岡嶋 二人

作品2(1985 - 1987)


ちょっと探偵してみませんか

1985

講談社文庫

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 「読み進まれる前に,少しだけ,考えてみてください」.作者が読者に挑戦する25の謎.ミステリー・マニアにとってはこたえられない短編集で,それぞれの問題も流石によくできていると思います(私,半分くらいしかできませんでした,お馬鹿です).また,それぞれの短篇(ショート・ショートと言った方がいいかな?)も,読みごたえのある作品だと思いますが,やはり小説としてよりも,推理クイズ集としての要素が強い作品ですので,評価は控えさせていただきます.解説は,新保博久氏.
ビッグゲーム

1985

講談社文庫

★★★
 今度は野球です(笑).この作者には珍しく,冒頭から死者が続出,結局死者3人・重傷者1人が出るという,派手な展開のストーリーですが,主題は殺人ではなく,球団資料室のスタッフを巻き込む,プロ野球界における大掛かりなスパイ活動.作者お得意のコンピュータも活躍する,なかなか凝った作りの現代的なスパイ小説となっています.私,ヤキューってあまり興味ないもんで(それでも,もとの仕事の関係で,一応スワローズのファンです),こんな話読むと,「たかがゲームじゃん?」って思ってしまうのですが.... プロ野球界を舞台に繰り広げられるスパイ小説って.平和と言えば平和かも.... 解説は,香山二三郎氏.
ツァラストラの翼

1986

講談社文庫

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 ゲーム・ブック.私,このゲーム・ブックって苦手かも....? 結局,最後までやり通すことができませんでした.したがって,評価できません.ごめんなさい.
コンピュータの熱い罠

1986

光文社文庫
講談社文庫

★★★★
 作者(特に井上氏)お得意の,コンピュータをモチーフにした傑作推理小説.今回は,競馬とか野球とか,私にとって苦手なジャンルではなく,コンピュータの世界の話なので,全く抵抗なく一気に読めました(笑).前半のサスペンス・タッチのストーリー展開といい,後半のスリリングなシーンといい,エンタテインメントとして言う事はない出来なのですが,惜しむらくは,途中で真犯人の見当がついてしまう事.というわけで,星一つマイナスしてしまいましたが,コンピュータ犯罪小説としての面白さは一級品だと思います.また,『結婚相談システム』という超現代的なモノが作品の重要なファクターとなっており,作品に社会性を付加しているわけですが,そのような設定上,主人公に女性をもってきたことも,作品を面白くさせる要因となっており,作者のうまさを感じさせられます.ひとつ言わせてもらううならば,オペレータって,決して技術者ではないと思うのですが.... このラスト・シーンって,映画『卒業』のパロディなんでしょうか? 解説は,コンピュータ・サロン勤務の穂井田直美氏(光文社文庫)・黒田研二氏(講談社文庫).
七日間の身代金

1986

徳間文庫
講談社文庫

★★★
 『人さらいの岡嶋』お得意の誘拐モノですが,この作品,以前の『あした天気にしておくれ』・『タイトルマッチ』・『どんなに上手に隠れても』といった作品に比べて,少々凡作といった感が否めません.というか,ヘンにテンション上げようと力み過ぎているような気がいたします.半ばまでは,異常性格者の関係する誘拐事件の描写で,巻き込まれた2人の主人公が推理を進めていく部分など,面白く読めるのですが,後半以降のストーリー展開,この作者にしては切れ味に欠けているような気がします.これは,真犯人の見当が最初からついてしまうことと,被害者の異常性格の描写が何となく中途半端に終わっていることに起因していると思います.結局,この作者の文体にしても,登場するキャラクターにしても,かなり陽性なので,そこにサイコじみたもの持ち込むと,そこはかとなく違和感が漂ってしまうのでした.解説は,香山二三郎氏(徳間文庫)・斎藤純氏(講談社文庫).

珊瑚色ラプソディ

1987

集英社文庫
講談社文庫

★★★★★
 沖縄を舞台に繰り広げられるサスペンス・ドラマ.婚約者の急病(虫垂炎)とそれに伴う逆行性健忘症(記憶喪失),同行していた友人の失踪,謎の男の存在,といった謎に立ち向かう主人公.最初は,何の犯罪もからんでいないため,独自に捜査していくしかないわけですが,静かにストーリーが進む中,言い様のない無気味さが漂ってくる,超一級のサスペンス・ドラマとなっております.そして,物語後半にはお約束の殺人事件も発覚し,一連の謎を解きあかす意外な結末が用意されているミステリー,それと同時に,男女間の信頼を描いた美しいラヴ・ストーリーでもあるところが,この作品の大きな特色となっています.解説は,小池真理子氏.
殺人者志願

1987

光文社文庫
講談社文庫

★★★★
 サスペンス・ミステリー.といっても,殺人を依頼された夫婦が予想外の困った状況に追い込まれ....ってよくありそうなストーリーでありながら,登場人物のキャラやストーリー展開の妙で,変に深刻になったり暗くなったりしないあたり,作者に代表される新世代のサスペンス・ドラマだと思います.また,物語のシチュエーションのところどころ,映像化してみたいような気のする場面が多く,かなりビジュアルな媒体を意識して書かれた作品ではないか?という感じがいたします.解説は宮部みゆき(光文社文庫)・高橋克彦(講談社文庫)の両氏.
ダブルダウン

1987

集英社文庫
講談社文庫

★★★
 『タイトルマッチ』に続く,ボクシング界を舞台にしたミステリー第2弾.これは,作者の片割れ・徳山氏がかつてボクサーを目指したという経験によるところらしいです.今回はお得意の誘拐ネタではなく,衆人環視の二重殺人という極めて派手な事件で,ストーリーも目まぐるしく二転三転していくのですが,読み進んで行くうちに,「ど〜も違うな」という印象を受けてしまいました.何となく,ストーリーに落ち着きというか,まとまりといったモノが欠けているような気がして,この作者には珍しく,読者が読み進んでいく意欲をそいでしまうような感じがして.... それでも退屈させる事なく読ませる小説になっているのは,作者の力量と言うべきでしょうが,井上氏の『おかしな二人(岡嶋二人盛衰記)』によると,どうも最悪の状況下で書かれた作品らしいです.解説は,折原一氏(集英社文庫)・吉野仁氏(講談社文庫).
そして扉が閉ざされた

1987

講談社文庫

★★★★★
 舞台は何と核シェルター.ほとんど閉じ込められた4人の男女の会話だけによってストーリーが進行する本格推理小説.設定にユニークな物が多い作者の作品の中でも,おそらく最も特異な状況の中で,推理ドラマが繰り広げられていくわけですが,スリリングな状況描写と二転三転する犯人探しの妙は,読者を決して飽きさせることはありません.ただ,殺人に『偶然の事故』を持ち込んだ点は,以前だったらアンフェアのそしりを免れることはできなかったかも知れませんが,それを差し引いても,素晴らしく良くできた作品だと思います.『殺人者志願』同様,映像化したものを見てみたい気がする作品です.解説は,島田荘司氏.