県独自予算で300人の教員採用 〜高知県での成果と定数法〜
県民の願いに応える「土佐の教育改革を考える会」
1996年6月、高知県では橋 本県知事を座長に「土佐の教育改 革を考える会」がスタートしまし た。この会には県民各層から33 名の委員が選ばれ、高知県教組、 高知高教組の代表も出席していま す。
様々な県民の意見を行政に反映 させるために開かれた「考える会」 ですが、その背景には教員採用を めぐる情実、贈収賄疑惑や、なく ならない教員の不祥事などに対す る県民の不信と批判があります。 そして、県教組や高教組がこれま で一貫して臨時教職員制度の改善 を求めてきたこと、県教委に対し て教員採用の実態を明らかにするよう求め、情報公開請求や裁判などに取り組んできたことが大きな力になりました。
会合には毎回知事も出席し、マスコミにも取り上げられました。その中で常に県教組・高教組が議論をリードし、知事の姿勢も少しずつ県民の願いに沿ったものに変わってきたと言います。そして1997年2月、県教委から、「県独自の予算で5年間に300人の教員を採用する」という計画が出されました。
300人採用で何がどう変わる?
高知県教委は県独自に採用する教員の配置先として、へき地校での複式学級の解消、盲・ろう・養護学校での訪問教育の拡充をあげています。また、研修や産休などで一年間不在となる教員の代替には正規教員をあて、臨時教職員の数の計画的な縮減をはかる、ともしています。これらはより充実した教育を求める県民の願いに応えたものとして評価できます。
また、「考える会」での議論の反映として、採用審査の面接官に保護者が加わる、採用審査不合格者に成績を公開する、採用審査の年齢制限が緩和されるなどの成果も生まれました。また、県教組・高教組と知事との交渉では知事が組合差別をしないと約束し、その結果、組合員の臨時教職員が本採用を勝ち取るという成果も得ることができました。
自治体がその気になれば教員の数は増やせる
「来年は1学級減になるので教員も減らされることになります。そんなわけで 転出してもらうしかない先生も出てくることを覚悟してください。」 今の時期になると、こんなことを校長が言うのを聞いたことがありませんか?教職員定数は法律で決まっているから、子どもの数が減れば教員も減ってあたりまえ、そう思っている人が多いかもしれませんね。でも、それには誤解があります。
定数法というのは、自治体によって教育条件に格差が出ないよう、国庫補助金(義務教育)や地方交付税交付金(高校)で財政援助をし、そのための算定基準を定めた法律です。決して「これ以上教員を雇ってはいけない」という数を決めた法律ではないのです。実際に何人の教員を配置するかは、自治体ごとに条例で定めています。定数法の数以上に教員を配置する場合は国の援助がないというだけで、県独自に予算を組んで配置する分にはなんの制限もありません。だから自治体がその気になれば、独自に30人学級を実施することだってできるのです。
高知県にできて静岡県にできないはずがない!!
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この表を見てどう思いますか?
高知県と静岡県の教育に対する力の入れ方がこんなにも違うなんて、県民として恥ずかしいと思いませんか?
全国最下位の財政力の高知県が、県の予算を使って全国基準以上の教員を雇用し、ゆきとどいた教育を実現しようとしているのです。静岡県の財政力は全国5位。その気になればもっとたくさんの教員を雇用し、教育環境を整えることもできるはずです。ようは行政を担う者の姿勢の問題なのです。