ロシアやアジア音楽なんてわからない! という方へ

証言1

ロシアやアジアの音楽なんて、聴いたことはないし、
そもそも全くわかりません。
何を歌っているのか言葉もわからないし、
どのCDを選んだらいいのかもわかりません。

ふらりと入ってしまったワールド・ミュージック専門店では
知識がありそうなお客さんが店員と話をしていて、
何気なしに訳のわからないCDを眺めているだけの私は、
なんだかバカにされているような気分にまでなってしまいました。

そこまでして何で聴く必要があるのでしょうか?


そんな経験や考えを持ったことのある方も
少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

聴く必要は確かにありませんが、
逆に言葉や知識も聴いて楽しむのに必要は全くありません。


証言2

かつて、行きつけの中古CD店の飾り棚に
2枚の異彩を放ったCDが陳列されていた。

いつもはプレスリーやサム・クックなど
洋楽のCDが置かれているところに、
グチャグチャした読めない字と
夕日に映える泥の川のイラストの入った
安っぽいジャケットのCDと、
読めない漢字3文字の横に女性が空を見上げている写真を、
やたら金色を使ってハデに仕上げたジャケットのCDの2枚。
裏を見たら1枚がタイのCD,もう1枚が台湾のCDで
どちらも中古で2,500円とだけシールに書き込んであった。

中古なのに高いなと思いつつも
2枚で5,150円(消費税3%)を無言で払い店を後にした。

家に戻り早速タイのほうのCDを聴く。
安っぽいオルガンのような音と
仏壇の前においてある、線香を立てる時に鳴らす
チーンというやつを連打しているような演奏をバックに
明らかにオッサンだとわかる声が音程も定まらずに
呪文のごとく唸っている。

なんじゃ、これ。

全部で10曲位入っていたが、3曲目でギブ・アップ。

台湾のCDに切り替える。
ピアノの前奏が始まる。
伸びのある女性の歌声が気持ちよさそうに歌い出す。
ジャケットに写っている20-30才位の女性なのだろう。
2曲目に突入。なんだか聴いたことのあるメロディーだ。
曲名は知らないが日本の歌のカヴァー曲。
言葉が違うだけでずいぶん印象が変わる。
3曲目もスロー・テンポの曲。

ウーン、もう結構。

2枚ともCDの入れてある棚に突っ込む。
その後、長い間この2枚のCDを聴くことはなかった。

しかし、ある夏のやたらと暑い日曜日、
何もする気になれずにダラダラと扇風機にあったっていたときに
何故か、あのタイのCDを聴いてみたくなる。
やはり、あのオッサンの声とチーンの連打。
だが不思議と気持ち良い。
いつのまにか、扇風機の前で眠り込んでしまう。
その後、何週間かは、
このタイのCDをかけて就寝するクセまでついてしまった。

台湾のCDも滅多にないが聴きたくなる時がある。
聴いてみると、やはり心地良い。
でも、何度も聴きたいとは思わない。

タイのCDも何という名前のオッサンか知りたいと思わない。

ただ、聴きたい時に聴いて気持ち良ければそれでいい。


タイや台湾の音楽ファンの方の中には
不謹慎な奴だと思われる方もいるでしょう。

しかし音楽を聴くのに知識など本当に必要ないと思います。
学校で音楽史を勉強させられて、クラッシック音楽が嫌いになるより、
授業中、適当にレコードなりCDをかけて、
ウトウト居眠りさせてくれたほうが、
クラッシック・ファンは余程増えていたのではないでしょうか。

聴いたものがたまらなく好きになり、その歌手なりグループについて
もっと知りたい、と思ったら自然と知ることは知っていくでしょう。

音楽を聴くためにその国の言葉まで知っている必要もありません。
逆に知っていたら楽しみが減ってしまうこともありえます。
各国の言葉を楽器の種類だと思って下さい。
真似の出来ない色々な発音や不思議なメロディー・センスなど、
楽器と思えばその言葉を知らないほうが純粋に楽しめるはずです。

タイ料理やロシア料理を初めて食べてみるように、
ロシアやアジア各国の音楽を聴きかじるのも悪くないと思いませんか?


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