日書協 山中事務局長が研究する「書道十徳」を紹介
 
 書は実用性と芸術性を兼ね備えた素晴らしい日本文化であり、その魅力や価値は不易で余すところがない。今日、ITの台頭など社会経済環境の急激な変革の中で、日本人の心の在り様が問われ憂慮される。書道は情操を育み、読み書きは脳の活性化にも役立つことが科学的に認められるなど「書」のもつ価値は高くかつ多様である。
 茶十徳、酒十徳、花十徳、香十徳、謡曲十徳、剣術打ち込み十徳、梅十徳など、物事についての高揚や文化的価値観の定義がある。
 しかしながら、書道(書)に関してこのような定義に未だに接したことがない。ここに、あえて「書道十徳」を創造し書の持つ素晴らしい価値を思考し訴えたい。
2005/10/16

書道十徳
其の1 「心を豊かにし、人格を陶冶(とうや)する」
 
 古来、「書は人なり」といいならわされている。
また、「字に久徳有り」という言葉もある。
書かれた文字には、その人の性格や雰囲気が如実に表されるものだと言う。
 先人たちが残した歴史や文化は尊い・・・
文字や書の心を真摯に学ぶことにはじまり、創作技術や人格を自然に育んできた。
 書道は、実用性に富む一方、精神の深さ、美しさを表す造形芸術である。
「読み・書き・パソコン」の今こそ、心ときめく書道の魅力を多くの人と分かち合いたい・・・。
こんな思いから書道の十徳なるものを考え、想像する。
 
其の2 「主役・脇役・湧かせ役、ハレの場面を引立てる」
 
「茶の湯の茶室で“掛物(茶掛け)ほど第1の道具はなし・・・」”は、千利休の語録「南坊録」にある言葉である。
茶室で欠かせないのが、亭主の心を表すと言われる床の間の掛け軸である。
 家庭やオフィス、オフィシャルの場面に飾られた書面は、その環境・空間に美しさをもたらし、人に安らぎや感動を与える。
 ところで<ハレ(晴れ)>とは、特別に改まった日・華やかな場面をいい、普段・日常を<ケ(褒)>という。いずれも社会・生活の場を幅広く含めたい。
 書は、あるときは主役、又あるときは脇役・湧かせ役として活きる、不易の日本文化である。
ここでは、お茶会の主催者をさす。
 
其の3 「能筆は一生の宝、教養度の物指しとなる」
 文化功労者で書家・成瀬映山先生が「書作のみちくさ」の中で、「作品にはその人の知識や趣味、愛好しているものが反映される」と語っている。書を学ぶものとして教養の裏打ちの大切さを思う。
 かつて中国の科挙試験には書法(書道)があったように、また、日本の武家社会に祐筆が置かれていたことからも、書は教養度を計る一つの物差しとして重視され、能筆は尊ばれてきた。
 パソコン全盛時代の今日でも、ビジネスやプライベートの場面で手書きは受け入れられている。希少価値の高い能筆は、「七難を隠す」一生の宝となる。
 
其の4 「実用性と芸術性、不易の魅力を育む」
 
其の5 「脳を鍛え、創作の楽しみ、夢とロマンが広がる」
 
其の6 「礼儀作法を高め、精神力を涵養する」
 
其の7 「歴史や文化への造詣(ぞうけい)、知識が深まる」
 
其の8  「嗜(たしな)むほどに奥深く、生涯の友となる」
 
其の9 「道を志すに年齢なし、経験は力となる」
 
其の10 「技(ぎ)は人を凛(りん)とさせ、芸は身を助く」


by.山中俊樹
 (書道研究「青象会」会員、日本書道教育協会事務局長、静岡県中小企業研究会会員、NPO「SOHO・アット・しずおか」会員、静岡県教育委員会男女共同参画アドバイザー)

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