マトリョーシカ
ロシアの表敬訪問の際、私には一つの任務が与えられていた。それは、マトリョーシカなどのロシアの雰囲気のあるものを買ってくること。トレセンやメディアセンターなどに飾って、ロシア色に染めるためだ。
しかし、物売りとの交渉が大変だ。いらないと言っても、いつまでもつきまとってくる。でも、みんな交渉が楽しいらしく相手にしていたなあ。かなり粘って半額以下にまけさせたマトリョーシカが、別の店ではその値段が定価になっていた。市長が気に入って日本に戻ってきてからも被っていた帽子は、一体、いくらで買わされたんだろう?
注:マトリョーシカとは、人形の中から一回り小さな人形が次々と出てくるあれ。日本のこけしが原型らしい。
ミックスゾーン
この大会から、ミックスゾーンということばが普及したように思う。ミックスゾーンとは、プレスやメディアなど報道関係者が選手からコメントをとることができるようにした場所だ。グラウンドやスタジアムから、宿舎やバスへ移動する通路を10〜30m、低い柵越しに取材できるようにしておくのが普通だ。日本代表紅白戦のときには、取材ポイントが3ヶ所くらいつくってあって、簡易式スポンサーボード(ヒーローインタビューなんかで後ろにアディダスとキリンのロゴマークがたくさん並んでいるのをみたことがあるでしょ?)がおいてあった。だから、テレビでは通路で撮っているなんてわからなかったと思う。
ムッ!ときたリエゾン・タ××ナ
リエゾンは、チームの世話役。タ××ナ女史は美しき(顔が)ロシア人。チームになじむため選手たちの近くに帯同、彼女だけがなぜか食事も一緒。非公開練習中もスタンドで観戦。監督から席を外すよう指示された。女史の担当は広報担当で、ロシア側と清水側の調整役が仕事。
日本と対戦後、タイムスケジュール通りにすべてが動いていた。しかし、女史だけリエゾン車に戻らない。ワンマンプレーを積み重ね、選手に密着し始めた彼女は、リエゾンとしての役目を果たさなくなっていた。ある時、移動のゴーサインを出す警備担当リエゾンは、バスの出発にあたって一言「子どもじゃないから待つ必要はなし!時間が過ぎているバスを出そう」。車が動き始めたその時、女史が必死で走ってきた。ムッ!として「どうしてバスを出すの!なぜ待っていないの」。あんたの胸に手を当ててみなさい。ムッ!としたのは、あなた以外のみんなです。JAWOC,JFAには、今度、ロシアチームが来たときタ××ナはリエゾンとして使わないように要請した。
メディカルマシーン
ロシアのメディカルマシーンは電圧が合わず日本で使えないので持参できない。そこで、数種類のメディカルマシーンを借りたいと連絡が入った。エスパルスのトレーナーに助言をいただき西村医療株式会社から全面協力をいただいた。機材の総額は1500万円相当。ロシアチーム帯同の2名のドクター(ズラブ・ヴァジリコフ)は器具を気に入り2台(500万円ぐらい)購入した。こんなキャンプ地ほかにはないね。
モスクワ暴動
北の巨人ロシアは、第1次リーグH組突破の大本命だった。格下とみられていた日本戦●(0-1)で破れたことでフーリガンが暴徒化したモスクワでは、路上の車が破壊、炎上するなどの大騒ぎとなり、68人が逮捕され2名の死者を出した。そのとき、モスクワのマネージ広場の大型スクリーンで観衆が2万人集まり観戦していたが、モスクワ市警は、特殊部隊を投入し鎮圧した。
日本大使館は、領事部職員を全員呼び出し、在留邦人の安全確保や注意喚起などの緊急対応をした。また、7日に在留邦人に対して試合当日は、外出をしないよう異例の通知を出していた。このような事態はロシアで初めてのこと。われわれスタッフも日本が勝ったことを素直に喜ぶことができなかった。
モストボイ
ロシアの人気選手は、皇帝モストボイ。しかし、彼はワールドカップ期間中1度もピッチの上で勇姿を見せることはなかった。来日前の親善試合で右太ももを痛め一人別メニューをこなしていた。5月30日、エスパルス戦はベンチ観戦。ファンのサインを気さくに応じていた。モストボイ、カルピン、オノプコ、ニキフロフ、スメルチン、シチョフを市立病院や松永医院へ搬送。マスコミに見つからないように隠密行動。市立病院に着いたモストボイとカルピンは最新医療器具に興味を示す一方、一般患者診察中のカーテンを開けて大騒ぎ。ロシアチームは怪我人が多く、いいコンディションではなかった。モストボイのプレーを見たかった。