読んだ作品
★建築探偵桜井京介シリーズ★
未明の家/玄い女神/翡翠の城/灰色の砦/原罪の庭/美貌の帳/桜闇
★その他の作品★ 琥珀の城の殺人/天使の血脈

★主体は建築探偵でしょう。それまで大して建築様式なんかには興味もなかったけれど、読んで行く、
そして知っていくに連れて段々面白く感じて来ました。もともと綺麗な建物や変わった作りの建物に
惹かれる性格だったので尚更ですね。それぞれ特徴的な建物が出て来て楽しいです。
映像で見れたらさぞかし圧巻であろうと思います。建物と人との関係が凄く良くて、
特に神代教授の家は何の変哲もない日本家屋なのに、生きている感じがして好き。


★そしてキャラクター達。私は個人的に少年好きなので(笑)蒼大好き人間ですけど、
それぞれが違う魅力を兼ね揃えていて上手く絡み合って素敵。京介の推理力は勿論凄いんだけど、
私は蒼の記憶力に軍配を揚げたい。この力(?)があるからこの作品が好きと言っても過言ではないってほど好きです。
何て言うか、「これだけは絶対」みたいな保証を貰った感じの安心感なのです。
蒼自身は「謎が謎を呼ぶ」的キャラクターなのに、こと記憶力に関して絶大の安心感をかもし出す。
深春も教授もクセがあるのに嫌味じゃない。サラッとしてるくせに人間くさい。
そういう人物を作り出すのが篠田先生は本当に上手なのです。感動的ですらあります。


★それにしても「原罪の庭」は辛かった。精神と精神が今にも切れそうな細い糸1本で繋がったイメージ。
何も信頼出来るものが無くて、不安でグラグラと揺れながら読みました。
この本はシリーズ全体に関わってくる話だったので、ここで何か起こったら
今までの全てが消え去ってしまいそうな、そんな危うい均衡を保って読んだのです。
こういうのってシリーズものの強さかもしれません。今までがあるからこそこの作品が引き立つんですね。


★「美貌の帳」から第2部が始まったわけですが、蒼がりりしく、ゴツくなって出て来たら
どーしよー、とか考えていたのですけど、ちょっと背が高くなってただけでホッとしました。
舞台が伊豆なので、私の最寄り駅の三島駅が何度も出てきてドキドキしました。深春が凄く蒼の事を心配していて、
それが凄く凄くほほえましくて、いらんところで涙が出てしまいました。変わってしまったのは蒼だけ。
一人で何かを見つけようと暗中模索状態で、痛々しいんだけど、それを見守る人々の優しさがとにかく良かった。
朱鷺も復活で出てきたし。楽しい第2部を期待できそうです。


★「桜闇」は短編集で、いくつか雑誌掲載時に読んだ作品もありましたが、どれも充実していて、お気に入りの一冊です。
特に2重螺旋の話は全て面白く読みました。実際に二重螺旋の建物に入ってみたいです。手近に無いけど。
中でも「井戸の中の悪魔」はトリックが一番驚きました。なるほど!みたいな。
書き下ろしはどれも「推理物」ではなく、キャラクタ主体の、いわば番外編的な要素のものばかり。
そしてその中の「君の名は空の色」、これを読んでボロボロ泣きました。タイトルがお気に入りです。
勿論これは蒼の事を言ってるのだけど、悲しいやら切ないやら、そんな中にも嬉しさもあって、
感情グチャグチャになりました。私は個人的に蒼のファンだし、特に深春と仲良くしている姿が好きだから。
気になってた二人の出会い&和解のシーンね読めて感無量とはこの事ですね。良い一冊でした。


★ファンタジーも読みたいです。「天使の血脈」のシリーズなども読みたいけど、
最近はめっきり「オチ」のないものが読めない体質になっている気がして。
「琥珀の城の殺人」は凄く読むの大変で(私はカタカナの名前に弱いもので)、
でも読み終わった時は世界に引き込まれて戻ってくるのが大変な程でした。


★篠田先生はパワフルです。旅行にガンガン行かれて、好きなものは好きと叫んで、
常に読者に語りかけたり近づいたりしてくれます。そういう精神がとても好きなのです。
あの元気が作品のパワーかいなと私は納得してしまうのでした。見習おう。