岡嶋 二人

作品3(1988 - 1991)


眠れぬ夜の殺人

1988

双葉文庫
講談社文庫

★★★
 サミーこと向井聡美とソーレンこと相馬廉平,そして指揮官・菱刈長三が活躍する,この作者にしては珍しいシリーズ物『捜査0課』シリーズ第1作.酔っぱらいをふとした事から殺してしまう事件が多発,それまで加害者と被害者に何らの関係も存在しない一連の事件には,実は.... という,設定もかなり興味深く,主人公2人のキャラクターも個性的で,相変わらずの読み易い文章であるにも関わらず,何故か作者の他の作品と比べて読みづらさを感じてしまう作品でした.駄作とは言わないまでも,作者には珍しい凡作だと思います.これは,一つには作者がこいった組織的な犯罪,あるいは組織といったものを書くことが不得手であること,またシリーズ・キャラクターを設定すると何故かストーリーがおろそかとまでは言わないまでも,まわりくどく解り辛いものになってしまうことが,原因としてあげられると思います.また,この頃から,作者2人のコンビネーションが崩れて来たのか,作品の出来不出来が激しくなっていったような気もします.解説は,貫井徳郎氏.
殺人! ザ・東京ドーム

1988

光文社文庫
講談社文庫

★★★
 『ビッグゲーム』に続いて,球場を舞台にした作品です.『あした天気にしておくれ』に続く,半倒叙物です.『七日間の身代金』に続いて,ちょっぴりサイコ入ってます.でも中途半端です.後に,作者の1人・井上氏はサイコ・サスペンスの傑作もものにしていくわけですが,ここでは,その発展途上の姿が見られるって感じでしょうか? 『七日間の身代金』のところでも書きましたが,作品にサイコ・ドラマの要素を取り入れようとして,未消化のままに終ってしまった感がします.ストーリーそのものは,かなり面白いと思うのですが,捜査が進んでいく段階でかなり,犯人の割り出しにかなり偶然が作用している点も,少々不満です.解説は,長谷部史親氏(光文社文庫),西上心太氏(講談社文庫).
99%の誘拐

1988

徳間文庫
講談社文庫

★★★
 吉川英治文学新人賞受賞作品.作者お得意の誘拐もの,しかもコンピュータがらみ,という事で結構評判の高い作品ではありますが,私といたしましては,作者の他の作品に比べて読みづらい印象の残った作品でした.何と言っても,この作者の長所は,読み易い文体とそこに描かれる現代的なタッチだと思うのですが,そのいずれもが生彩を欠いていたような気がしましたし,また作者のもう一つの特徴であるキャラ設定のユニークさも失われていたような気がします.これは多分,この時期すでに,作者二人の共同作業がうまく噛み合わなくなっていたからではないかと推測され,後の井上氏の作品の習作のような印象を受けてしまったのでした.解説は,笠井潔氏(徳間文庫),西澤保彦氏(講談社文庫).
クリスマス・イヴ

1989

中公文庫
講談社文庫

★★★★★
 岡嶋版サイコ・サスペンスの傑作.といっても,この作品,ほとんど井上夢人氏単独執筆作だったように思われます.『おかしな二人 - 岡嶋二人盛衰記』によると,「動機が弱い」と難色を示す徳山氏に対して,「動機などは問題じゃない,この小説の眼目は<恐怖>だ」と井上氏が主張したらしいですが,『七日間の身代金』・『殺人! ザ・東京ドーム』でサイコ的要素を取り入れようと試行錯誤していた作者が,いよいよ本格的なサイコ・サスペンスに開眼したとういうような感じがいたします.解説は,品川四郎氏(中公文庫),山口雅也氏(講談社文庫).

記録された殺人

1989

講談社文庫

★★★★
 短篇集.『記録された殺人』・『バッド・チューニング』・『遅れてきた年賀状』・『迷い道』 ・『密室の抜け穴』・『アウト・フォーカス』の6篇を収録.単行本未収録作品を集成したもので,いずれの作品も '83〜 '84年の,まだ2人の作者の共同作業がスムーズに行なわれていた頃の作品で,短篇ならではの鋭い切れ味を堪能させてくれます.表題作『記録された殺人』や『バッド・チューニング』,『迷い道』なども良いですが,個人的には殺人の出てこない奇妙な事件を被害者(?)が独自の推理・捜査を行なう『遅れてきた年賀状』がおススメです.解説は,北上次郎氏.
眠れぬ夜の報復

1989

双葉文庫
講談社文庫

★★★
 『眠れぬ夜の殺人』に続く『捜査0課』シリーズ第2作にして最終作.また,作者・岡嶋二人の事実上の最終作でもあるらしいです.作者の1人・井上氏が TV 番組『スパイ大作戦』にインスパイアされて作られたこのシリーズ,誘拐・脅迫等を題材に『守りの捜査』を描くのが得意なこの作者にしては特異な作品であるわけですが,珍しく『攻めの捜査』を描いた作品として,岡嶋ファンの一部では『裏ベスト』として評判が高いです.しかしながら,『眠れぬ夜の殺人』の項にも書いた通り,私どうもこのシリーズ苦手で,この作品にしても,冒頭の犯人側の描写は興味津々で面白く読めたのに,『捜査0課』の面々が登場し,活動を開始しはじめると,どうも興味が削がれてしまったりしたのです.これは前にも書いた理由によるところが大きいのですが,私の好みの問題もあるので,決して作者のシリーズ物が駄作であるなどという事ではないのです.解説は,関口苑生氏(双葉文庫),法月綸太郎氏(講談社文庫).
クラインの壺

1989

新潮文庫
講談社文庫

★★★★★
 岡嶋二人・コンビ最終作,というよりも実質的には井上夢人氏のデビュー作といっていい作品.この作品は,本当に衝撃的でした.この小説を読んだ当時,私,コンピュータ関連会社で CG 制作やソフト開発の仕事やっていたもんで,すご〜く興味深く読ませていただいたのと同時に,当時話題になり始めたヴァーチャル・リアリティーをモチーフにしたミステリーというのも初体験だったもんで,この作者タダ者ではない! って感が強かったです.内容についてはくどくど書きませんが,現代ミステリーとしても,コンピュータ犯罪小説としても,超一級の作品だと思いますし,そして何よりも本当にコワ〜イ恐怖小説だと思います.解説は,新井素子氏(新潮文庫),菅浩江氏(講談社文庫).
熱い砂―パリ〜ダカール11000キロ

1991

講談社文庫

-
 筆者による,パリ・ダカール体験記.解説は,島田荘司氏.
ダブル・プロット

(2011)

講談社文庫

-
 1998年に刊行された『記録された殺人』に,未収録作品『こっちむいてエンジェル』 ・ 『眠ってサヨナラ』 ・ 『ダブル・プロット』を追加収録した文庫オリジナル.解説は,井上夢人氏,新保博久氏.