屋根裏のオベリウ

日本の音楽:










Newest Model
初ワンマン・ライブ in 大阪 Eggplant 1988.1.15




1987年の暮れ、大阪のアメリカ村にあるレコード屋”KG”に
何気なく入ったときでした。

店内で大音量でかけられていた曲が妙に気になって
店員さんに聞いてみました。

”今かかってる曲って誰のですか?”

”ニューエストモデル。”

と言いながら、
紫色に染められた髪の毛を逆立てている、
この店員さんがシングル盤を手渡してくれました。
そのレコードのジャケットの中に写っているメンバーの髪型も
同じです。
ニューエスト・モデルのリーダー、中川敬さん本人でした。

そして、このレコードを買うと、

”今度、京都でライブやるから観にきてや。”

とライブの告知のチラシを渡してくれました。

88年1月12日、チラシに載っていたライブハウス、磔磔に行き
ライブ終了後の楽屋におじゃまして中川さんやメスカリン・ドライブ
メンバーの方々とお話をしているうちに大阪エッグプラントで
行われるニューエスト・モデルの初ワンマン・ライブの記録映像を
ビデオで撮ることになりました。

しかし、撮ると言ったものの当時、貧乏学生だった私は
ビデオ・カメラを持っていないだけでなく、
触ったことすらありませんでした。
早速、下宿に戻ると電気屋さんの跡取息子で下宿仲間の友人に
頼み、実家の店に展示してあるビデオ・カメラとバッテリーを
取りに行ってもらいました。
電気屋さんの息子らしく、色々な機能や使い方を
丁寧に教えてくれましたが、あまりよくわかりませんでした。

3日後の88年1月15日、大阪エッグプラントに
ビデオ・カメラとバッテリーを抱えて到着。
早速、前座のパンク・バンド、Stand The K.G.G.Mの演奏を
撮り始めますが、ピントは合わない、実際の画面の大きさは
フレームの中でどれ位なのか、ズームは何回位使用したら
バッテリーが切れるのかなど、疑問ばかりが湧き上がってきました。

20分程で演奏終了、早くもバッテリーを半分近く使っています。
予備のバッテリーは1本のみ。取りあえず新しいのに交換。
ステージに立っているスタンド・マイクにピントを合わせ直します。


スライ&ザ・ファミリー・ストーンの"シング・ア・シンプル・ソング"を
BGMに、ニューエスト・モデルのメンバー登場。

演奏が始まる。

1曲目終了後にベースの弦が切れ2曲目のイントロで演奏中断。

”ちょっと、弦切れたから待ってな。”
”今日は思い切り、やるしな。”

中川さんが第一声を発する。



弦を張り替え終わると怒号の演奏が続く。
自作曲以外にストラングラーズやラモーンズのカヴァー曲も演奏。

何曲演奏したのだろうか?
ついにバッテリーが限界にきて画面に横縞のノイズが入り始める。
曲が終わると同時にバッテリー交換。
しかし、暗闇の中での作業なのでスイッチの場所などわからず、
思いっきり手間取る。



次の曲が始まった。
まだバッテリーがつながらない。
曲の途中でやっとつながり、カメラをステージに向ける。
アンコール前の1曲、"Soul to Soul"であった。



アンコールではメスカリンの洋子さんやマッド・ギャングなど
豪華なゲストと共に ラモーンズの"ロックン・ロール・レディオ"、
"ドゥ・ユ・ウォナ・ダンス"を演奏。
おおいに盛り上がる。



演奏終了、そして撮影終了。
果たして映っているのか?

下宿に戻ると早速、オンボロ・ビデオ・デッキで再生してみる。
映っている。
しかし音割れもすごい。
振動で画面にノイズが入っている。
ビデオ・カメラからデッキへとダビングしてみる。
ノイズが更にひどくなる。
仕方ないのでデッキで再生して14インチのテレビ画面の
画質調整でノイズを目立たないようにして
ビデオ・カメラでテレビ画面を撮影、
当時で言うところのカメラ変換を試みる。
だいぶ観やすくなった。

後日、再び”KG”におもむき中川さんにビデオテープを渡す。

”おおきに、お金払うわ。”

”いえ、もうすぐでるレコードにサインもらえればそれだけで。”

”サインなんてナンボでもするわ。”

又、後日”KG”に予約していた
ニューエスト・モデルの新譜を取りに行く。

”ビデオはどうでした?”

”おお、よかったで。カッコええわ。”

レコードを中川さんが取り出す。
一瞬、お互い目を見合す。
何故か気恥ずかしくなり、サインのことは触れずじまいとなる。

今思えばサインを要求しておきながら、
しっかりと目の前でお願い出来ず、
中川さんには失礼なことをしてしまいました。

その後のニューエスト・モデルソウルフラワー
活躍はご存知の通りです。
中川さんがレコード屋の店頭に立っている姿は
程なく見かけなくなりました。

当時は同じようにビデオでライブを撮ってみたいと
強く思うバンドが幾つもあり、
本気に考えてみたこともありました。

マニッシュ・トーンThe Stripper少年ナイフ
Gomess、Bert Jansch...
学生時代の青臭い考えです。


なお誠に申し訳ありませんが、
このビデオに関してダビングなどのお問い合わせは
一切お受け出来ませんので、
あらかじめご了解下さいませ。

(2004年2月22日)


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