デジタルといえば、記憶に新しいほんの少し前に起こった出
来事を思い出します。「針をおとす・・・」とは音楽を聴くの比喩
的表現ですが、今でも通用するのでしょうか。
1980年代前半、一世紀にわたろうとするアナログオーディオ
の世界に新しいテクノロジーが台頭・・・(LPレコード1948年
からは三十数年)いわゆるレコードからCDメディアへの移行
によるデジタル化である。
当時フォークブームも去り、音楽が好きな友人S君は、エレキ
ギターに転向してプログレッシブロックや新しいジャンルのフ
ュージョンなどをコピーするためなのかレコードを収集し始め
ていた。またセパレートステレオがはやりで、仲間内でもたま
に話題になったり、若者特有のいいたい放題の、独自のオー
ディオ論をぶつけ合ってもいた。
S君はオーディオマニアに知り合いがいて、オーディオ機器は
意外性のある選択をし、傍で見ている私にも後々それが正し
い選択だったと思う事が多く、私もそれに習う感じであった。
S君はすでにCDを聞いていたのだろうか、仲間内で一番の
音楽通としての自負があったのか、意地を張っていた私をな
だめるつもりだったのか(当時の専門誌ではCDの評価は良く
なかった。)・・・仲間内でCDが話題になったとき、たしか秀才
K君がデジタル録音機ダットで録音したテープとCDの違いな
ど、デジタルの解説をしていた時だと思う。
ダットとCDの違いが僕には良くわからないが、本の内容をそ
のまま言っている感じだったので意地をはる・・・友人S君は
言った!「共にデジタルだから機械的な音なんだよな・・・」そ
れでダットとCDの話題は結論。・・・
ガビーン!?私は何も言わなかったが、レコードを買いつづける
事に決めた。なんと21世紀になる寸前まで、アナログ・オーデ
ィオが”でん”と部屋に居座りつづけたのだ。
もっとも針を落とす事は余り無く、カセットにダビングして聴くこ
とが多かったのだが(これもS君の影響でもある)。
時は流れ、すきな音楽をレンタルでCDからダビングするため
にCDラジカセを1993年に購入、CDも買うようになって増え始
めたため、CDプレイヤーを買う(1997年になってやっと購
入)。・・・僕自身のデジタル化は、よく調べようとしなかった事
も手伝って、大幅に遅れてしまった。
最近になっても、プレス・アナログレコードの良さをアピールす
る記事があると、食い入るように読む事が多い。今もなお引き
ずっているのかもしれない。
その後の友人たちはというと、たまに歌謡曲をカラオケで歌う
普通のおじさんで、羊の皮をかぶってしまったようだ。ともあれ
Music CDは多くの評論家の心配をよそに、あっけないほど
早くアナログレコードを過去に追いやってしまったのだ。
(1982年にCDが世に出てから、1988年CDはアナログレコー
ドの売上を上回る。)
レコードを買いつづけると決めた私は、まもなくNEC98を購入
する。ソフトの値段も高く会社の画像処理関係とあまりにも性
能差があるので7年後に手放す。なぜかコンピューター嫌いに
もなっていた。
1980年後半頃から考えていたケミカル・カラー写真自家処理
が、1995年頃にはデジタルで(MAC)できる可能性が見えて
きたものの、デジタルと同じ出費であればケミカルでやりたい
と思ったが、処理時間がかかるし、高価でもあり、二の足を踏
んでしまう。
そんな愚痴を友人にいったと思うが、自分のオリジナルをコダ
ックのPhoto CD化することを勧められ、ネガも含めPhoto
CD化したりはしていた。出力は富士フィルムのピクトログラ
フィーなどを置いてあるショップでと考えていた。
そんな時、画像処理はまったく意識せず、パソコンと再び付き
合う事になった。ノートパソコンを使いこなしている方達に影
響され、本屋のパソコンコーナーに立つ事が増えた。1997年
にWindowsブームに遅くれつつも乗っかり、ワープロと表計算
を覚えるつもりでDOS/Vノート(NECLaVie)を購入した。そ
れはアナログ的な落ち着く我が部屋のコタツの上に置かれ
た。NECの信頼性と中山美穂に1票投じる感じだった。
それをきっかけに火がついたように、自作機を作る。
勢いとはおそろしく、あっという間に、メインマシンの他に4〜
5台分のディスクトップの部品が使われないままになってい
る。ソフトの関係からMACに替えることなくカラー暗室(明
室?)も実現してしまった。
オーディオはCDラジカセ中心になってしまったものの、自分
で録音した無線での会話などの声と好きな音楽を重ね合わ
せたCDをCDRで作ったり、編集してカーステレオで楽しんだ
りするまでになってしまった。
当初落ち着かなかったパソコンライフも今では、部屋にはオー
ディオの代わりにパソコンが居座り、生活の重要部分を占
め、たった5年程で身も心もパソコンアレルギィーがうそのよう
に無くなり(パソコン自作は効果大か)、一気にデジタル化し
てしまったのである。5年が10年以上の歳月を経過した感覚
である。
しかし、いまでもレコードに針を落としてます・・・。
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