読んだ作品
★ゲーム3部作★ 囲碁殺人事件/将棋殺人事件/トランプ殺人事件/(チェス殺人事件)
★智久&類子シリーズ★ 凶区の爪/妖霧の舌/眠れる森の惨劇
★ウロボロスシリーズ★ ウロボロスの偽書/ウロボロスの基礎論
★短編集★ 閉じ箱
★その他の作品★ 匣の中の失楽/狂い壁狂い窓/カケスはカケスの森/殺人ライブへようこそ/
闇に用いる力学[赤気篇]/風刃迷宮
★マンガ作品★ 入神

★尊敬する作家。誰より次の作品を心待ちにしている作家。読む度に「凄い!」と感嘆させてくれる作家。
とにかく私は竹本健治大好き人間です。鮮烈なデビューシーンを私は知らないんですけど、私が一番
最初に読んだ作品は「凶区の爪」で、読んだ瞬間が私にとっての「竹本健治鮮烈デビュー」なのです。その後はむさぼり読んで、
読む度に好きになって、智久も類子ちゃんも須堂先生も皆たまらなく愛おしくなってしまいました。不動のトップ確立です。


★難しい内容だと思います。智久&類子シリーズ3作は割と普通の誰でも分かる的な
ミステリなのですが、それ以外はとても難しくて、理解するまで私の頭では何度もの再読が必要です。
でもそうやって何度も読んでいく内にどんどん愛着が出て、物語もおぼろげに理解し始めて、
いつの間にか離せない本になっているんです。


★まずはゲーム3部作ですが、チェスも入れて4部作でも宜しいかと。小さい智久の可愛さもあるし、
姉と弟」というコンビも自分とオーバーラップして大好きです。何と言っても「トランプ殺人事件」なのですが、
未だに私は時間の渦から抜け出せずに、どれが本当でどれが幻だったのか、本当の理解に達していない気がします。
途中に出てくる死の哲学は、何度読んでも心にズキズキ来ます。あとは文字のトリックは感動の一言。
全然気付かないまま何気なく読み進めたけど、多分あれを作るのは並大抵の事では無いと思いました。
本当に一読の価値あり!そして誰か私にコントラクトブリッジ教えて下さい。


★牧場智久という人物について。羽生名人が有名になるよりも前から智久くんは存在していました。
華奢で綺麗で天才で男なのに弱くて、アイドルでそれでいて優しかったり、類子ちゃんに対して
虚勢を張ってみたりってお茶目な所もあったりで、どうにも好きにならずに居られない存在なのですね。
竹本先生の書く美少年ほど美しいものは無い。「濡れたような」という言葉がピッタリ来る。
それは「ハコ」のナイルズ、ホランドであったり、「凶区」の椿くんであったり、反対に女の子は芸者シリーズや
類子ちゃんの様にやたら元気でそれでいて女らしいみたいなね。この辺は先生が漫画好きなのと関連がありそうですが。


★「風刃迷宮」の不思議。智久がトムだった頃の「ゲーム三部作」と本因坊時代の類子ちゃんとのシリーズを繋ぐようなこの作品。
不思議な感覚が絶えず付きまとう。智久の確かな存在感が得られなくて、何だかじれったい気持ちで読み進みました。
類子ちゃんも出てこなくて、ずっと迷路に迷っている感じ。出口がいつまでも無い。最終的に出口はあったのかなかったのか・・・。
天野さんや、典子お姉ちゃん。桃井君なんかの名前が続々登場して、ファンにはたまらない作品ですね。
特に植島くんが好きな私としては彼が格好良くて嬉しかった。どうも典子と同調するクセがありますね。
それは自分も弟が居るからだと思うけど。智久の妖しさというか、不可解さみたいな魅力が強調されていてドキドキものでした。
内容的に「闇に用いる力学」に通じる物を感じました。竹本先生の特色大全開でしたね。嬉しい嬉しい。


★ウロボロスの凄さってとにかく現実と作り物の境が一般読者に分からないという所だと思います。
現実に居る作家や評論家が実名で出てくるだけなら良いんだけど、その中に本当にあった話が
多分に織り込まれているから分からなくなる。読者を煙に巻いて楽しんでいる感がある。
そしてさらに分からなくさせるトリック芸者シリーズの挿入。智久の出現。
とにかくどんどん深みにはまっていきそうな、底なし沼作品です。そこはそれ


★そして綺麗な閉じ箱へ。読み終わって感じた事。それは帯のあおり文句の何と的確な事か。
「この息苦しさは何だろう・・・」この分が全てを語っています。タイトルも流石です。
タイトルといえば短編のタイトルは好きなものが多いです。「夜は訪れぬうちに闇」とか
「けむりは血の色」とか。私はこの「けむりは血の色」が一番好きです。友達関係の痛さみたいなものが
良く出ていて、本当に切ない。こんなに悲しくて綺麗な話は他の誰にも書けない。


★究極の形「闇に用いる力学」。私は今まで読んだ本の中で一番はどれかときかれたならこの本を挙げます。
どうしてこんなの書けるのだ?化け物じみた緻密さ。人物表現。絶望的な黒い闇が
どんどん身を包んで私を隠して仕舞う気配に怯えながら読んだ。それなのに気が付くと何度も何度も
飽きるほど繰り返し読んでいた。続きが出ていないので今は詳しく書かないけど、
「これを読まずして竹本健治は語れない」綾辻氏の言葉通りだと皆さんに言っておきます。


★「エロティシズム12幻想」内「非時の香の木の実」は、ビックリ。何がって、性描写が。
事細かで、18禁じゃないんだろうか?個人的に、題材は凄く好きなタイプ
時間を自由に操れたら楽しいけど、どうしてもしっぺ返しが来る。当たり前のお話。
余り「竹本作品」みたいな感じではないのですが、たまにはこんな短編があっても良いなぁ。
ちなみに、私が「竹本系」と勝手に思っているのは、「閉じ箱」「風刃迷宮」「トランプ殺人事件」辺りです。


★漫画家竹本健治「入神」。ずっと進捗状況を河内実加さんのサイトで見ていたので、とっても完成が気になっていた作品。
大好きな智久が主役だし、囲碁のマンガというのもあるし、アシスタントさんの豪華さも凄かった。
でも読んでいる時はハッキリ言って辛かったです。智久は悩み続けて、倒れまくって、もぅ苦しい。
「え〜ん、智久禿げちゃうよ〜」と泣きそうになりました。桃井くんのキャラがやっぱり最高でしたね。
絵的に凄く竹本先生らしい感じがしました。着物(羽織)の旨さが感動的でした。色っぽいです。
個人的にベスト台詞は植島くんの「いい子だ」。これで一気に・・・・(自重)。


★竹本健治その人。作品の暗闇とは打って変わって穏和な雰囲気な人。漫画も書くし、プロレスも好きだし、
人柄も私は尊敬しているのです。あともう少し筆が早ければ文句は無いのですけどね。