** チョット真面目な話 **
R−Junkie 科学研究所 研究員 鈴木”角”

吸入空気の温度を下げるとパワーが出るという話はご存知だと思いますが,実際その効果は
どのくらいあるのでしょうか?またロードスターをキャブ化するに当たってちゃんとセッテ
ィングを出せば夏と冬でセッティングを変える必要はないという話を聞きます。実際メーカ
ーセッティングのバイクはそれで何の問題もなく走っています。でもインジェクションでは
わざわざ吸気温度センサーなどを使って外部環境の状態を逐一計測して、それに合わせて燃
料の量を変えています。手間をかけてまで行っている事ですから何かしらの理由があるはず
です。(当然燃費や排ガス対策が第一であることは明白ですが)
気になりだすと眠れなくなるので、簡単な計算でこれを検証してみたいと思います。まず参
考書から出力空燃比=12.5とします。

* 吸気温度の影響について *
吸気温度20℃で150馬力の実力を持つ車があります。そこで吸気温度が40℃まで上昇
すると何馬力となるでしょうか?
空気の温度が20℃の時の空気密度を1とすると40℃では0.936倍となります(工学
書を参照しました) 空気の密度の比=エンジン出力の比と単純に考えると150馬力×0.
936=140馬力となります。
このことからヘッドチューン+圧縮比アップしたロードスタークラスであれば、10℃当た
り5馬力の差が出る事となります。また空燃比はどうでしょうか?
吸気温度20℃で12.5に合わせた空燃比が40℃ではいったいいくつになるのか計算し
てみましょう。空燃比=空気量/燃料より空燃比12.5の時 空気1に対しての燃料の割
合は 1/12.5=0.08となります。
40℃となった時の空燃比を求めると 空気量1×0.936/燃料0.08=空燃比11
.7となります。このことから吸入空気温度が20℃変化すると空燃比は約1変化する事と
なります。
(厳密には膨張圧縮しエンジンの熱で暖められ、燃焼室に入った時の混合気に含まれる酸素
量の差となると思いますが・・・プライベーターにはそんなデータなど有るはずもないので
至極簡単な計算方法を取りました)
空気の温度と密度の関係は下の表の通りです。
空気の温度(℃)比重量(kgf/m^3)20℃を1とした時の空気密度の比

−50

1.533

1.315

−40

1.477

1.266

−20

1.348

1.156

 0

1.251

1.073

20

1.166

1.000

40

1.091

0.936

60

1.026

0.880

80

0.968

0.830

100

0.916

0.786

上記の結果から吸入空気温度を低くする事はエンジン出力向上にかなりの効果があることが
分ります。(ただし燃料の気化を阻害するほ吸気温が低いのは別ですが)
また吸気温度が上がるとノッキングが発生しやすくなります。これが実車ではどんな現象と
して現れているのでしょうか?
ロードスターの純正エアクリーナーボックス位置の空気はちょっと信号待ちをすれば、簡単
に吸気温60度以上にあがってしまいます。そのため外気を取り込むように、ダクト付きヘ
ッドライトカバーが各社から発売されていますが、実際のところその効果は本当に微々たる
物(自分の車にも付いてるからこそわかったことですが・・・)ちゃんとした太いダクトを
引張れば良いのですが、もっと手軽に出来る方法があります。それはヘッドライトを上げて
走る事です。
高速道路で実験してみましたがヘッドライトを下げた状態では、エンジンルームに隙間風が
入っているはずなのに吸気温度は40℃以上となってました。また、一度吸入空気温度が上
昇すると走り続けてもなかなか温度が下がってくれません。そこでヘッドライトを上げると
どうでしょう、みるみる温度が下がり30℃以下となりました。その効果は絶大です、この
時から自分はいつでもヘッドライトを上げたまま走るようになりました。皆さんも一回試し
てみる事をお勧めします。高速道路では燃費にも差が出るはずです。
但し、自分は吸入空気温度が下がった事による5馬力の差は体感出来ませんでしたが・・・
これはFREEDOMを使って普段の吸気温度を見た結果なので信頼は出来ると思います。

