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   アマチュアクラブの指導者が報酬を受け取ることは“善”か“悪”か?Jリーグが掲げる地域スポーツクラブの根幹となるべき問題を考える。



アマチュアチーム の指導者と報酬


   3月末に発行された新聞社系の雑誌に、プロ野球に進んだ選手が、最終学歴である大学や高校の指導者からリトルリーグの指導者まで、お世話になった指導者に対して謝礼金を渡しているという記事が出ていた。単なる"お礼"ならともかく、記事のように数十〜数百万円単位の現金ということになると非常に大きな問題といえる。

   この記事は、同様のことがサッカーにも当てはまるのではないだろうか?という疑念を持たせるに十分に足る。幸い、私が住む清水では、そのような習慣はないようだし、うわさとしても聞いたことがない。これは指導者のモラルの高さに加えて、主要チームの多くが公立の学校のサッカー部であり、学校の教師が指導者であることで"公務員の倫理"が機能していたからだと思う。

   しかし、いわゆるスポーツの盛んな私立大学・高校においては、 指導者はサッカーの指導を主たる仕事とするケースが多いのではないだろうか。このような組織の指導者が、自分の指導の成果として報酬を要求することを考えたとしても何ら不思議ではない。少しひねくれた見方をすると、ここ1,2年の"大学サッカーの活性化"ということばに、このような利権の存在が強く感じられる。

   高校までの年代では、Jクラブの下部組織のような選手育成を目的の一つとしたスポーツクラブの数が圧倒的に不足している現在、選手の育成を学校のチームに頼らざるを得ないのはしかたのないのが現実である。しかし、大学生の年代はすでにプロの一員となっているのが普通であり、選手育成を主たる目的とした機関というのは、日本以外には、存在しないのではないか(アメリカにはあるかもしれないが・・・)と思う。

   この年代の選手は、通常、トップチームのサブ的な位置づけのチーム、日本でいうならサテライトといわれるチームや下位リーグのチームで育成されるべきであり、現在のJ及びJFLやそれに準じるチームだけでも量的に見て十分だ。"大学サッカーの活性化"が大学生のサッカー人口の増加や、学問の成果をスポーツ界で活用させることを目指すものならば喜ばしいことだが、「大学チームのJFL入り」など、有望選手を大学生選手の中から輩出したいという意図とそれに繋がる利権の存在を感じざるを得ない。(もし、どちらでもないとすれば、古き良き時代を偲び、その復活を目指すのが目的か?)

   ただし、ここで注意したいのは、選手を育成した組織や指導者が何らかの報酬を得るという考え方を否定するものではないということだ。確かに学校という制度に相乗りしている現行制度では、このような報酬を得ることは悪いことだと思う。優れた指導者や組織が報酬を受けることは、ミクロ的には金銭の授受ということになり、スポーツのイメージには合わない部分があるが、マクロ的に見れば育成された選手が生み出した利益を育成システムつまり楽しみのためのプレイヤーを含めたサッカー界への還元するしくみだといい換えることもできる。

   しかし、歴史的な経緯や風土を見ても、欧米または南米タイプのクラブをそのまま導入することは困難であり、日本のプレーヤーにとってあまり好ましいことではない。その結論として、学校というシステムに頼らず、しかし学校施設の活用など学校との連携を密にした日本的なシステムの確立が急務なのではないだろうか?


  • この文章は、サッカーダイジェスト誌「背番号12」コーナーに投稿したものです(ボツらしい)。
  • 文中の雑誌記事は朝日新聞社の「AERA 98.4.6号」。
  • 無断転載を禁止する。
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