天使の翼

雲のずっとずっと上
空の高い高いところに
天使達の国がありました

そこには
 太っちょの天使 やせっぽちの天使
 あわてんぼうの天使 なまけものの天使
 笑っている天使 こわがりな天使
 くいしんぼうの天使 いたずら好きな天使
たくさんの 色々な天使達が 空を自由に飛び交ってました

そんななかに ひとり
空を飛ばない天使がいました
その天使には 翼がなかったのです
翼は 事故で傷ついたり 悪さをして神様に取り上げられたりしたわけではありません
最初から 生まれたときから
その天使には 翼がなかったのです

天使達には 毎日 仕事がありました
地上に住む 人間達の 愛をくばることです
色々な人達をみつめ 観察しては その人達に 愛を配達していました

でも
翼のない天使には その仕事がうまく出来ませんでした
空を飛べないので 上手に愛を運ぶことが出来なかったのです

天使は泣きました
悲しかったのです
「どうしてぼくには翼がないの?」
「どうしてぼくだけ空が飛べないの?」

天使は聞きました
けれど
その質問には 誰も 神様も 答えてはくれませんでした

ある日
翼のない天使は
いやになって 天使達の国をとび出してしまいました
一度地上に降りてしまえば 翼のない天使には 二度と天使達の国へ戻ることが出来ないのに。。。

ひとりぼっち
地球の地面の上を歩きました
何日も 何日も 歩きました
足からは血が出て 痛くて 疲れて
もう 歩くのもやめようかと思ったとき
小さな病院に着きました

その病院には 小さな女の子がベッドで寝ていました
天使は 部屋の中に入って 女の子をみつめました

すると

「あなたは だぁれ?」
女の子が声をかけてきました

「ぼくの姿が見えるの?
 ぼくは天使だよ」

天使は言いました

「天使さん ここにいてくれる?
 私は病気なの
 どこにも行けないの
 いつもひとりぼっち
 ね お願い
 ここにいて 私とお話ししましょ」


それから
天使と女の子は友達になりました
いつも天使は女の子のそばにいて たくさん たくさん 話しをしました

「ねぇ 天使さん どこにも行かないでね」

「だいじょうぶ どこにも行かないよ
 ぼくには 翼がないんだ
 だから 絶対に どこにも飛んでかないよ」

「うれしい。。。」

ふたりはいつまでも たのしく すごしました
天使は思いました
翼のない僕にも 役にたてることがあるんだ!

それからしばらくして

コホッ コホッ。。。
女の子の咳が多くなって
なかなか お話が出来なくなりました
女の子は とっても悪い病気だったのです
コホッ コホッ。。。
コホッ コホッ。。。

そして いよいよ お別れの時が来ました

「だめだよ!いっちゃだめだよ!僕 また ひとりぼっちになっちゃうよ」
「ごめんね 天使さん わたし もう いかなきゃ。。。」
「ホントにお別れなの?」
「コホッ コホッ。。。
 天使さん うれしかったわ たくさん 楽しいお話が出来て」

「いやだよ!もっと もっと お話ししようよ!」
「ごめんね コホッ コホッ。。。
 天使さんには わたしの願いをかなえてもらったから
 最後にひとつ わたしも天使さんの願い事をかなえてあげるわ」

「え?」
「何が いい?」
しばらく天使は考えました
そして

「・・・それじゃぁ ぼく 一度でいいから 空を飛びたい
 空を飛んで もう一度 天使達の国へ 帰りたい
 そしたら ぼく 今度は翼がなくても ちゃんと天使の仕事が出来る気がするんだ」

「そう。。。わかったわ」
そう言うと とつぜん女の子の背中に 輝く翼があらわれました
「さぁ 行きましょう」
女の子は翼のない天使の手をとり 舞い上がりました
ふたり 天使達の国へ向けて
空 高く 高く。。。