読んだ作品
★猫丸先輩シリーズ★ 日曜の夜は出たくない/過ぎゆく風はみどり色/
幻獣遁走曲−猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
★その他★ 占い師はお昼寝中/星降り山荘の殺人

★猫丸先輩について語らねばなるまいて。彼は凄いです。神出鬼没。何処に居たって横柄で俺様で、
周りをブンブンふりまわして「おまえさんねぇ」とか変な口調で喋りまくる。そして煙に巻いて去っていく。
職業、所在地、年齢不詳。謎が謎を呼ぶ不思議な不思議な猫丸先輩。でもどうしてか、彼は優しいのです。
本当の意味で優しいんです。誰も傷つけたりしない。周りもだから安心していられる。
色んな悪口言われても、愛情が感じられるから誰も怒らない。とにかくだから「凄い人」としか言えないですけどね。


★そんな猫丸先輩の短編集が「日曜の夜はでたくない」なのですが、私はこの中に出てくる
「寄生虫館」に一度行ってみたいんです。あ、そんな事じゃなくて、一つ一つの作品が全て違う語り口調
全て違う雰囲気で描かれているのが凄い。どんな風にも書けますよという作者の自信からなのか、
それとも描いてたら自然とそんなになっちゃったのかは分からないですけど、色とりどりって感じで飽きない。
ギャハハと笑っちゃうものから、ホロリと泣いてしまうものまでバラエティーですね。


★そんな猫丸先輩の長編が「過ぎゆく風はみどり色」です。ちょっと叙述トリック的なのですが、
一概にそうとも言えない微妙な所です。これに出てくる人々は皆優しいっていうのか、殺人に優しいも何も無いんだけど、
でも全体として優しい印象の作品なのです。きっと倉知先生自体の持ち味なのでしょうけど、殺伐としていない。


★異彩の「星降り山荘」。優しい作品が特徴?そう思っていたならお前の間違いだよ、ってな意味なのか、
この作品の痛みは語り尽くせない。倉知作品を知っている人間ならショック倍増。その「優しい持ち味」すら
逆手にとってトリックにしてしまうのか?!「星降り山荘」を読んで三日位は余韻が抜けませんでした。
スターウォッチャー星園さんに感情移入して読んでたから尚更・・・。空虚感、絶望感、切なさなんかに切り刻まれて痛かった。
でもだからこの作品が代表作とも言えるかも知れない。うーん。


★辰寅おじさんと美衣子。「占い師はお昼寝中」のシリーズ主人公です。インチキ占い師なんですが、
その描写が何とも笑える笑える。お客さんの可哀相な事と言ったら。
短編集なのですが、どれもちょっとドタバタコメディみたいな感じで私は大好きなのです。


★倉知先生が実は猫丸先輩?と思えるくらい、倉知先生は猫丸先輩にイメージピッタリでした。
背が小さくて、キョロキョロ周りを伺ったりして、もぅ今にも「あたしゃね」とか言い出しそうで
私はつい笑ってしまいそうになりました。可愛らしいと言ったら失礼なんだろうけど、
何とも「流石だ」と思わせる方でした。


★『幻獣遁走曲−猫丸先輩のアルバイト探偵ノート』は、今までの猫丸先輩のシリーズと違った感じでした。
いつもより、ポップだった。猫丸先輩の人柄がああなので、普段もノリ的には明るく感じるけど、
根底に流れる物が、何というか暗かったのですが、今回は、もぅ大暴走
周りを振り回しまくってて、本当に楽しかった。短編集だけど、どの猫丸先輩も、周りを
いいように引きずり回していて、楽しい。殺人も起きないし、どちらかと言うと辰寅オジさんのシリーズっぽかった。
私が好きだったのは「よりきり仮面」ですね。少年の純粋さは、心にホワンと暖かくなりました。
最後の松茸取りのお話も、悪い人がだれ一人出て来なくて、とっても嬉しかった。
ただ、トリックはどれも「ふ〜ん」という感じでしたので、猫丸先輩の生態をかいま見る為の本だった感じ。