日本でJ1を目指さないチームは存在し得るのか?プロチームの本質を視野に入れながら考えてみたい。
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プロチームの 本質とは?
「J1を目指さないプロチームの存在は日本において可能か。」 Naohiko Anzaiさんhttp://www03.u-page.so-net.ne.jp/tc4/nh-anzai/より
まず、考えたいのは、日本でプロサッカーチームが存在し得るか?という問題だ。
ヨーロッパのトップリーグのクラブの収入源は、入場料収入・広告収入・放映権料の3つが大部分を占めるだろう。少し古い資料になるが「サッカー振興と地域づくりに関する施策のあり方」(発行:財団法人自治総合センター,1994年)によると、フランスのパリSGは約50億円の総収入の内、入場料収入が約37%を占めている(年間特別席収入を含む)。TV放映権料が18%、広告料が15%で、この3つを合計すると約70%を占めることになる。
また、月刊ストライカーの「プロチーム経営の実態と今後の方針」('97年12号)では、マンチェスターUとマンチェスターCの有力2チームで入場料収入が約40%と試算されており、入場料収入がプロチームの収入の基幹となると推定することに間違いはないだろう。ちなみに同レポートで紹介されている下位リーグのオールダムというチームでは、入場料の比率がさらに高くなっている(約74%)。
ここに挙げた3つの収入源は、サッカーを観る人が多ければ多いほど収入が増えるという点で共通している。逆にいえば、サッカーを観る人が少なければ、収入がないのでチームを存続することはできない。つまり、プロチームが存続するためには、サッカーを観る人(ファン)が一定の水準以上に存在することが前提となるということである。
見返りを要求しない親会社の支援(本当は要求しているのだがJリーグ側が要求させない)で、やっとのことで成り立っているJリーグは、世界の常識からすれば異常である。清水、フリエ、平塚、広島、鳥栖、福島...とチームに存続の危機が訪れるとき、必ずといっていいほど付きまとうのは、親会社の支援を得られないという問題だ。
結局のところ、現時点では、プロリーグを維持できるほどのファンが日本にはいないという結論に達する。ただし、ここで言いたいのは、質的な問題ではなくて、量的な問題である。いくら熱心でスポーツに対する理解度の高いファンが多いといっても、その何倍もの数の普通のファンがいなければ、大きなマーケットとして成り立たない。しかし、そのような量的な広がりは、2年や3年で実現できるものではなく、目の前の現実に対処しながらも、長期的な計画でどのように克服するかが重要だと思う。
次にJ1を目指さないプロチームについて考えてみたい。J1を目指さないプロチームということの意味については、いくつかの解釈があるかもしれないが、プロチームは入場料収入を基幹に考えると仮定するとJ1を目指さないプロチームはあり得ない。何故なら、入場料収入を増やすためには、上位リーグに上がることが不可避だからだ。入場料収入が増えなくてもいいから、固定客を大切にして、確実に見込める収入に見合った選手でチームを存続させたいということは十分にあり得る。ただし、そのような方針のチームが、それなりの数のファンを確保できるかというと疑問だと思う。
一方、ヨーロッパや南米でよく見られるような弱小クラブ運営の方法、つまり、選手を育てて売るという方法を思い浮かべる人もいるだろう。ボスマン裁定で不利になったとはいえ、弱小クラブ生き残りの方法は他には無い。しかし、当然のことながら、この方法には買う側の存在が不可欠である。金持ちのクラブがなければ、売ろうにも売れないのだ。
ところが日本では、トップリーグたるJリーグチームの経営が危ぶまれており、高額の移籍料を支払うチームが1チームも無い。比較的豊かだと思われている鹿島や磐田は、優勝の立役者を移籍料が得られる訳でもないのにお払い箱にしてしまった。唯一、名古屋が有力選手を買っているが、海外の有力選手を連れて来れないのだから、やはり金が無いのだろう。
旧ユーゴ諸国をはじめとする東欧には、国内のクラブが買わなくても、海外のビッグクラブに売って経営を成り立たせているクラブが多い。今シーズン、中田が日本選手で初めて“まともな移籍料”の支払いを受けてイタリアへ飛び立ったが、クラブを成り立たせるほどの移籍料収入を安定して見込めるようなチームは、日本には当分出現しないだろう。
海外に選手を売るには、日本はあまりにも悪い条件が整っている。まず、サッカー選手の見本市であるワールドカップの出場回数が少なく、実績も残していない。チャンピオンズリーグのような大会に出れないのも不利だ。
次に地理的にヨーロッパと距離が離れすぎている。アジアで一番金持ちの日本のクラブが貧乏なのだから、他のアジア諸国には期待できない。したがって、ヨーロッパを目指すしかないのだ。南米とヨーロッパも離れているが、南米の選手には、それをものともしない実力がある。近年流行りのアフリカは、歴史的にヨーロッパとの関係が深いし、時差も少ない。他にも、Jリーグのシーズンがヨーロッパのシーズンとずれていること(悪いとは言いきれないが)、所得水準が高すぎて、海外で与えられる世界標準の実力相応の報酬では安すぎると感じてしまうことなどが挙げられる。
結論としては、現時点でJ1を目指さないプロチームは、日本では成り立たないと考えられる。Jリーグが設けている基準、例えば収容人数をクリアするために必要な投資がもったいないからJ1を目指さないというチームはあるかもしれないが、気持ちとしてはJ1を目指したいのだと思う。どのチームもJ1に上がりたいという姿勢を求心力として、より多くのファンを獲得し、その結果としてサッカーが文化として根付いたときに初めてビッグクラブ、中堅クラブ、弱小クラブへと分化していくのではないだろうか?
今回はスタジアム経営や、レッスンプロ、カルチャークラブ的会員制クラブあるいはもっと多様な多角的経営については、あえて触れずにおいた。他にも、ボランティアの活用による経費節減や自治体等からの補助金など、まだまだ様々な要素が考えられるが、プロチームとしての本質は観られることにあり、このことを無視した方法で存在するチームがプロチームだと呼べるかどうかは現在では想像がつかない。
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