屋根裏のオベリウ

世界の音楽:










ヴァスクレセーニエ
ジヴェーエ・フセフ・ジヴィフ

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ロシアン・ロックのビック・ネームと言えるグループの中で、
日本では何故か人気が無いグループが幾つかあります。
ヴァスクレセーニエ、チーシュ・イ・コー、チャイフ、
ビック・ネームとまではいかないクロスローズ。
これらのグループはブルースなど洋楽の影響を
強く感じさせられる所で共通しています。

わざわざロシアのロックを聞くのに、
洋楽と大差ないグループなら洋楽の優れたバンドのCDを
聞いている方が良いのかもしれません。
まあ、しかし日陰に置かれているグループに
スポットを当てたくなるのが人情です。お許し下さい。
又、これらのグループは、初めてロシアのロックに接する方には
アクワリウム、キノーといったロシア色の濃い有名グループよりも
すんなり聞けるかと思います。

紹介するのは上記グループの一つ、”ヴァスクレセーニエ”が
95年3月に行ったアコースティック・ライブを収録したアルバム、
”ジヴェーエ・フセフ・ジヴィフ”です。

”ヴァスクレセーニエ”は1979年、人気グループ、
”マシーナ・ブレーメニ”を
脱退したエフゲーニィ・マルグリス
(ベース、ボーカル、
現在はグループ、”シャンハイ”でも活動)、
セルゲイ・カワゴエ(ドラム)、一時期、”マシーナ・ブレーメニ”と活動を
ともにしていたアレクセイ・ロマーノフ(ギター、ボーカル)、
アレクセイ・マカレービッチ(ギター)により結成されました。

瞬く間に全国的な人気を博しましたが、
ドラムのカワゴエが日本に移民のため脱退するなど
メンバーの出入りは激しく、さらに83年には作詞、作曲など
グループの中心であるアレクセイ・ロマーノフが
身に覚えのない非合法な
コンサート活動をしたとして逮捕、
投獄されるなど82年から94年までの間、
ヴァスクレセーニエ
としての主だった活動はなりをひそめました。


94年の5月にドラムを除く、ほぼオリジナル・メンバーで活動を
再開するものの、その年の12月にはアレクセイ・マカレービッチが
女性3人組ポップ・グループ、”リツェイ”のプロデュース活動
のために脱退、
その数ヶ月後に行われたライブを収録したのが
このアルバムです。


アレクセイ・マカレービッチが抜けて4人編成;

              ドラム:ミハイル・シェビャコフ
   ギター,ベース,ボーカル:アンドレイ・サプノーフ
   ギター,ベース,ボーカル:エフゲーニィ・マルグリス
        ギター,ボーカル:アレクセイ・ロマーノフ

となった分、演奏はシンプルにまとまり、観客の雰囲気から、
こじんまりとした会場でのアンプラグド・ライブといった感じです。
(このライブの数曲が収録されたビデオもでています。)

収録曲の一つ、”一度も海の向こうに行ったことがない僕”も
81年のスタジオ録音や82年のライブ・テイクなどソビエト崩壊以前に
録音されたものと比べると、明らかに肩の力が抜け、
愛情と少しばかりの感慨を込めて歌っている印象を受けます。
メンバーの脱退やソビエト崩壊などを歌詞に照らし合わせて考えると
より一層、感慨深いところがあります。

ショウ・ビジネスを嫌い、アルバムや新曲をあまり発表せず、
昔から慣れ親しんだ曲を大切に歌うアレクセイ・ロマーノフの姿は、
進歩が無いと言えばそれまでですが、
それはそれで美しいのではないでしょうか。



「一度も海の向こうに行ったことがない僕」

僕は1度も海の向こうに行ったことがない,
いつもの考えが僕の心を和ませる−
そこには同じように青い空,
そして同じような込み入った生活がある.
もしかすると、そこはもっと楽しく豊かで,
より色鮮やか、夏はもっと暖かいかもしれない.
でも、そこでも同じように人々は痛みに泣き,
苦痛の中、子供たちを産んでいる.

もしかすると、僕は全くわかってないのかもしれない−
祖国への密かな裏切りによる明らかな利益のことを.
なぜ僕はこんなにも失うものが多いのだろう,
代わりとして得るものは何もないというのに.
新しいどんな幸福のためなのか,
勝手にするがよい!,
浮浪者のふりをして絶えることなく向かって行く,
巡礼者たちが見知らぬ土地へ.

思いついた事、してきた事、通り過ぎた事,
あなたはすべて捨て去る、なにも悲しまないで.
しかし祖国はどこかで終わっている,
もしあなたに祖国があるならば.
別れの時に振り返ってみなさい−ほら、あそこが祖国で
足もとには異国の土地が.
それは渡り鳥が飛んで行くのか,
それとも船からネズミが逃げ出して行くのか.


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