プリズム
みんなの実験室
5.


――摩擦の力は接着剤?――

摩擦の力はこんなに大きい! 手ごたえと目で、この力を体験してみましょう。


スロープ上の物体摩擦、摩擦の力とは
右の図のように板の上に物を乗せて、板を傾けていきます。その物は、すべり落ちようとしているはずですが、傾け方が小さければ動きません。それは、その物と板がふれあっている面と面とがこすれあって(これが摩擦です)、物がすべり落ちようとする動きに、じゃまする力がはたらくからです。これが摩擦の力です。
摩擦の力は、つるつるやぬるぬるの面では小さく、ざらざらな面では大きいです。


摩擦の力を体験
 <その1>
離れない2冊のノート


2冊のノート(又は週刊誌など)のページを、たがいちがいに組み合わせます。
これを机の上に置き、左の写真のように両方のノートをひっぱって、引き離してみましょう。なかなか離れませんね。





 <その2>

工作用紙を巾1.5mm、長さ5cmに切ったものを9本、巾は同じで長さ7cmのものを1本用意します。

・まず、下の左の写真を参照して、これらを組み合わせて並べます。長さ7cmのものを机の縁から少しはみだすようにして置きます。次に、長さ5cmのもののうち8本は、最初に置いた1本に直角になるように、また1本ずつが互いちがいの位置になるようにして乗せます。その上に、最後の1本を、最初に置いたものの上に重ねるようにして乗せます。

・そして、下の右の写真のように最初に置いた1本の、机からはみだしたところを持ち、そのままそおーっと持ち上げます。すると、このように全部が組み合わさって持ち上がります。もし、どうしてもこのように持ち上がらず落ちてしまう場合は、1本ずつちょっと紙やすりでこすってから並べて持ち上げてみてください。

細長い工作用紙 持ち上がった細長い工作用紙


 <その3>

フィルムケース、コップなどの中央にわりばしを1本さかさ(太い方を下に)に立てます。そのまま フィルムケース(コップ)に生の米粒をいっぱいつめて上からよく押しつけます。わりばしのまわりと、フィルムケース(コップ)の壁際も、ていねいに押さえてください。
わりばしをそおーと持ち上げると、フィルムケース(コップ)は生の米粒を入れたまま、わりばしにくっついて持ち上がります(下の写真)。

生米入りフィルムケース 生米入りコップ1 生米入りコップ2
フィルムケースの場合は
ほとんど失敗はありません。
上から下まで同じ太さで、
長いコップの場合も成功しやすいです。
上が広がっているコップの場合は難しいです。
割らないままの割りばしを、このようにして
2,3ぜん横に並べると成功し易くなります。


接着剤も使わないのに…
<その1>
から<その3>実験、接着剤も使わないのにこのようになったのは、すべて摩擦の力のためです。

<その1>
2冊のノートの多くのページが互いに接触しています。そこで、ひっぱって引き離そうとすると非常に大きな摩擦の力がはたらきます。だから、離すには、ページとページが触れ合わないよう、間に隙間を作ってからゆっくりと引けばよいわけです。

<その2>
細長い工作用紙同士が触れ合いながら下に落ちようとします。そのとき、触れ合っている部分に摩擦の力がはたらいて、その動きをじゃまするので、全部が組み合わさったまま持ち上がりました。
うまくいかない場合は工作用紙の重さに比べて、摩擦の力が小さいのです。その場合、工作用紙を1本ずつ紙やすりでこすると、工作用紙の表面が少しざらざらになります。それで、触れ合ったときには、こする前よりも大きな摩擦の力がはたらくことになり、成功し易くなります。


<その3>
米粒と米粒
米粒とわりばし、米粒とフィルムケース(コップ)の壁とが互いに触れ合って動こうとしてこすれあったときに、それぞれの間に摩擦の力がはたらいて、動くのをじゃましました。そこで、これらがひとつになって持ち上がりました。
上が広がっているコップでは、広がっているため米粒同士が離れやすく、互いの触れ合いかたが弱くなるため、持ち上げるのが難しいです。その場合、割らないままのわりばしを何ぜんか横に並べると、わりばしの面と接触する米粒が多くなるので、わりばしと米粒の間にはたらく摩擦の力が増し、成功し易くなります。



摩擦の力がはたらく
摩擦の力は意外に大きいものであることを、体験していただけたと思います。摩擦の力は、私たちの生活に大切なはたらきをしています。例を挙げてみましょう

私たちは歩くとき、片足で後ろに地面(床)を蹴り、もう片方の足を前に出します。後ろに蹴った足が、そのまま後ろに動かないのは、足(くつ)の裏と地面との間に摩擦の力がはたらいて、そうなるのをじゃまするからです。摩擦の力が小さいつるつるの床の上を歩くと、後ろに蹴った足は、そのまま後ろにいってしまって、すってんころりんと転んでしまいますね。
また、そのような所を走っている自動車がブレーキをかけても、タイヤと道の面との間の摩擦が小さいため、自動車は止まらず危険です。

自転車のブレーキは、強いゴムが自転車の輪をつかむようにして、ゴムと輪の間にはたらく摩擦の力でその動きを止めます。

ひもや帯が結べるのは、触れ合ったひも(帯)の面と面との間にはたらく摩擦の力のためです。もしも摩擦の力がなかったら、力士はまわしがしめられなくてあせる、などということにもなるわけです。

食べ物が箸ではさめるのは、食べ物と箸の面との間にはたらく摩擦の力のためです。つるつるしたサトイモなどをはさむと、摩擦の力が小さいのでなかなかはさめませんね。

摩擦の力がないと、日常生活のあちこちで困ったことが続出するわけです。


<参考文献>
1)自由研究  観察と工作(小学館)  武村重和 監修
2)遊びの物理T(大竹出版)  ガリペルシュテイン 著  松野武 訳
3)たのしくあそべる科学実験(長岡書店) 塚平恒雄/宝多卓男/大山光晴  共著


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