第4回
コンロッドの話


今回はちょっとディープなネタで行きましょう。

よく、コンロッドを鏡面にすると強度が上がるとか、ショットピーニングがしてあると鏡面にしない方がいい
とかいろいろな噂がありますが、本当の所どうなんでしょうか?
まず、ショットピーニングの入っていない物。これについては鏡面にした方が強度が上がります。
これは皆さんもご存知のとうり応力集中が減るからです。コンロッドの表面を見てみると細かい凸凹があ
りますよね。ここに応力が集中します。

次にショットピーニングの入った物。これについては非常に厄介です。ショットピーニングといっても様々な
種類があり、その種類によっても強度の上がる度合いが違うのです。それに同じショットを掛けても効果は
バラつきます。
では、なんでショットピーニングをかけると強度が上がるのかご存知ですか?ショットピーニングによって
残留圧縮応力が発生し、これが疲労強度に効いてくるのです。鋭い人ならもうお察しでしょう。ショットピー
ニングの種類の違いはこの残留圧縮応力の違いといえます。
ショットの粒径、当てるスピード、角度等様々な違いがあります。又、同じショットピーニングでも”粒”の新
しい方が残留圧縮応力が高く”粒”が使い古して変形したものは残留圧縮応力が低くなる傾向があります。
こんなことからもショットの効果はバラつくといわれています。
ショットピーニングをたくさん(2回も3回も)掛ければいいと思う人もいるでしょう。ちょっと待ってください。
それでは表面が荒れてしまいます。荒れるってことは応力が集中するってことです。これが問題なんです
ね。その辺のおいしい所を見極めなくては効果が少なくなったりします。
鏡面にしたり材質を変えたりするよりショットピーニングをかけたほうがコストが安いのでメーカは採用して
いるのです。(すべてがこの理由に当てはまるわけではありませんが・・・)
鏡面加工の表面の粗さ、Rの取り方によっても強度が変わってくるので、自分がどの辺まで出来るのかも
考慮する必要があります。
ちなみに鏡面加工以外にも、お金をかけなくても疲労強度を上げられる方法もあるんですよ。

よく、鏡面加工をして挫窟したコンロッドを指して強度が足りないって言う人がいますが、挫窟は疲労強度
を上げても対策できる物ではありません。静的強度を上げなければいけないのです。鏡面加工は疲労強
度に効果はあっても静的強度に効果はありません。静的強度を上げたいのなら断面積や材質を変える。
もしくは焼きを深くまで入れるといったことをしなくてはいけないのです。内硬を上げるのが一番簡単?だ
と思います。
この辺を勘違いしているショップが多く(っていうかほとんど)がっかりしてしまいます。
材料力学から勉強すればもう少し分かるようになるでしょう。がんばって勉強して欲しいですね。

結論ですが、みなさんのお好きなようにするのがいいと思います。もし、疲労破壊をするような使い方を
しているような人であればそのうち分かる時が来るでしょう。比較するには同じ条件で試験しないといけま
せんから大変だと思いますが・・・
(ここでは書きませんが、その辺で私に会ったとき聞いていただければ本当のことをお教えますよ。)

ちなみに私は雑誌等で疲労破壊しているコンロッドを見たことがありません。ほとんどが挫窟です。
折損している物は破面を見ると疲労か静的か分かるのでその辺に注意してみると良いでしょう。起点が分
かればどこに応力が集中しているのか分かりますし、破面の粗さを見ればどのぐらいの力が掛かっていた
のかも分かります。そうすればどう対処すれば良いのかも分かりますよね。
破壊した部品から得られる物は多いです。

注意!:ここに書いてあることを鵜呑みにしないように。これは単なるヨタ話ですよ