* 外気圧の影響については *
スーパーチャージャーが元々は何の為に作られたのか,ご存知の人ならば分かることと思い
ますが,密度の高い空気をエンジンに取り入れることは非常に重要です。実際に外気圧の変
化に対してエンジンの出力はどのように変わるでしょうか?
平地で150馬力の車が、仮にスポーツランド山梨のような標高の高い場所で走る時のシミ
レーションをしてみましょう。
外気圧760mmHg時の空気密度を1とすると700mmHgでは0.921倍となり。
計算方法は上記と一緒で150馬力×0.921=138馬力となります。また空燃比はど
のくらい変化するのでしょうか。
外気圧760mmHg(平地)で12.5に合わせた空燃比が外気圧700mmHgの場所では
いったいいくつになるのか計算してみましょう。
この時の空燃比を求めると空気量1×0.921/燃料0.08=空燃比11.5となり。
このことから外気圧が100mmHg変化しても空燃比は約1変化する事となります。外気圧
と空気密度の関係は下の表の通りです
外気圧(mmHg) 760mmHgを1とした時の空気密度の比

600

0.789

620

0.816

640

0.842

660

0.868

680

0.895

700

0.921

720

0.947

740

0.974

760

1.000

780

1.026

このことから標高の高い場所を走る場合、空気を圧縮して密度を上げているターボ車に比ベ
NA車は絶望的ともいえるハンデを背負ってる事が分かります。
*上記に示してある値はあくまでも理論値であり、実際の燃焼室に入る空気の状態とは明ら
かに異なるハズです。今、気になっているのは純正ECU内部の各種補正係数です。基本燃
料噴射量に対しての吸気温度補正値や水温補正値等を知りたいと思っています。この値はメ
ーカーが実験を繰り返して定めたもののはずなので、それを使えばもっと厳密な計算結果が
出る事と思います。ご存知の方は御一報いただければ幸いです
このコーナーは決して”だからキャブやNAはダメなんだ”と否定する事が目的ではありま
せん。実はここに重大な人生訓が隠されているのです。それは
相手の欠点から目を背けるのではなく、逆にそれさえも愛してあげる事。それが男の
包容力ではないか?
という事です。
それではまた次回の”男の人生を語る”のコーナーをお楽しみに!

** 軽量化 VS パワーアップ **
軽量化とパワーアップ、同じ金額を掛けた場合にどちらのほうが効果が高いのでしょうか?
早速簡単な計算をしてみる事とします。
まず150psのパワーと16kgfmのトルクを持ったロードスターの重量を1100k
gとします。するとパワーウエイトレシオは
1100kg/150ps=7.33kg/psとなり
トルクウエイトレシオは
1100kg/16kgfm=68.75kg/kgfmとなります
このロードスターから走行会に備えて街乗りに支障をきたさない程度の軽量化を施します。
スペアタイヤ、助手席、パワステ、エアコン、幌等がんばって50kg取り払います。ほぼ
女性ひとり分です。こうして軽量化されたストイックな仕様のロードスターのパワーウエイ
トレシオは
1050kg/150ps=7.00kg/psとなります。
トルクウエイトレシオは
1050kg/16kgfm=65.63kg/kgfmとなります
では軽量化など一切頭にない,隣に女の子を乗せて同乗走行が出来る快適仕様が同じパフォ
ーマンスを発揮する為には,どれだけパワーとトルクを出せば良いのでしょうか?
車重1100kg/パワーウエイトレシオ 7.00kg/ps  =馬力 157ps
車重1100kg/トルクウエイトレシオ65.63kg/kgfm=トルク16.8kgfm
馬力で7ps、トルク0.8kgfmのパワーアップで50kgの軽量化と同等・・・さて
あなたならどちらを選びますか?もっと軽量化してさらにパワーアップ?
賢い選択ですがそれを別名 "泥沼" という事もお忘れなく。これはサーキットでタイムを狙
える仕様とするか、或いは可愛い女の子(男の子でも可)を快適なデートに誘える仕様とす
るか・・・という人生におけるもっとも重要な選択なのです。そこで本日の教訓
"何かを得る為には 別の何かを捨てなければならない時が来る"

**ご使用上の注意**
全て大雑把な計算なので結果に誤りがあるかもしれませんが一つの参考となると思います。