2 |
湖畔亭事件 |
1926 |
創元推理文庫 |
★★★ |
覗き趣味の男が偶然目撃する殺人事件,ヒッチコックの『裏窓』を髣髴とさせるシチュエーションですが,流石に乱歩先生,ヒッチコックより猟奇的で陰卑な雰囲気漂う作品に仕上がっています. |
2 |
一寸法師 |
1927 |
創元推理文庫 |
★★★ |
『湖畔亭事件』収録.乱歩氏の作品中,何度も映画化されていてかなり知名度が高い作品であるにも関わらず,当の乱歩先生は,「小説として,ひどく幼稚だったので,自己嫌悪に陥り,知友に当分休筆するという通知を出して,行方定めぬ放浪の旅に出た」と,散々な自己評価をくだしてます.Dellaは結構好きなんだけどな.... |
1 |
パノラマ島綺談 |
1927 |
創元推理文庫 |
★★★★★ |
『江戸川乱歩集』収録.倒叙推理の傑作であると共に,乱歩氏の心象風景が見事に表現された,作者の代名詞とも言うべき代表作.あまりにも衝撃的で有名なラストは言うに及ばず,全編に漂うロマンチシズムは見事です. |
1 |
陰獣 |
1928 |
創元推理文庫 |
★★★★★ |
『江戸川乱歩集』収録.『犯人当て』の興味もさることながら,何と言っても心理小説の大傑作だと思います.所詮,人間みな猟奇者であり病気なのです. |
3 |
何者 |
1929 |
創元推理文庫 |
★★★ |
『乱歩作品の中でも一と言って二と下がらぬ本格仕立ての秀作』だそ〜ですが,犯人謎解きに関しては,途中でな〜んとなく解ってしまう,やはり古さを感じさせられてしまう作品というのが,正直な感想ですか.但し,犯罪の動機に関しては,乱歩氏自身が自画自賛している通り独創的ですし,それ以外にも『意外な結末』がちゃ〜んと用意されているのでした.解説は濱中利信氏. |
1 |
化人幻戯 |
1930 |
創元推理文庫 |
★★★★★ |
この時期に乱歩先生は絶頂期を迎えていたらしく,傑作が多いです.この作品に関しては,ストーリー,トリック共に優れていると思いますが,何と言っても魅力的な犯人像,これに尽きるのです.明智小五郎のセリフ,「古来の犯罪者に,もし叡智があったとすれば,それはいつも愚かなる叡智だった.犯罪者の稚気と言ってもよかった」,そして犯人の「こういう普通でない性格を精神病と言うようですわね.だから,わたしは精神病なのでしょう.しかし,わたし自身は病気だなんて考えていません.人間の大多数の性格や習慣が正しくて,それとちがったごく少数のものの性格は病気だときめてしまうことが,わたしにはまだよくわからないのです,正しいって,いったい,どういうことなのでしょうか.多数決なのでしょうか」,説得力あるなあ.... |
4 |
孤島の鬼 |
1930 |
創元推理文庫 |
★★★★★ |
畸形と変態,これこそ乱歩の世界って感じの典型的な作品.おどろおどろしい猟奇的な犯罪と,物語の語り手に対する探偵の同性愛という,考えようによっては「これでもかっ」ってくらい異常なストーリー展開なのですが,何故か読後さわやかっていうヘンな魅力を持った作品.何よりもこれだけ非人間的な犯罪を思い付いてしまう作者の発想力には感心させられてしまいます.そして,何とエラリー・クイーンの名作『シャム双子の謎』よりも3年先駆けて発表されてるんですよね.... 解説は中井英夫氏. |
5 |
蜘蛛男 |
1930 |
創元推理文庫 |
★★★★ |
スケールの大きな変態と名探偵・明智小五郎の対決を描いた長篇娯楽小説.エンターテインメントの神髄みたいな作品だと思います.解説は山口雅也氏. |
6 |
魔術師 |
1931 |
創元推理文庫 |
★★★ |
ど〜しても前作の『蜘蛛男』と比較してしまうのですが,犯罪の動機として『怨恨』というのは,やはりありふれてて良くない,怨念の『魔術師』より単なる変態の『蜘蛛男』の方が,ず〜っと怖いし衝撃的だったし何といっても魅力的でした.... でも,ラストにどんでん返しが用意されていて.ただの復讐譚に終わらせていないところが流石乱歩氏という感じ.解説は有栖川有栖氏. |
7 |
吸血鬼 |
1931 |
創元推理文庫 |
★★★ |
前作『魔術師』の娘として登場した玉村文代さんと小林少年が活躍する,前作の続編ともいえる作品ですが,この2作,ほとんど同時期に執筆・連載されていたため,少々物語上の設定等に矛盾というかつじつまの合わない点が見られることが『解説』で指摘されています.また,ストーリー及びキャラクター作りといった点で,試行錯誤している作者の姿がこの2作には感じられるのですが,これは後に名作『黒蜥蜴』によって結実しております.ところで,この作品,結局『吸血鬼』って出てこないんだよね? 解説は戸川安宣氏. |
8 |
黄金仮面 |
1931 |
創元推理文庫 |
★★★ |
『自註自解』にも書かれているように,乱歩氏が自らの作品にアルセーヌ・ルパンを登場させ,明智小五郎と一騎討ちをさせるという思いきったストーリーで,乱歩氏の小説中「最も不健全性の少ない,明るい作」.でも,これ,『フランス至上主義』のフランス人が読んだら怒ると思う.... 解説は竹本健治氏. |