』の他,小林泰三・篠田節子・鈴木光司・瀬名秀明・板東眞砂子各氏の作品全6編を収録.

ひるの幻 よるの夢

1999

文春文庫

★★★

 『夢のかたみ』・『静かな妾宅』・『彼なりの美学』・『秋桜の家』・『ひるの幻 よるの夢』・『シャンプーボーイ』の6篇を収録.解説は張競氏.
 解説にもあるように,少々ミステリーを離れた,日常を描いた作品が多いためか,すこ〜し物足りない感じもいたしますが,『静かな妾宅』・『彼なりの美学』など,やはりこの人は優れたミステリー作家であることを感じさせてくれる作品だと思います.

薔薇船

1999

ハヤカワ文庫

★★★★

 『鬼灯』・『ロマンス』・『薔薇船』・『首』・『夏祭り』・『彼方へ』の6篇を収録.解説は結城信孝氏.
 「異界への興味関心は,幼いころから強かったように思う」(あとがきにかえて)作者が放つ,『異界』との接近・遭遇をテーマにした短編集.久々のある意味ホラーともいえる短編集で,かつての『小池ワールド』を髣髴とさあせてくれます.収録作の中では,『ロマンス』・『首』・『夏祭り』あたりが好きです.



薔薇の木の下

2000

徳間文庫

★★★

 『春の水音』・『囚われて』・『封印に家』・『老後の楽しみ』・『妻と未亡人』・『薔薇の木の下』・『秘密』の7篇を収録.解説は結城信孝氏.
 単行本未収録の『春の水音』,書き下ろしの『秘密』を含む,自選恋愛短編集.どうしても,古い作品の方が,この人の持ち味がよく出ているような気がします.ここのところ,恋愛小説よりになってしまって,以前のようなサイコ・サスペンスやホラーじみた作品が少なくなったのが少々残念と言えば残念ですが....

午後のロマネスク

2001

祥伝社文庫

★★★

 『約束』・『灰色の猫』・『親友』・『彼方へ』・『妻と未亡人』・『愛しい嘘』・『白い水着の女』・『くちづけ』・『年始客』・『再会』・『雪うさぎ - 少女物語 I 』・『花火 - 少女物語 I I 』・『遠い思い出 - 少女物語 III 』・『花ざかりの夜 - 少女物語 IV 』・『夏の雨』・『旅路』・『ふしぎな話』・『声』の17篇および『短いあとがきにかえて』収録.
 作家デビューの『第三水曜日の情事』,『キスより優しい殺人』に続く3册目のショートショート集.作品の傾向や作風は明らかに変ってきているものの,その切れ味は相変わらず,流石です.

天の刻

2001

文春文庫

★★★★

 『月を見に行く』・『蝋燭亭』・『天の刻』・『襞のまどろみ』・『堕ちていく』・『無心な果実』の6篇収録.解説は篠田節子氏.
 『死』と向かい合った女たちを描いた作品集.『死』というものを身近なモノとして感じるようになったのは,やはり40歳過ぎてからのような気がします(だからあわてて結婚して子供つくった訳じゃないです)が,作者もやはりそうだったのかしらん? 解説の篠田節子さんも書かれている通り,作者が60の声を聴いた時にどんな作品を書くのか,非常に興味のあるところではありますが,反面,何となく予測できるような気もするのです.

夜の寝覚め

2002

集英社文庫

★★★★

 『たんぽぽ』・『旅の続き』・『花の散りぎわ』・『雪の残り香』・『時の轍』・『夜の寝覚め』の6篇収録.解説は吉田修一氏.
 カバーに「人生の残り時間を数えはじめる季節を迎えた6人の女たち.寄る辺なき恋の短編集」とありますが,これって要するに「初老のばーさん6人のおはなし」ってことだよね.... それはともかく, Della にはわからん部分もあるのですが,一部共感できるってことはそれだけの年齢になったってことだよね.... やだな〜.この人もこのまま老成の一途をたどってしまうのでしょうか?

一角獣

2003

角川文庫

★★★★★

 『こんな花あらしの日の午後は』・『月影の中で』・『石榴の木の下』・『雨の朝』・『闇のオンディーヌ』・『一角獣』・『妖かし』・『光きらめく海』の8篇収録.版画は門坂流氏.
 こういう作品集読ませていただくと,この人本当にきれいな文章書く人だな〜って感じます(別に長篇の文章がきたないっていう意味じゃないです).8篇それぞれが珠玉の作品ですが,何と言っても好きなのは,『石榴の木の下』と『一角獣』.別に猫が出てくるからって訳ではないです(笑).

雪ひらく

2004

文春文庫

★★★

 『おき火』・『最後の男』・『仄暗い部屋』・『雪ひらく』・『場所』・『パラサイト』の6篇収録.
 2000年秋から2003年夏にかけて『オール讀物』に発表した短編6本が単行本化されたもの.相変わらず初老を迎えた女たちを主人公にした,「女性の内奥に秘められた官能の炎を描き尽くした全六作」.『官能』っていうとなまめかしくて奥ゆかしいけど,要するに『性欲』だよねって.... この手の小説って,なぜ女性(おばさん)が主人公だと美しくて,男性(オヤジ)だと見にくくて滑稽なんだろう.... 素朴な疑問です.

夜は満ちる

2004

新潮文庫

★★★★★

 『やまざくら』・『縁 えにし』・『坂の上の家』・『夜は満ちる』・『イツカ逢エル……』・『螢の場所』・『康平の背中』の7篇収録.
 こういう恐怖と官能と幻想に満ちた小説書かせたら,もう小池さんの独断場,久々に『小池ワールド』を堪能させていただきました.また,ホラーやミステリいっぱい書いてくれないかな....