屋根裏のオベリウ

洋楽:










The Concert for New York City

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DVD
ソニー・ミュージック/ソニーレコード
ASIN: B00005V4E9


2001年10月20日、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン
行われた米同時テロへのチャリティー・コンサートです。

コンサートの提唱者、ポール・マッカートニーの呼びかけで
デビッド・ボウイミック・ジャガーエリック・クラプトン
ビリージョエルなど豪華なミュージシャンの他にスパイク・リー
マーチン・スコセッシウッディー・アレンなどによる短編映画の
上映やロバート・デニーロハリソン・フォードメグ・ライヤン
さらにクリントン前大統領ジュリアーニ(前)市長などまでが
出演した様子を5時間近く収録しています。
(それでも完全収録ではありません。)

アメリカではこのコンサートの模様がテレビで生中継されました。
その後、DVD用に編集が施されたのですが、
その編集の仕方に幾つかクレームがついています。
デビット・ボウイの演奏シーンにコラージュ映像が加えられている。
ヒラリー・クリントンが登場した際に起きた会場のブーイングが
拍手の音に差し替えられている。
エリック・クラプトンなどの曲が数曲カットされている、などです。
特にヒラリー夫人へのブーイングの編集は
政治的、歴史的な改竄だとして非難が集中していますが、
そのような編集個所をチェックして観るのも興味深いです。

しかしながら、このコンサートの最大の見所はザ・フーです。

ザ・フー、ポール・マッカートニー、チャリティー・コンサートと言うと
1979年12月26〜29日にロンドンのハマースミス・オデオンで
開催されたユニセフ主催のカンボジア難民救済コンサート
思い出されます。
こちらでもザ・フーが素晴らしいステージを繰り広げていましたが、
(特に”シー・ミー・フィール・ミー”での異様なまでの会場との一体感。)
当時のフーのドラマーはキース・ムーンの死後に加入した
元フェイセスのケニー・ジョーンズでした。
ザ・フーのサウンドとケニーのドラムの相性は
お世辞にも良かったとは言えませんが、
それでも素晴らしいステージに変わりありませんでした。

しかし、今回のコンサートではビートルズのリンゴ・スターの息子で
キース・ムーンに幼少時代、ドラムを教わっていたという、
ザック・スターキーが加入して復活した後のフーのステージです。
ザック・スターキーは若き日のキース・ムーンの
生まれ変わりと思える程のドラムを披露しています。

(2000年11月27日、ロンドンのロイヤルアルバートホールで行われた
ライブを収録したDVDではザック・スターキーのドラムをたっぷりと観ることもできます。)

ピート・タウンゼンドの歯切れの良いギター、
ロジャー・ダルトリーの声量は落ちたものの直向きなボーカル、
常にクールだったジョン・エントウィッスルのベース、
(2002年6月27日に心臓発作のために急死)
奇才キース・ムーン再来のザック・スターキーのドラム、
”この場に居られて光栄だよ。”と言って演奏を続けるピートの姿は
”君達の気持ちはわかってるさ。でも一緒に頑張ろうぜ。”
とでも言ってるかのように感動的です。

米同時テロ、チャリティー、ニュー・ヨークなどと聞いてしまうと、
アフガン市民の犠牲者、イスラエルの侵攻、軍事産業などと
連想してしまったりするのですが、
フーの(あるいは他のアーティストの)演奏を聞いて
感動している時には、悲しみや憎しみ、思想や宗教も、
その瞬間だけは消えているのではないでしょうか。

その意味で感動を与えてくれるミュージシャン達、
音楽は偉大だと思います。

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