今、全国に広がる30人学級実現を求める声

 クリントン米大統領が一般教書演説で約束した18人学級の話や、欧州各国の学級定員の少なさなどを見ると、学級の規模は小さい方が良い、というのが世界の常識となっているように感じます。日本でも「30人学級」を求める国民の運動が全国に広がりつつあります。そこで、今回はその様子をまとめてみました。  

それは北波多村(佐賀県)小海町(長野県)から始まった

 「鼓動」6号7号でも紹介しましたが、北波多村、小海町が村や町の費用で少人数学級を作ろうとしたとき、文部省や県教委は猛烈な圧力をかけてこれを阻止しようとしました。しかし、その圧力を跳ね返し、実質的に少人数学級を実現させたのは、地元関係者の努力と住民の願いでした。

 そして、北波多村や小海町の取り組みが マスコミに紹介されて以後、実際にはもっ とたくさんの自治体で少人数学級を実施し ていたこともわかってきました。

 「子どもたちのいる町を」を町おこしの スーガンとし、35人学級を98年4月か ら実施しているのは、山梨県鰍沢町です。また、村長が全国村長会長を務める群馬県上野村でも以前から同様の取り組みを続けています。さらに、茨城県総和町では99年4月からの実施を決めています。

 上からの圧力を恐れてこれまで明らかにしたがらなかった自治体も少なくなかったのでしょう。しかし、昨年9月の中教審答申で「定数法の弾力的運用」が言われ、文部省や県教委が圧力をかける根拠が無くなってしまいました。今後は同様の自治体が増えるのではないでしょうか。

少人数学級は国民的要求

 少人数学級の願いは、一部の地域のものだけではあ りません。今や日本国民全体に共通のものとなってい ます。子どもの教育のために力を尽くすことが、その まま地域や住民の未来を守ることなのだという認識が 広まっているとも言えます。

<各地域で>

 昨年、和歌山県では、県内在住のイーデス・ハンソン氏らが中心となって、地元新聞に「30人学級を」という意見広告を出しました。この運動は多くの県民に支持され、例えば西牟婁郡では郡内の小・中学校のPTA会長の80%が賛同を寄せています。

 山形県では昨年11月5日、「30人学級を実現する県民連絡会」を結成し、学校関係者以外にも、地方議員、町長、女性団体、商工団体などの賛同を既に得ています。また、12月5日には群馬県赤城村で「できるところから村費で30人以下学級の実現を」という請願が、村議会で全員一致の採択となりました。

<国政の場で>

 一番最近の国政選挙、昨夏の参議院選挙を振り返ってみましょう。

 自民党以外のどの政党も、何らかの形で少人数学級実施を公約に掲げました。そして結果は自民党の惨敗だったのですから、少人数学級賛成派が多数派ということ、国民世論となったということになります。

 実際、昨年の臨時国会では共産党が定数法の改善案を提出しています。この案は審議入りしないまま会期切れ廃案となってしまいましたが、今後、超党派での再提出が期待されます。

<組合も>

 全教では、30人学級実現などを盛り込んだ、よりよい教育を求める「3000万人署名」に10年間継続して取り組んできました。毎年2000万筆を越す署名を国会に届け、大きな威力を発揮してきました。と同時に、30人学級を、という世論作りにも大きな役割を果たしてきたのです。

 今まで遅れていた日教組も、昨年の秋から30人学級実現を求める署名運動を始めています。教職員組合の2つの全国組織がこの要求で一致して取り組めば、30人学級実現へのスピードがいっそう早まることは間違いありません。

今こそ30人学級実現のチャンス

 児童・生徒数の減少期である今こそ、30人学級実現のチャンスです。従来の施設、人員の水準をこのまま維持するだけで、自然に学級定員を減らすことができるのですから。

 しかし、当局側は国民の要求を無視し、子どもの数が減るのに合わせて教員数もどんどん削減していこうとしています。そして、今まで現場を支えてきた定数内講師(高校では特別講師)の首を切ろうとしています。悪条件の中で教諭と同じ仕事を一生懸命にこなし、正式採用されることを期待して耐えてきた多くの臨時教職員に対し、何の配慮もなく。

 私たち「求める会」は、定数法の抜本的改善、国の責任においての30人学級実現を要求します。それは、臨時教職員がその努力を正当に評価され、正式採用を勝ち取るためには教員数の大幅増が必要不可欠だからです。しかし、この要求はけっして臨時教職員だけのためではありません。すべての教員が同じ ように権利を保障され、安定した身分で教育 に全力で打ち込むことのできる条件を作るこ と。これはすべての教職員、すべての子ども たちにとって大切なことなのです。

 「働き続けたい。」「力いっぱい仕事がした い。」という当然の願いが認められる職場を作 るため、私たちと共に、そして全国の仲間と 共にがんばりましょう。